2019/12/20 のログ
ラスティアル > 「お前達にとっても悩みどころだよな。分け前が増えて喜ぶべきか、楽だと思った強盗がこんな結果になって悲しむべきか」

 絶え間なく喋りながら、剣を右手に、クロスボウを左手に構えて遮蔽物から顔を出す。刹那、自分と同じく飛び道具を持つ男が目に入った。
 間髪入れずに左手を跳ね上げ、引き金を引く。弩が短弓を持った盗賊の喉を射抜いて、濁音混じりの悲鳴を上げた敵が血の泡を吐きのたうち回った。

「……それで?」

 撃ち合いに勝った男が剣を手に歩み寄ると、最後の1人は武器を捨て、跪いて命乞いを始めた。殺さないでくれ。もう二度とあんたの前には現れない。二度と悪さはしない。そんなようなことを、切々と語る。

ラスティアル > 「分かった。分かったよ。……さ、行くんだ」

 撃ち終えたクロスボウを背に戻し、血を払ったロングソードを鞘に戻した男は盗賊に背を向け後ろ手を振る。当然、そんな隙を見せられた悪党が我慢など出来るはずもない。地面に置いた手斧を再び掴んで、立ち去ろうとする男に向け振り被った。

「そう来ると思った」

 生き残れるはずだった盗賊が見た最後の光景は、角持つ男の苦笑いだった。左手で二振り目の剣を取った男が振り向きざまに抜き放つ。切断された首が血しぶきと共に転がり、革のブーツに当たって止まる。

ラスティアル > 「しかしこっちも困ったな。商人が生きてりゃお助け賃をせしめたんだが」

 御者台からずり落ちるようにして死んでいる、身なりと恰幅の良い中年男を見下ろした男は、次に荷台を覗き込む。

「おまけに運んでたのは、よりにもよって……」

 わざとらしく溜息をつくと、少女たちの啜り泣きが大きくなった。鎖を引きずる音も聞こえてくる。そう、これは奴隷商人の馬車だったのだ。積まれているのは見目麗しい女ばかり。明らかに、そっちの仕事をさせる為の奴隷である。

「マグメールはこういうのを大っぴらにやってるとは聞いてたが、着いてそうそうこれは……」

 笑いながら頬を掻くと、少女達は不安げに男を見上げた。売られる側にとっては、商人も盗賊も、盗賊を襲ったこの男も大した違いはないのだろう。

「さて、どうするかな……」

ラスティアル > 「自由にしてやるったって、帰る場所がないってことはあるだろうし」

腕組みし、首を捻る。

「帰って売り物になれってのも何だし。……あー、もし、何かしたいとかどっか行きたいとかあれば」

 言いかけたところで、奴隷の少女たちが一斉に声を上げた。此処から連れ出して欲しい、お母さんに会いたい、行く当てもないからお店に帰る、などなど。

「あぁその、分かった。1人ずつな。とりあえずどっかで朝まで待たないと」

 少女達に手を貸して馬車から下ろし、奴隷商人の死体から見つけた鍵束で枷を外す男は、もう一度溜息をついた。どうやら、王都につくまでにもう一仕事しなくてはならなそうだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からラスティアルさんが去りました。