2020/04/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にナランさんが現れました。
■ナラン > 春の夕暮れ時。
街道の王都からさほど離れていない場所はなだらかな丘に囲まれて見晴らしがよく、日暮れ前特有の風が渡って若草色がさざ波の様に揺れる。
常時ならば日暮れ前に王都に辿り着こうとする商隊やら荷馬車やらがぽつぽつと見られるだけのその場所も、本日は―――この頃はいささか賑やかだ。
王都へ向かっていく伝令風の騎馬やら、王都から出立したらしい騎乗の集団。
時折ではあるがどちらも物々しい形でそれぞれの速さで行き交って―――街道はすこし、埃っぽいくらい。
「―――すみません」
その街道をひとり、徒歩で王都から遠ざかる女がひとり。
傍らを過ぎていった馬上の主に振返りざまに怒鳴られて、その言葉の内容は―――幸いなことに――聞き取れなかったものの、叱責する調子だったのにおざなりな謝罪を零す。
無論、そのまますごい勢いで向こうへ駆けていった相手には届かなかったろう。
(ぼーっとしちゃったみたいだ)
引き結んでいた口元が苦笑に緩む。
生き生きと行き交う馬を眺めるのは好きだ。
つい歩きながら目線や注意が逸れて、たまにさっきの様にすれすれをすれ違う羽目になる。
まだその蹄鉄の餌食になることにはなっていないけれど…
進むのか、街道脇の丘に登って行き交う馬を眺めるのか、どちらかにした方が良いかもしれない。
住処たる森はそう遠くないし、夜目も効く。
少しばかり、道草を食っても悪いことはない、筈だ。
■ナラン > また傍らを、騎馬の集団が駆けていく。ターバンから零れている女の編んだ黒髪が揺れる。
騎士だろうか、馬までも物々しい兜を被せられて、足元は大丈夫なんだろうかとちょっとヒヤヒヤする。
流石に王都の騎士が乗るものなら、それくらいは訓練されているのだろうけど。
日暮れを過ぎたら、流石にこの馬たちも休みに入るだろう。
(それまでくらいなら、先を急ぐでもなし)
ちょっとした贅沢気分になって、ターバンの下、鳶色の瞳は好奇心に煌めきながら口元は上機嫌に綻ぶ。
少し低くなっている場所から街道脇の叢へ飛び乗るとそのまま、街道を見下ろす丘の上を目指して、その背中が遠ざかる…
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からナランさんが去りました。