2019/10/28 のログ
■ジナイア > 夜が明け、太陽の昇る前が一番冷える時間だ。
今しも身体が凍える訳ではないが、その時までには王都へと辿りつきたいところだ。
掲げていたカンテラをおろし、虫の音に耳を澄ませるように、目を細めながら森の闇を見つめる。揺れるカンテラから、微かに焦げるような香りが漂う。
暗闇に恐怖はない。
寒さのことさえなければ、虫の音を楽しむために今日一晩くらいは、森の中で過ごしたってよかったのだが。
再び足元へと零された灯りに視線を戻して、再び足を踏み出す。
先日の雨の日に出来たのだろう。森を切り開いて作ったであろう路には舗装もなく、馬車の深い轍の跡が残っている。
うっかり踏み入れてしまえば、躓くくらいは出来るだろう。
(――厄介な)
もう少し均されていてくれれば、速足で進むなり、時折森に視線を送るなりして、まだこの夜を楽しめた筈なのに。
――――文句も吐息も漏れるが
この静寂に、自分ひとりが足音を響かせている気分は悪くない。
カンテラに照らされる女の顔は、何処か楽しげな色をその口元に浮かべながら
ふわりふわりと、夜の闇に灯りを漂わせていく……
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からジナイアさんが去りました。