2020/09/09 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアンヤさんが現れました。
アンヤ > 「――世は全て事もなし、山賊も居らねばごぶりんなる鬼も無し。」

酒を買う金も飯を食う金もなく、それだけじゃ死なぬと判っていても、体の欲求には勝てぬで、小銭稼ぎに受けたクエストがメグメール街道を一往復しての短期の夜間警備である。

決まった区間を夜間のみを歩いて一往復するだけの簡単な仕事。
もちろん途中で魔物や山賊野盗の類が出れば倒すなり捕縛するなりするとボーナスが出るおいしい仕事である。

ただ本来であるなら複数人で野営しながら行うはずなのだが、仕事の時間になっても他に応募した筈の者がいるはずなのに誰も来ない。
仕方なく一人で今こうして街道をランタン片手に歩いている。
まあ独りのほうが気楽である、不慮の事態にも庇わずに済むし、力を振るうのに気を使わなくて済む。

実際に先ほど遠くから毒矢と思われる矢も飛んできて、後頭部に刺さったが、これ普通の人間だったら即死だろうし、矢を引っこ抜いた時に赤いのが噴き出したら下手すれば気絶ものだろう。

だから一人でいい、独りがいい。
傷口には唾をつけたのですぐに治るだろう。
カンテラを持つ手とは逆の手に握るスキットルを傾けて喉に酒を流し込めばほら痛みもない。

受肉した体はこうして不便ではあるものの同時に酒を楽しめる女を楽しめるので最高なのである、痛いものは痛かったけども。

アンヤ > しかしだ。
誰だこんな場所で我に闇討ちなんてするのは。
矢には毒、打ち込んで以降追い打ちが来ないことから野盗の類では無いことは判る――…もし人であれば追い打ちするだろう、身ぐるみをはぎに来るだろう、しかしだそいつは利口にもそれ以上は来なかった。

もし来ていたら傷口の分だけ食わせてもらう心算であったが、それを見越せるだけの危険に対して察知する何かを持っているやつだろう、となるとごぶりんとやらか?

まあ……

「良き、そうじゃな、砂糖菓子のひとつでもくれてやろう。」

ふわりと肩に1匹のカラスがとまる。
真っ黒な羽は赤く染まり、三つ目の眼はどれもがぎらぎら輝いている、そして嘴は真っ赤に染まり……それの口にどこからともなく角砂糖を放り込んでやる。

見過ごすわけがない。
傷をつけて許すわけがない。
百鬼夜行が1匹を飛ばし、その嘴と毒を持って罪をあがなってもらった。

――…信賞必罰。
それは百鬼夜行をもつ者として当たり前のことである。
その匹であるカラス、本来は緑の羽根を持つ毒を吐く鳥の妖魔である。

「愚か者が何かなど聞かぬよ。我が放った、我の代わりに罰を下した、それで良き。何また頼むぞ?」

人ならざるものは人の言葉で人にあだ名す存在を褒めよう。
あまり他者にみせない柔らかな笑みを口元に浮かべて。

アンヤ > かの鳥の名は……と口にしそうになったところで、慌てて口に手を当てて隠すと、肩にとまるカラスの頭を指先で一撫でしながら、街道を歩き続け、ひとまず折り返しのところで野営を……。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアンヤさんが去りました。