2019/11/20 のログ
■春芳院 > (従者の風貌はまさに死人の相であった。紅蓮に照らされる姿は、聞こえる笑い声と共に不気味を際立たせる。悲鳴を上げようにも、声が出てこない。腕を地に付けさせられ、足を開かさせられ。この体勢はもしや───。恐怖、の二文字が面に滲んでは眸をぎゅ、と固く閉じた。)
「っ─────!!」
(だが、瞬間響いたのは夥しい絶叫。対して身体に感じる痛み等は全く無い。恐る恐る開く翡翠。崩れ落ちる従者2名が映り、その背後には闇に包まれた人影。白刃が紅く反射している。状況を把握出来ず、眸を瞬かせている間に粒子が巻き起こっては再び辺りに闇が満ちる。若い青年はいつの間にか逃げてしまった様、灯火だけが辺り一帯を照らす。)
「‥……あ‥…。‥……はい。大丈夫。」
(闇に混じっていた人影が、外套を抜けば露になる姿に翡翠の視線は思わず釘付けになる。漆黒の髪は闇に混じった儘だが、色白の肌に映える伏せがちの紅の眸は何処か吸い寄せられる様な感覚になる位に、綺麗だと。そんな彼から手を差し伸べられ、重ねようとするも言葉は少し未だ警戒心が残る様なもので。立ち上がるや否や、彼の言葉を聞いて我を取り戻したかの様に、彼に礼を述べるのも忘れるが儘倒れる従者達に寄り添おうと一旦彼の手を離そうとするか。)
「あ、あの‥……!彼等は、助かりますのやろか‥……?」
■アルファ > (突然の出来事で身を固くするその人から離した手で顎を擦って)
「もしかして、もうちょっと遅れて登場した方が良かったり?」
(そんな冗談を告げながらにっ、と唇で描く笑みに白い歯列が覗く。その後は気丈にも従者を慮り寄り添う姿を眺めながら、手持ちぶたさに横転した籠を肩で押して元に戻していく)
「よいしょ…っと。 大丈夫。俺が斬ったのは背後に取り付いたレイスだけだから)
(籠に誂えられたカンテラの一つを手に取り。倒れ伏す二人の従者の顔を照らして)
「まだ顔は青白いけれど。半刻もしないうちにピンピンに元気になるよ。
ところで、こんな夜更けに街道を通るなんてどうしたの?夜は魔物も活発だし、野党だっている。
それに―― 」
(カンテラは従者から女性へと流れ。その異国の風体を柔らかなカンテラの明かりで照らし出し)
「うーん……どこかのお姫様なのかな?」
(小さく唸り乍、黒髪が横に垂れ流れるほど顔を傾斜させてゆく)
■春芳院 > (此方の勝手な偏見かもしれないが、彼の風貌から所謂クールな殿方だと思い描いていたものだから、冗談めいた発言に眸を幾らか瞬かせながらも首を横に必死に振って。従者へ寄り添い、首に触れ脈を確認すれば安堵の余り溜息を溢し。改めて、立ち上がり彼の方へと歩みを進めれば元通りの駕籠を視界に入れつつ深々とお辞儀をして。)
「本当に、有難う御座いました。そちらはんのお陰様で、命拾い致しやした。‥……凄い力を、お持ちになられはってるんやね。先程のは、レイスと仰るんどす?」
(彼の言動によって救われ、精一杯の感謝として頭を下げ。暫しお辞儀の後、ゆっくり顔を上げれば翡翠を細め柔らかく唇は滑らかに弧を描いていた。灯火に照らされる中、至極真当な問いに少し眉尻を下げ苦笑を滲ませて。)
「仕事で、遠方の街に行っていたのやけれど‥…。思った以上に、帰りが他遅くなってしもて。───ふふ、お姫様やったらもっと豪華な乗り物で、護衛ももっと付けんとあきまへんなぁ。」
■アルファ > 「ん?どしたの?」
(テレパシーの類は持たないが瞬く凝視に何かと伺う首が更に横に傾げられる。そんなふざけた態度も慇懃な礼をされたのならば朱射す目元を隠すように深々と頭を下げるのだが)
「い、いえいえ。どういたしまして。根無し草なんで街道の途中で野営をしていたら夜が騒がしくなってね。放っておいたら夢見が悪いと思ってお節介をかけただけ。
対した力じゃないさ。ちょっと普通のヒトと違うだけ。
そう。レイスとかゴーストとか……東方ならば幽霊、とか?」
(最後に相手の衣服を見定めて告げた唇は、頭上で見守る欠けた月のように弧を描いて微笑む翡翠にお返しをした。そうしてふらつきながらも起き上がる従者達に手を差し出して立ち上がるのを手伝いながら)
「なるほど。商家のお嬢様かな?でもこんな重そうな籠を担ぐお供なんて俺には雇えないな。羨ましい。
護衛……か。ふぅむ」
(既に籠で運ぶ準備に勤しむ従者の健全たるや見遣りながら、外套を翻して腕を組み)
「俺を雇わない?代金は豪華な夕食でいいや。随分と仕事を怠けていたから1ヶ月飯を食っていなかったんだ。
腕はまぁ…霊相手ならばさっき見た通り、ということで」
(どう?と親指と人差し指を丸めた手を持ち上げながら片目を瞑った)
■春芳院 > (どうやら余りにも彼を凝視し過ぎていた様子。横に傾けられる首と問いに首を必死に横に振っては、抱いていた想像を全て取り払う様に何でも無いと告げる唇は少し早口だったか。)
「そちらはんは、冒険者の方?まぁ!野宿するおつもりやったんどす?寒いですやろに。‥……でもとても、格好良かった‥……! 嗚呼、成る程。あれも幽霊の類いやったんやなぁ。」
(紡がれる口調も何処か親しみやすいもので、つられて問いを沢山紡いでは彼への好奇心に翡翠は煌めいていた。会話を嗜みながらも従者に手を貸す紳士振りに、漆黒の高祖頭巾を剥いでは後方で纏められた若草の髪と少し幼さが残る顔立ちを露にして。彼が暫し腕を組み、何か思考を巡らす様子を従者達に気遣いながら不思議そうに視界に入れ。)
「‥…まぁ!雇うだなんて、そんな!護衛の人手が足りんのが、今うちの一番の問題やから有り難い事。けれど、先ずは命の恩人であるおたくはんには、うちにお招きしておもてなしさせて下さいまし。御食事も沢山御用意させてもらいます。」
(思わず眸を見開き、声が上がる。雇用の権限は、店の主人に有る為伺わなければならないが先ずはおもてなしをしたい。感謝の気持ちをつらつらと告げては懇願するかの如く、指を丸めて見せる彼の手を両手で包み込む様に握ろうとする細く白い手。)
■アルファ > 「まぁ、冒険者兼無宿人かな。この体のお陰で夜は友達なんだ。
この闇で起きてることが手にとるように分かる……なんて。
カッコいいだなんて褒めたら、こんなクッサイ台詞ばかり吐いちゃうよ」
(外套をドレスの裾のように踊らせ翻し。最後の〆は照れくさそうに後頭部を描く姿で。商談成立どころか。命の恩人とばかり言われては――心身落ち着く夜の中で、まるで羽毛に包まれる心地となり、擽ったそうに肩を竦めた)
「あはは、そこまで言われるほど。大したことはしてないけれど、ご馳走してくれるならお持て成しに応じよっかな?
……うん」
(小さく独り頷く。姫君と見紛うほど高嶺と見えた女性が、年相応より幼気な相貌で見遣ってくれるのに、仲良くなれそうだなんて感想に及んだから。だから最後に右手を差し出して)
「俺はアルファ。よろしくね。
――それじゃ先頭に立って周囲を『感知』しておくから。お嬢様の運びをお願いね二人共」
(フードを目深く被った姿を先頭に、籠を運ぶ一行は狐月が見守る許で夜の街道を去っていった)
■春芳院 > 「では、逆に朝や昼下がりの時間は苦手って事になるんやろか?
ふふ。見た目も中身も麗しいおたくはんには、そういう台詞とてもお似合いやわ。」
(照れ臭さを滲ませた彼に親近感が沸き、戯言めいた本音を愉快気に唇にのせて。彼が誘いに応じてくれたならば、心底歓喜に満ちた笑みを浮かべて。差し出された右手をぎゅ、と包み込む様に両手で握って。彼から名乗りが上がれば、無礼だったとばかりに頭を下げ。)
「あぁ‥…!先に名乗らせてしもて、申し訳ありまへん。うちは‥…、『春芳院』と呼ばれておりやす。どうか、以後宜しゅう。」
(深々お辞儀を致せば、高祖頭巾を被り直しては駕籠の中へと入り込み。一行は、とある和風娼館を目指して夜更ける街道の先に消えていき─────。)
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」から春芳院さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアルファさんが去りました。