2020/03/23 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にフィルさんが現れました。
■フィル > まだ時折肌寒さを感じさせる日は訪れるものの、暖かさを感じられる日のほうが増えているのは、季節の変わり目をより感じさせるものかもしれない。
今宵吹き抜ける夜風も身を震わせるものではなく。
どこか温かさを感じさせるものであれば、過ごしやすく散歩の一つでもするには丁度いいものだろう。
もっとも、時折寒い日が混じる安定しきっていない気候のせいか。
時折雨粒も突然降り注ぐこともあれば、油断大敵といえるものである。
今もまた、不意に月明かりが陰ったと思えば降り注ぐ雨粒に襲われ。
フードを目深にかぶった少年は、人気のない街から少し進んだ先にある街道を走る羽目になったようだ。
「折角外に出た時に限って…まったく…」
街に移り住んでからしばらくの少年である。
軽い里帰りとまでいかずとも、久々に町の外へと足を運んで外の空気を楽しんでいたようであるが。
あまり魔物は出ない街道というのに、フクロウのような獣に追われ。
振り切った先では、通り雨に襲われと、何ともついてない有様となったようだ。
街道から少しだけ外れたところにある、大き目な木々へと目を付ければその舌まで一気に駆け込み。
体をゆすって、ローブやフードにまとわりつく雨粒を振り下ろせば、一旦フードを下ろして一息ついていくことにしたようである。
「もう少し安全なら…街道露店とかも、良さそうだけど…」
長く降り続きそうではないものの、通り雨だからか降り注ぐ雨粒自体は激しく。
静かな夜の街道に、響き渡る派手な水音はあたりの音が聞こえづらいほどである。
幸い逃げ込んだ、大きな洞もある木は、葉もしっかりと茂っており、根元にいるだけで雨粒もあまり降り注いでこないのは、不幸中の幸いかもしれず。
雨粒降り注ぐ街道へと視線を向けて、少年はそんなことをぽつりとこぼし。
一旦ローブを脱ぐようにして、少しでも乾かすように低めの枝に引っ掛けようとしたようだ。
もっとも、あまり低い枝がなかったようであり。
何度かぴょんぴょんと飛び跳ねる様にして、干すのにちょうどいい枝に引っ掛けようとしていくが。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にイルルゥさんが現れました。
■イルルゥ > ざぁざぁと音を立てて降る通り雨の被害を受けたのは少年だけではなかった。
単独で採集依頼を受け、さて帰ろうとしていた、とある冒険者も被害を受けていて。
依頼自体は簡単だったが、雨で視界が悪くなっている中、魔物も凶暴な獣も出る街道を行くわけにはいかない。
仕方なく、周りを見渡せば丁度良く傘代わりの巨木が多量にある一帯を見つけてそこへ滑り込み、一息つく。
ただ、誤算だったのは…
「――――!」
そこに、先客が居たこと。
びく、とローブに包まれた体を震わせる。
誰も居なければ、自分も先客と同じくローブを脱いで身体を拭きたかったのだが…
人目に自分の姿が晒されるのは避けたい。
冒険者ギルドでも、彼女はある程度は名前も知られているからこそ、そういった部分にも気を付ける必要があった。
巨木の傘で大分軽減されたものの、まだぽたぽたと雨粒が垂れる空間に無言でいるのも居るのも気まずくなり、出ようとは思うけれど。
この一角に入る際に、ローブを頑張って枝に引っ掛けようとしている姿を目撃したため、流石に無視するわけにもいかず。
「あの。…良かったら、手伝いましょうか」
任せてくれれば、自分は魔力による身体強化ができる。
自分のフードは、抑えながら跳べば問題ないだろう。
おずおずと片手を出して、少年のローブを受け取ろうとする。
■フィル > 変化を使うか、いっその事元の姿に戻って身体能力を獣人に戻してしまおうか。
そんなことを考えてピョンピョンと飛び跳ねている姿は、はたから見れば少々奇妙なようにも見えるかもしれないだろう。
なにせ、いくら街道近くで安全が大分保証されているとはいえ、万が一がある場所なのである。
少数、ましてや一人で夜に出歩くような人は、相当な熟練者かある程度危険に慣れているものがほとんどであり。
一人で警戒も薄く歩いているようなものは少ないのだから。
「へ…ぇあ…え?!」
そんなことをしていれば、同じように安全と雨をしのぐための雨宿りのために、木の下へとやってきた直ぐに人物に気づかなかったのだろう。
相手が自らに気づいても、まだ飛び跳ね。
変化を少し解き始めようと、耳や尻尾を出しかけていたところだったのだから、そっと掛けられた声にはよほど驚いたようである。
着地の際にバランスを崩して、ベチっと木の幹に鼻を打つように倒れかかって情けない声を上げてしまったのだから。
「いたた…あ、いえ。ありがとう、ございます。
す、すみません…他に人がいたのに気づかなくて…。
えっと、あなたも…雨宿り、ですか?」
擦りむきかけた鼻先を軽く撫でては、少年は声をかけてくれたほうへと向き直り。
慌てたように頭を下げて丁寧にこぼしてしまうのは、半ば反射的な所もあるかもしれない。
街道外れの夜で自分と同じように一人で歩き、木の下へときた人物。
元の姿の修正からか、鼻を利かせてしまえば、女性ということまでは声と合わせて判断できたようであり。
怪しいと思うより先に、親切な申し出に同じ雨宿りと直ぐに思ってしまったようだ。
聊か不用心にも見えるものの、ありがたい申し出にそっとローブを、一度叩いて雨粒をさらに落としてから差し出していくが。
適度にきれいに洗っているとはいえ、長く使っているローブである。
多少少年の香りは染みついてしまっているかもしれないが。
彼女のずぶ濡れの姿を見れば、そんな言葉を差し出しながらも続けていき。
■イルルゥ > 少年の考えていることなど、ローブの少女にはわからない。
すぐに去らずに声をかけたのは、それが彼女の性質…優しい性格故だからだ。
昔、ある人に助けられたからこそ、優しくすることは当然だと思っていて。
悪人に見えるならともかく、相手はそうは見えない…むしろ、なぜこんなところに居るのかわからないような姿だ。
そんな相手が困っていれば、助けたくなるのは彼女にとっては自然なこと。
「えと、はい。依頼を受けてこの近くに来たんですけど…この雨で。
その…、何か戦う術は持っているんですか?この辺は魔物も…あ、先にかけますね」
心配そうに声をかけつつ、ローブを受け取る。
受け取った際に、小さなローブ姿が何故かぴくん、と跳ねて。
一つ、息を吐いてから、魔力を足に溜める。
そして、少年の答えを聞く前に、軽くその場で浮くように跳躍し。
片手はフードが見えにくいように抑え、少しうつむき気味に。
難しい姿勢ではあるが、枝にローブを引っ掛けるだけなら問題ない。
そのまますとん、と地面に再び降り立ち。
少年が上を見上げていれば、顔は見えないもののめくれ上がったローブの裾から太ももや短めのズボンなどが見えるだろう。
尻尾はぴったりと背中に張り付けるように立たせているため、見えるかどうかはわからないが。
「…ふぅ。……この辺、森の奥ほどじゃないですけど、ちょっと危ないので。…一人なら、何か魔物と戦えるモノがないと…」
きゅ、とローブを更に深くかぶりながら、話の続きを。
心配そうな声音からは嘘の気配は感じられず。純粋に、少年の身を案じているのだろう。
ぼたぼたと、少女のローブからも水滴が垂れ。
「くちゅん…っ…。……うぅ……」
可愛らしいくしゃみが、心配の言葉の合間から漏れた。
■フィル > 基本的に襲撃は逃げの一手を取りやすい少年である。
驚いたものの、丁寧ともいえる様子で声をかけてもらえたのは、少々無防備だった身には幸運といえるかもしれない。
彼女のやさしさの理由をしらなくとも、その雰囲気には多かれ少なかれ、少年は警戒を解きやすかったようであり。
「突然の土砂降りですもんね…。
あ、いえ…戦いは得意ではないんですけど…」
多少湿った空気を感じ取れる。
そんな少年の野生の感覚のもってしても、突然すぎる雨は予測しきれなかったのだろう。
彼女も雨宿りであったことを聞けば、言葉を返して見守っていくが。
一見自分より小柄な彼女が、軽々と跳躍をしたのを見れば、そのしなやかさに思わず目を丸くしてしまったようである。
言葉半分で飛び上がった彼女が、そのまま降りてくるのを見守っていれば、思わず反射的に拍手の一つでも送りそうになったようだが。
多少の魔術の心得があるからか、彼女が飛び上がるときにわずかな魔力の流れを感じていれば、興味は惹かれるのだろう。
濡れたローブであり、薄暗いこともあってか、ズボンまでは見えたようであるが、どうやら尻尾までは影の一部くらいしにか見えなかったようだが。
「凄い…跳躍力…って、えと、一応逃げたり…ちょっとした技は使えるんですけど…。
あの…」
続く言葉にハっとしたように、少年もまた彼女の言葉に改めて返していくことになる。
逃げの一手、逃げるだけなら何とかなるのは確かであるが。
逃げるだけという答えは、戦うすべを持っていないと危ないのをわかっている、彼女のような人たちからすれば、多少頼りない答えかもしれず。
言葉をさらに続けようとするが、一つくしゃみが零れれば少年の言葉はそこで止まり。
「体冷えてません?
濡れたままだと…風邪ひいちゃいますし。
よかったら…ローブ以外は僕は濡れてませんし…長袖代わりに使いませんか?
もちろん、着るときは…その横向いてますから」
善意には善意をといったところである。
少年は彼女の体調を心配するように、そう言葉を続ければ自らの濡れていない長そでを指し示していく。
無理にローブを脱がそうとしないのは、女性であるという気遣いであり。
無遠慮だからと思ったからだろう。
よければと、ポーチから軽く水けを拭えそうな、ハンカチ程度の布を差し出し。
長そでの留め具を揺るめていくが。
■イルルゥ > 頑張って練習した丁寧な言葉使いは、怪しまれないようにするためといい印象を与えるためのもの。
いい印象を与えれば、彼女がローブを脱ぐことを強く拒絶しても受け入れられることが多くなる。
魔力操作によって少年のローブをかける動作は何でもないことのように自然だ。
この技術が無ければ、彼女も冒険者業を続けられていない。
ただし、ローブの内から尻尾が見えてないか気になったのか、着地した後何度かぽむぽむと自分のお尻を触ったりしていた。
「逃げるって…、囲まれた時とか、魔獣によっては捕縛してくるのも居ますし…」
心配そうに言葉を続けるが、くしゃみによってさえぎられてしまう。
彼女のバックパックにも一応布は入っているが。
今は採集した素材を雨から多少でも保護するために使われてしまっている。
「あ、う。いえ、その…大丈夫です。それよりも、あなたの方がしんぱ……、くしゅんっ!!」
少年からの申し出に、ローブから見える口元が迷うにもごもごと動き。
話題を反らそうとするが、また、今度は少し大きいくしゃみによって遮られてしまう。
こうなってはもう、冷えていることを誤魔化すことはできない。
それに、相手は純粋な善意の感情を向けてきているし、自分の事も知らないようだ。
それなら、無理に自分の正体を暴くような行動もしないだろうと考え。
「あの、……雨が、止むまで、借り、ます。…火を起こせればいいんですけど、ここだと、難しそう、ですし」
申し訳なさそうに途切れ途切れにそう言って、きょろきょろと忙しなく視線を動かす。
悪意が混じっていれば…敏感な彼女は感じ取っただろう。
けれど、優しさも知っているからこそ純粋な善意は断りにくい。
相手が長袖の留め具を緩めていけば、なぜかまたびく、と身体を跳ねさせ。
受け取った布で、顔や手を軽く拭いていく。
それだけで、もうハンカチ程度の布ではぐしょぐしょになってしまうほど少女の身体は濡れそぼってしまっていて。
「この布は、乾かして返します…えと、王都に住んでます…よね?…それにしても、近くに、洞窟とか…あればいいんですけどね。街道沿いだと中々……」
木陰では雨を防ぐのも少し限度がある。
話を少し反らしながら、少年が長袖を脱ぐのを待とう。
■フィル > 良くも悪くも騙されやすく、人を信じやすい少年にとっては、丁寧な物腰は特に好意的な印象となったのだろう。
怖い人には緊張感を持ってしまう部分がどうしてもあるから、なのであるが。
彼女が何度もお尻周りを気にするように、手で叩くのを見れば多少な気になるのだろう。
少し首をかしげては視線を向けてしまうが。
何かを落とした様子でもなく、市具に視線を向けられればそれ以上追求しないのは、一見何も問題なさそうだからといったようである。
「僕はその…多少の寒さは大丈夫ですから。
逃げるにしても…体質といいますかその…いろいろ便利な技をもってますし。
人よりは丈夫ですから…」
何度もクシャミが続いてしまえば、流石に少年でも大丈夫ではないと確証するには十分だったようだ。
彼女のクシャミ途中の心配には、理由はともかく大丈夫、とだけ返していけば、彼女に風邪をひかせたりしないようにということに、少年の思考は向いているようである。
姿をばらせたら楽なのだろうが。
そんな少女の様子をうかがいながらも、ヒトよりは丈夫ということだけ、とりあえず零したようである。
町はずれの雑貨店をメインに暮らしていれば、彼女のことを知らないのは幸か不幸か。
すっかり彼女へ向けられる感情は、少年は続くクシャミへの心配の感情となっており。
「遠慮なく、ですけど。確かにここは湿ってますしね…。
洞は…二人じゃ少し狭いでしょうし…。街まで走ったら…元も子もないですし」
火を起こしても湿っているので、下手すればすぐに消えてしまうだろう。
その分、延焼の心配はないわけであるが、あまり得策ではないのは変わりなく。
木の裏面を思い出せば、大きな木だけあって軽く潜り込みそうな洞があったのを思い出すが、二人では少し狭そうであれば、それもいい手ではないか。
とばかりに少年は長そでを脱ぎながら、彼女の提案に合わせる様にこぼしていく。
少年は長そでを脱げば、上は素肌であり。
程よく引き締まりながらも、少々ほっそりとした上半身が彼女の視界にはさらされることになるだろうが。
彼女がまた気づけば軽く体をはねさせる様子に、少しだけ首を傾げていく。
寒くて悪寒でも走っているのだろうか、といった考えのようであるが。
「住んでますけど、別に…そこまで丁寧に扱わなくても大丈夫ですよ。
ハンカチも…いったん絞りますね。」
彼女へと脱いだ長そでを差し出せば、代わりに少年は濡れそぼってしまったハンカチを受け取ろうしていき。
丁寧に服を綺麗にして返そう、とばかりの彼女の様子に笑みを零してしまうことになるが。
「洞窟は…この辺だと崖沿い行かないとなさそうですしね…。
やっぱり木の洞に入ります…?一人なら広いと思いますけど…。」
と彼女を優先に考えるのは、やはり純粋な善意からだろう。
そんな中、これだけ薄暗ければ、大丈夫だろうか、と少年は少しだけ変化を解いていくことにしたようであり。
薄っすらと晒されている皮膚に体毛を宿していけば、寒さ対策を軽くはじめていくが。
当然獣としての部分を濃くあらわにすれば、ヒトではなく。
獣の雄としての香りは濃く零れはじめることになり。
■イルルゥ > 少年の、少しおどおどした雰囲気も彼女の庇護欲を誘う一因となり。
どうしても、逃げるだけだという少年に対しての心配は止まらない。
とはいえ、身体が冷えたためかくしゃみを連発する少女の方が心配されてしまっているのだが。
「人、より?ええと…、くしゅんっ、う、ぅ…」
何か、妙な言い回しを聞いた気がするけれど。
思考がくしゃみと鼻水によって遮られる。
初対面の相手の前で情けない姿を見せてしまっている羞恥もあり。
浮かんだ疑問はそれに塗りつぶされていく。
「洞…、……あ、う………」
急いで走ってきたためか、木の裏までは見ていなかった。
焚火などを作ることは流石にできないが、それなら交代で少し暖を取るくらいはできそうだ、などと少し考えたところで。
少年の長袖の留め具が外され、素肌が露になっていく。
それだけで、服に閉じ込められていた匂いが彼女の鼻に届き、ぶる、っと一際大きく身体が跳ねて。
何か戸惑うようにきょろきょろとフードの頭が揺れる。
「は、い……でも、せっかく貸してもらったのに、ぐしょぐしょに…」
少しだけ抵抗…というか申し訳なさそうにするけれど。
少年が笑いながらハンカチを求めれば、固辞し続けることはできず。
服と交換するように、濡れたハンカチを渡して。
「そ、そう……です、ね…っ、えっと、じゃあ裏側に行きますから、しばらく…、ひうっ!?」
少年が言うのなら一人分のスペースはあるのだろう。
そう信じて、長袖を抱えて頷くけれど。
薄暗く、視界も薄く、匂いも雨でかき消されやすい。
そんな中でも、少年から漂う濃い匂いが彼女を直撃し。
頓狂な声をあげて、ぐる、とその場で後ろを向き。…その肩が、なぜか激しく震え始めるも。
「あ、あああ、ありがと、ございます!、き、着替えて、来ますので!!」
叫ぶようにそう言って、たた、と木の裏…少年が見つけた洞に飛び込んでいく。
少女にとっては、自分の体質を明らかにしないための行動。
ただし、それは…冷静に考えればわかることだったが、彼女にとっては逆効果となる。
鼻に残る少年の獣の香りと。
先ほどまで、少年の素肌に触れていた長袖。
それに、狭く、匂いが充満しやすい狭い洞の中。
そんな条件が合わされば。
彼女の理性的な部分が溶け、思考がぼんやりと霞んでくる。
自然、ぶる、と…寒さではない震えが洞の中で起こり。
少年の、長袖を抱きしめて。
そして、少年からすれば少し長い時間の後……
―――――――ぁ、……ふ、ぁ……ぁ……っ
丁度、彼女が入っていった洞の辺りから。
悩まし気な声が、雨音に混じって、小さく響き始める―――
■フィル > ある程度しっかりと、色々慣れてきたといっても、彼女から見てまだまだの通り、頼りない部分ははたから見れば強いのだろう。
少年といえば、そう思われては気づいていないのか、風邪をひいてしまいそうな彼女のほうを心配し続けているのであるが。
「はい、人よりは大分丈夫だと思います。
それでもまだまだなんですけど…とりあえず…こっち側に…」
正体を隠してることが多いのに、安心させようとするために、聞き返される言葉にまたその言葉を返してしまうのは、自覚してのことなのだろうか。
今はどう見てもぱっと見、人の少年でしかないのだろうが。
彼女の状態をからかいの目で見ることもなく。
更に冷え込みに拍車がかかっていそうな様子であれば、より心配のほうが募っているようであり。
彼女が気づいていない、洞の様子に反応を見せれば、木の側面を示すように指を出して見せるのだ。
そうしながらも、自身の裸にはそこまで羞恥が少年はないせいか。
彼女の頭が揺れる様子が、寒気のせいだと思えば、より気遣うような心意気は強くなってしまっているようだが。
「拭くための布ですから…気にしないでください。
タオルでもあればよかったんですけど…って…あれ?」
受け取ったハンカチを手に取れば、横に向けてしっかりと絞っていく。
飛沫がお互いに掛からないようにしながらも、しっかりと絞れてしまうのだから、そのびしょぬれぶりが実感できるものであり。
絞れば軽くゆすって残りの水分をはじいていくが。
その香りに少し鼻先をくすぐられれば、少年は少しだけピクリと鼻先を震わせていき。
「あ、はい!慌てなくても大丈夫ですから…!
着替えても落ち着くまでいても…!」
人の少女にかしたはずのハンカチに残る香りは、人のようで人ではないものである。
気のせいかと思考を巡らせながらも、彼女がどこか慌てふためいているかのような様子で、そそくさと洞へと向かって進んでいってしまえば、気になるのは仕方ないかもしれない。
そこまで寒かったのか、ほかに何かあったのか。
とりあえず一息つける場所なら、ゆっくりできるはずという、心遣いもあったのだろうが。
木の周りをぐるぐる回れば、反対側の相手が見つけにくいくらいにはそれなりに立派な大木である。
洞は彼女なら軽く飛べば、手をかけずとも潜り込めそうな高さであり。
一人分はかがめば確かに潜り込めるくらいに口を開けているだろう。
ただ思った以上に、洞の中に入ってしまえば綺麗に洞の中は大木をくりぬいたように大きな空洞となっており。
入口から少し落ちるような低さの位置から、平らになっていれば洞にしては思った以上に広い空間だったかもしれない。
とはいえ、それはあくまで洞にしてはなのだが。
「…大丈夫かな…。
そういえば…これなら多少は暖に…?」
思い出すのは火を使わない魔石のカンテラである。
ある程度狭い空間なら明かりは足りるし、発せられる熱でいいのでは、なんて持っている道具から思い出したようだが。
気が付けばなかなか戻ってこない彼女に、少年の意識は向き始めることになり。
僅かに、雨音に混じる声が聞こえ始めれば、十分な時間もたったのだから着替えはいいはず。
という考えのもとに、少年は洞のほうへと回り込み。
軽く洞のふちに手をかけて、よじ登るようにして、中の様子を見ていったか―
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からイルルゥさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からフィルさんが去りました。