2020/09/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にミミックさんが現れました。
■ミミック > 夜更けのメグメール街道。
陽光降り注ぐ日の高い時間帯よりは少ないが、それでも稀に馬車が王都に向けて走る。
馬の嘶き、蹄が大地を削り駆ける音。
今宵もそうして冒険者や商人が王都と各地方を行き来する。
馬車は安全である。
余程の規模の集団か知恵のまわる荒くれ者にでも遭遇しなければ、野生の獣や魔獣と分類されるモンスターであれば駆け抜け蹴散らすことが出来る。
しかしだ。
馬車は全ての人間が利用できるわけではない。
一般庶民や懐寂しい冒険者等は徒歩で王都に向けて歩く。
稀に自己鍛錬だと騎士や騎士見習い、マジックユーザー等もエンカウントするモンスターを退治して路銀を稼ぐ狙いもあって歩いて行動する者もいるだろう。
だが、今は夜。
夜行性のモンスター達が特に活発に行動する時間帯。
その例に漏れず、街道の脇にある低い草木の茂みに潜む蟲が一匹。
ミミック。
その甲殻を茂みの色、葉の形をした模様に擬態し、息を潜め夜になると自然と輝く眼を見せぬように眼を閉じ、代わりに尻尾や甲殻に包まれた各部の隙間の肉、シルエットどおりであればハサミがある筈の場所にある降格が筒状になった前足から感覚器としても優れている触手を伸ばし、獲物が通りかかるのをジッと待っている。
――…それもだ。
どこにでもいて、冒険者なら一度は対峙する事があるモンスターではあるが今夜隠れている個体は大きい。
通常は人間の子供か妖精のみを食っているような小型が多いが、今隠れているのは立ち上がれば人間の大人に匹敵する程の巨体を持つレアな個体である。
それが前足代わりの筒状の甲殻から太い触手を伸ばして地面にたらし、地面より伝わる微細な振動を探り、食いでのある獲物に狙いを絞りまっている。
馬車は流石に襲えないが、2~3人程度の冒険者であれば平気で襲いかかるくらいにそのミミックは餓えていて、隠れている、が妙に殺気だった気配を放っているのであった。
騎士や剣士、上級の冒険者であればそれに気がつくかもしれない、普段であればそれを警戒するミミックであったが、発情期中の個体はどうもそのあたりが疎かのようだ。
■ミミック > 感覚器でもある甲殻は筒状になっている前足の筒から伸ばした触手なのだが、もちろん触手自体も地面の色や地形のパターンに合わせて器用に擬態させている。
しかし、微細な振動でも感じるとピクと跳ねさせ、その時だけ周囲の風景と違った模様となり『ズレ』が出来る。
そのズレを見分けるには矢張り経験が必要なのだが、今夜はそのズレの幅も非常に大きく、ズレてから確りと擬態するまでにラグが生じている。
それだけ餓えている、それだけ獲物を渇望している。
しかし雑魚モンスターに分類される強さである。
正面より冒険者と戦う術が口内より吐き出す金属や布を溶かす溶解液しかない。
今も喉を小さく膨らませ粘液玉を吐き出す準備はしているが、ほかにも獲物を追い詰める方法がミミックなりに必要と感じたか、溜め込んでいるそれをドロッと地面に吐き出して街道の道の半分ほどに広がるように次々に口から垂らしていく。
数分立たずに不自然な水溜りかぬかるみのようなものが出来て、それだけ吐けば十分だと再びまた口内にドロドロの溶解液玉を作り始める。
途端に街道に広がったのはその溶解性粘液の放つ、草や木を煮詰めたような濃厚なる緑の香りである。