2019/11/26 のログ
アルフレーダ > 横暴な王女を乗せるのだから、当然出発前に入念なチェックがなされた。
だというのに、車輪は見るも無残であった。
このままでは王女を長時間待ちぼうけにさせてしまう。
王都に戻った後、どのような叱責と罰を受けるのか。
それを想像した御者にとっても侍従にとっても、男は救世主となった。
だがもしかしたら彼の過去の謀略を少しでも聞き及んでいたなら、侍従は答えを渋ったのかもしれない。
しかし半ば操られたような侍従はそういった様子もなく、王女の元へと戻る。

「なによ、直らないの?……無能なのね、あの御者は。」

まずは御者を責め、視線が鋭く横に振れた。
戻ったら相応の罰を与えねばならない。
偶然フェリサ家の馬車が通ったから良いものの、通らなかったらどうするつもりだったのか。
だがそれもこれも王都に帰還した後だ。
王女はカルネテル王家の馬車から降りると、フェリサ家の馬車へ近づく。
すでに出迎えの者がおり、恭しく差し出された手をとると、ドレスの裾を摘まみながら車内へ入った。

そもそもの原因はどうであれ、何も気づいていない以上、まずは男に礼でも述べるものなのだろう。
だが王女はしおらしく振る舞うでもなく、車内を一瞥してから。

「ごきげんよう、アダン殿。久しいわね。」

宜しくなどという言葉も選ばず、唇に小生意気な笑みをのせる。
尊大な態度であり、やや大人びた黒いドレスに身を包んではいるが、まだ17の小娘である。

アダン > 「お久しゅうございますアルフレーダ様。お怪我などはございませんでしょうか。……では、参りましょうか。王女殿下をお迎えするような車では当然ございませんが、王都まではそうかかりませぬ。どうか今しばらくの間ご我慢いただければと」

王女を車内に迎えたアダンは、薄く笑みを作り、慇懃な態度を以て彼女を遇した。
馬車内は貴族のそれらしく豪奢な作りであり、座席も申し分ないものだ。
そんな馬車がゆっくりと街道を進み始めた。本来なら彼女の侍従も同乗すべきところのはずだが、侍従は乗り込むこともなくそのままフェリサ家の馬車を見送ってしまう。
彼女の周りには今、アダンの息のかかった人間しかいない。

「御身のご活躍の噂は私の耳にもよく届いております。ぜひ、当家とは今後とも良いご関係でいていただければと切に願うばかりですが、しかし――」

アダンは丁寧な口調で言葉を述べているが、やがて下卑た笑いを浮かべ、彼女の身体をゆっくりと眺め回していく。

「あまり好き放題にお暴れいただきますのは私としても少し、困ったことでありましてな。ぜひ一度、お諌めしなければならぬと考えていたところでした」

彼女に対し、諌めるなどという言葉をアダンは平然と吐いた。それだけで重罪とされてもしかたのないことだ。しかし言葉はまだ続く。

「どれほど高貴な身分に生まれたとしても、雌は雌。男に屈服する定めにあることをわからせる必要があります。さて、覚悟はいいな?」

おそらく彼女がほとんど言われたことなどないような、下劣な罵倒をアダンは平然と行ってのける。
最後には取り繕っていた丁寧な言葉さえ使うことはなくなって。
言葉と同時にアダンの指輪が光り輝き、彼女の周囲から不可視の魔術的な鎖が現れ、その四肢を絡め取る。
手は大きく上に掲げられる形となり、足は大きく広げさせられる。
そのまま彼女の自由を奪うこととなるだろう。

アルフレーダ > フェリサ家当主とは対面して腰掛ければ、馬車はすぐに出発する。
御者と侍従が苦労しようが特に気にもしていない様子の王女は、また退屈そうな顔を見せるが、話し相手がいるだけいいのだろうか。

「――――――は…?」

よく舌の回る男だ。くらいに考えていたかもしれない。
特に頷くでもなく、愛想笑いを浮かべるでもなく、
男の顔も流れる景色も似たようなものだと視線を流していた王女が、雲行きの怪しくなった男の言葉に眉を顰めた。

今、この男は何と言った?

なにかと敵が多く、無駄な抵抗をする民を足蹴にしてきた王女であったが、過去この男は忠実であったはずだが。
王位を狙う者が王家の中にひしめく以上、敵対する者は多いものの、表向きそんなそぶりはなかったが。

「お前、誰に何を言っているのか理解しているの?」

突然のことに激昂するにも時間がかかるようで、苛立ちを露わにしても比較的穏やかに感じられる声音。
が、それ以上の言葉を発することができなかったのは憤怒を表現するより驚きが勝ったからであった。
本人の意思ではない力で両腕と脚が動く。拘束される。
腕は――まだいい。乳房が腋に引っ張られて軽く揺れる程度。
だが開脚させられればドレスの中で股が品なく開き、ドレスと同様黒い下着に包まれた秘部すらうっすら開く。
雌、男に屈服する。その言葉が何を示すのか、察知するしかない王女がそれに危機感を覚えるのも当然のことだろう。

「無礼なっ……馬車を止めなさいっ!この男と同罪になりたくないのならね!」

声を張り上げ、当主ではなくフェリサ家の従者たちに脅しをかけた。
カルネテル王家の王女と貴族の当主。どちらが権力を持っているのか理解させようとしたのだ。
――――が、密室となった車内での出来事は秘められる。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアダンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアルフレーダさんが去りました。