2019/08/04 のログ
コーデリア > 本当に刈り取る場合は同僚の躰を傷付けない高さまでだが、大半は脅しのつもりだった。
ミレー族の奴隷だと目星を付けたため、特に。

その予想は外れているが、エルフには知る由がない。
敏速な物音と共に飛び出て来た影へと振り向いた。
月明りに照らされた人影らしきものは、生憎とフードを被っているせいで一瞬では男か女かすらわからない。
例の奴隷は自分と同じような背丈だと聞いているが、よほどかけ離れた体格でなければ瞬時に彼女か否かも判断するのは難しく。

「!」

それでも一瞬にして、違うかもしれないと思ったのは戦闘技術のある者だとわかる動きだったから。
風の力を纏った手を咄嗟に薙ぎ払うよう動かすと、ナイフの勢いは遮断される。
キン、と金属同士がぶつかるような音と共に、捜査官の足元の地面へと落ちて刺さった。

「違う…誰ですか!?捜査妨害は罪に問われますよ!」

続いてエルフの腕は飛び出て来た影に向かう。
風はいまだ集まっており、彼女の髪や服だけでなく、周囲の草も強い風に激しく揺れる。
このまま本格的な戦闘に入って良いものかは、ルーキーには悩むところだ。
例のミレー族であれば当然手加減しなければならないが、違うとなると盗賊などの可能性も出てくる。

ブレイド > 相手は一瞬迷ったか。
いや、不意が打てたということだろう。だが、ナイフは弾かれる。
おそらくは魔法…なんの魔法かはわからないが、ここらを刈り取るために使うはずだった魔法だろう。

「ちっ…食らっちゃくれねーか」

誰だと問う女。
近くで見ればエルフということはわかる。
あまり詳しくないが、エルフは魔法が得意だと聞く。
その真偽はしったことではないが、ナイフを手で弾く程度の術は使えるということだ。
あなどれない。

「…ただの冒険者。依頼の終わりの帰り道にな、ちょっと頼まれごとされてさ」

正直、まだもうひとりいることを考えれば速やかに退場してもらいたいのだが…

「それよか、やめとけよ。ここからじゃお仲間に声は届かねーぞ」

彼女がこちらに来てくれたのは不幸中の幸いか。
もうひとりとは距離が空いた。

コーデリア > 相変わらず顔は見えないが、声や口調は男性のように感じる。
声の若さからいって、男子、それとも少年と表現するべきなのだろうか。
性別が曖昧な生物もいるし、中性的な存在もあることから一概には言えないが。
距離をとりながら分析していると。

「冒険者?」

エルフの声は一気に怪訝なものになった。
なぜ冒険者が自分たちに害をなすのか、すぐには理解できなかったせいで。
だが頼まれごとに、あえて捜査官の身を狙ったとなると――頼んだ人物は一人しかいない。

「残念ですけど……私たちの仲間は三人だけじゃありません。
 通信機の音が拾われてますから、そのうち集まってきますよ。」

今さら通信機を切ったところで同じだろう。
何かあったとわかったチームが確認に来るのは目に見えている。
それは当然、捜査官であれば好ましい状況なのだが――今回の任務の場合、どうだろうか。
ミレー族はこの冒険者に依頼してからどこまで逃げられたのだろう。

「…彼女、あなたが心配なんですね。まだあんな所にいる。」

エルフは、ふと視線を冒険者の斜め背後に向けた。
同時にその視線の先辺りで草が揺れる音がしたが、正体は野ウサギである。
すぐにバレてもかまわない。一瞬の隙が生まれれば良い。
そもそも本当に依頼者がミレー族だという確証はなく、『彼女』と表現したのも賭けだ。

ブレイド > 「そ、冒険者だ。
冒険者が頼まれごとを聞くのは当たり前だろ」

それはそれとして、権力者の手勢に手を出すような真似は普通はしない。
だが、彼女は必死で逃げていたし、靴すらはいていなかったし、恐怖で足だっておぼついてなかった。
ならば放ってはおけない。我ながら莫迦なことをしているとは思うが。
しかしながら、彼女の言葉に今度はこちらが怪訝な声を上げることになる。

「つう、しん…き?なんだ、そりゃ?音を拾う…連絡ができる道具かなんかか?」

聞き慣れないものだ。
貴族の手のもの、知らない魔導具をもっていても不思議ではなかった。
失策だ。こちらがこんな手にでている。
他の場所で同様の事態は起きていない。
つまり単独でやっているということはバレているだろう。

「っ…!ハッタリなんざ…」

わざわざ彼女の側で事を起こすなんて愚策は犯していない。
実際、彼女はもう少し離れた場所でであったのだから。
だが、音に一瞬気を取られてしまった。

コーデリア > 魔導機械に疎い一面からも、たしかにただの冒険者と言って良いのだろう。
戦闘技術がいくら高くとも多勢に無勢では勝ち目がない。
こちらもミレー族を嬲ることが大好きな貴族から依頼を請け負っていて、
失敗すれば上層部に睨まれるとあれば、自身はともかく普段やる気を見せない先輩たちも真面目に捜索しているはず。

一瞬といっても、本音を言えばもう少し隙が欲しかった。
その隙があれば倒れているのだろう同僚を担ぐことはできたかもしれないが――いや、やっぱり無理だっただろうか。
エルフらしい体格は華奢で、担ぐことができたとしても俊敏には動けない。
どちらにしてもこの選択をするしかなかったようだ。

エルフは一瞬隙を見せた冒険者に向かい、再び薙ぎ払うような仕草をした。
つむじ風にも似た強風が起こり、周囲の草や砂が舞い上がるだろうが、鎌鼬のように肌を切り裂くことはない。
あくまで視界を奪うための魔法であり、通信機を一旦切る。

「南東の捜索にあたっているのは1チームのみです。
 他の方角は複数チームがいますから…一人では厳しいかと。」

風に載り、冒険者の耳へと流れるエルフの声。
だが一瞬の目くらましに成功すればエルフの姿はそこになく、逃走した後。
殺しはしないだろう。そんな直感で、のびた同僚は置いて行くことになったが。

―――後はエルフの役目はリーダーの元へ戻り、報告するだけ。
嘘はほとんどない。邪魔者がいた。顔はわからなかった。
戦闘になったが一人では対応しきれず、逃げてきた。
邪魔者がどこへ向かったかはわからない。
役に立たないと叱られるだろうが、まだルーキーという立場上、お目こぼしもあるかもしれない。

あとは冒険者の腕を信じて、どうなるかは彼と彼女の頑張り次第というところだろうか――。

ブレイド > まずい。
一瞬だが気を取られた。
ほんの一瞬、それでも相手がハッタリかまして得ようとした隙。
おそらくはなにかしてくる。
彼女の話が正しければのんびりなどしてはいられないのだが…

視線を彼女の方に戻したときには何かを払う仕草。
突風が吹き荒れ目も開けていられない。
目潰しの魔法か?

「ぐっ!?」

思わず目をかばう、が、耳に届いた言葉は意外なもので
少しばかり驚いた。

「アンタ…そりゃ…」

風を振り払うように手をおろしたときにはもう既にエルフはいない。
側に倒れていたもうひとりもいない。
逃げられた?いや、見逃されたというのが正しいだろう。
しかし、信じていいものか…
いや、この状況で彼女が逃げるメリットはない。
正直、今の一瞬でどうとでもできたはずなのだから

「…はぁ…まともなやつで助かった…ってとこか?信じるぜ?」

誰もいない虚空につぶやき、早足できた道を戻る。
彼女の進言を信じ、同族の女を逃がすために。

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