2019/05/12 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 夜も更け、月は天に高く上る時刻。整備された街道の脇、土地面に腰を下ろした旅人の姿があった。
黒髪異国の旅装はボロけて使い込まれている。袖の無い上着から伸びる腕は逞しく、彩る刺青が旅人を堅気の者ではないと教えている。
「うし、点いた まだ火が無いと寒い時期だからなあ……さてさて、茶でも淹れるか」
まだ小さな火を育てている焚火に小枝を重ね、旅人は腰を下ろす。
鍛え上げた身体に見合わず、声も表情もまだ少年の面影を残す若い物だった。
■ティエンファ > 旅荷が入った袋を長い木の棒から外して中を漁る。
その棒はつやつやとした表面をしていて、見る者が見れば、良く使い込まれた武器である事が分かるだろう。
鍛えた身体に鮮やかな刺青、六尺棒。武者修行の旅を続ける異国の武芸者は、この日国境を超え、王国で野営をしていた。
水袋から手鍋に水を移し、その中に雑に茶葉を入れ火にかけた。待っている間に周囲の土に灰を撒いて虫よけにする。
荷物から必要な物……毛布とか……を取り出す間に鍋に湯がくらくらと沸くので、茶こしを通してカップに次いで一口。
「明日の昼には街に着けるか ……そうしたらまず、上手い茶が飲みたいな」
自分が茶を淹れるのが下手なのは分かっていたが、口の中の渋い味に眉を寄せながら呟く。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
■ティエンファ > 「懐かしきは王都、麗しのマグ・メールってなぁ
他の国も回っちゃいるが、この国はやっぱり『帰って来た』って感じがするぜ」
まだ肌寒い夜、茶をすすりながら立ち上がり、街道の続く先を見る。
丘陵の上を、滑る蛇のようにうねりながら伸びる道。今はまだ見えないが、その先には王都がある。
ずず、と茶を啜る旅人は懐かしそうに目を細めて、それから気まずそうに眉を寄せる。
「懐かしい顔にはどう説明するかな、また長い事離れてたし」
■チェシャ=ベルベット > ガサガサと茂みを揺らして黒猫がぴょん、と飛び出て現れる。
何やら青年が街道を見ているのを焚き火越しに大きな金緑の瞳で見ると
「あー!」
大きな声でその相手が誰であったかに気づいた。
うにゃー!と飛びかからんばかりの勢いで青年の前に転がり出ると
「ティエ!!!!!こんなところに居た!
また僕のことほったらかしでー!もーうもーう、信じられないっ!」
青年の足元で器用に人語を操りながらぐるぐるぐるぐる駆け回り、
しっぽを太くして文句をたれた。
■ティエンファ > 立ったままカップで茶を啜り、半分ほど飲んだ頃だろうか。
夕飯を食うかどうするか悩むところに、茂みの揺れる音。自然とそっちに目をやれば、滑らかな毛並みの子猫……。
「うおおっ!?」
その口から聞き覚えのある声が飛び出せば、こっちが構える前に足元に転がり込んできた。
うっかりカップの中身を猫に零さないように高く掲げつつ、周りを回りながらぷんぷく怒る猫に言い訳がましい声。
「いやすまんって、ちょっと別国の知り合いから助力を頼まれちまってさ!
それも1日2日を争うってんで飛び出してったら、なんか組織ぐるみの大騒動でなかなか帰れなくってなァ
……そんなぐるぐる回ったらバターになっちまうぞ、チェシャ 久しぶり、とりあえず落ち着けって!
悪かった、間違いなく俺が悪かったって!」
■チェシャ=ベルベット > 「言い訳は聞きたくにゃーい!!!」
シャー!と大きく口を開けて威嚇するように吠えると
相手の片足に絡みついて猫キックをかます。
とはいえ爪は立てないし、噛んだとしても甘噛程度だろうが。
「もー!ティエはお人好しすぎ!そうやってホイホイよそに行くから
中々帰ってこれないんでしょ!
それとも何?!僕よりいい人がよそに出来たの?!それでよろしくやってたとかさー!
んあああああああ、ティエのバカバカっ!寂しかったんだから~~~~!」
ひとしきり相手の脚を蹴りまくると、ワシワシとズボンをよじ登って勝手に相手の腕の中に収まろうとする。
茶の入ったカップを抱えていようとお構いなしだ。
■ティエンファ > 喉の奥まで見える様な威嚇を見れば、自分の手の中に納まるような子猫よりも小さくなりそうな位肩を竦める。
ズボンに噛みついて蹴りつける子猫を見下ろしながらお茶を一口飲んで減らし、跳ね回るような文句を甘んじて受け止める。
よじよじと細く小さい爪で服を昇ってくる猫を片手で支えて昇るのを助けつつ、眉を上げる。
「すまんすまん、求められれば腕を貸すのが渡世の義理って奴さ
チェシャよりいい人? んなんそう簡単に転がってるもんかい そこら辺は安心しな」
カップを持った腕で猫を包むように抱き、その額を親指でくしくしと撫でる。
その手でクルクルと耳の後ろまで撫でて甘やかし、止めどないお叱りの言葉が落ち着くまで待ってから。
「すまん、ただいまチェシャ 寂しくさせたな」
顔を包むように撫でてから、濡れた猫の鼻に軽い口付けを落とす。
■チェシャ=ベルベット > 「そりゃ、僕より上玉って中々いないけどさー!
でもさー、ティエは結構誰でも情が通い合っちゃうといい気がしてさー、
いやまぁそこがティエのいいところだけどさー……」
逞しい相手の腕の中に収まれば居心地が良くなったか、文句の弾丸の勢いが落ちる。
指でくしくしと額を撫でられ、甘やかされ、耳がぺったり倒れると、尻尾の先を揺らして喉を鳴らす。
「ん……、おかえり、ティエ」
鼻先にキスをされれば、不機嫌に寄せていた眉間のシワが取れていく。
ぺろぺろと相手の頬に舌を這わせ、汚れも気にせず舐めていった。
と、カップの中の茶の匂いをくんくん嗅いで、
「もー、お茶も雑に淹れたでしょ。僕が居たらもっと美味しいの淹れてあげたのに……」
■ティエンファ > 「そこで間髪入れずに自分への自信を口に出せるのがチェシャって感じがする……」
思わずほっこりしつつ頬を緩め、うりうりと猫の顔を包み撫でる。
段々と喉を鳴らす音が聞こえてきて、猫の身体からこわばりが抜けてくるのが分かれば、カップを地面に置いてしっかり抱く。
「まあ、元々俺は流れ者だからなあ 気苦労かけるが許してくれ、性分だ
だがよ、聞いてくれよチェシャ 行ったお蔭ですっごい強い爺さんと闘えてな!」
興奮して子供の様な喋り口で自分の体験を話す。
素手で鉄の巨人を殴り潰しただの、黒社会を敵に回して大立ち回りをしただの、
酒場の酔っ払いのたわごとの様な話がポンポンと出てくるが、大真面目な顔だ。
しかし、あぐらをかいた膝にチェシャを抱いて話すうちに、カップの香りに気付かれて頭を掻く。
「はは、俺も美味い方が好きなんだけど、どうにも根がガサツでさ
チェシャとこんな所で会えるとも思ってなかったし、ただの水よりは良いかなって位で考えてー……」
そこまで話して首を傾げて、
「チェシャはチェシャで、お前なんでこんな時間にこんな場所に? お使いか?」
■チェシャ=ベルベット > 「当然、伊達に自分の魅力を磨いていないしね」
自身に対するプライドと言うべきか自信というべきか、はたっぷりある。
胸を張ってえっへんと答える黒猫は、そのうち相手の腕の中でとろとろにとけて軟体生物となる。
「……、ティエ この国に腰を落ち着ける気なーい?
まぁ、腐っているけど悪かぁない国だよ、マグメールは」
子供のようなキラキラした顔で、与太話のようなことをポンポンと話すティエに思わず微笑ましいものを感じてしまう。
彼が嘘をつく、なんてことは天と地がひっくり返ってもないだろうから目をまんまるにして聞いていた。
だからこそ、まぁ答えなんてきっと決まりきっていることを尋ねてしまうのだが。
「んあー、僕はただのお使い。ダイラスに行って、ちょっと商売してその帰りだよ。
主人が忙しいから代理の行商って所。
商談が長引いたせいでこんな夜になっちゃったけど、まぁ今日中に帰れるかなって甘く見てたんだよね」
おかげでティエに会えたけど。なんて言ってくぁ、とあくびする。
猫の足だけで街道を行くのは結構疲れたらしい。
■ティエンファ > 「猫の姿だけど、前よりも毛並みが滑らかになったか? 人間に戻った時が楽しみだぜ」
置物よりも綺麗な姿勢で胸を張る猫。その首から胸を撫でて、腕から零れそうな猫を抱き直す。
そして、尋ねる言葉に眉を上げ、それから少し困ったように笑う。
「それも良いかもしれんなァ……良い所だし、チェシャも居る。居心地は良いんだがよ
とは言え、生まれも分からない根無し草だからな 根の張り方も分からんのさ」
風が吹けばまた長く旅するだろうな、と言い難そうに。
しかし、そんな風に言いながらもこうして何度も戻り長逗留をするのは、つまりそう言う事なのだろう。
「お前のご主人の商売も、変わらず繁盛してるみたいだな。従者としても安心だな
しかし、可愛い子猫が一人で夜中までうろつくのは感心しないぜ?
怖い魔物に取って食われるかもしれん こうやって、ガオーってさ」
そう言ってから、欠伸した猫を膝の上でそっとひっくり返し、爪を立てる様に指を曲げてお腹をくすぐった。
それから、お腹をわしわしと優しく撫でる。甘やかすような笑顔は半年経っても変わらない。
「……だから、今日は付き合ってくれよチェシャ 寝物語に」
鍋に残った湯を焚火に辺りは夜闇に落ちる。ごろりと寝転がり、猫は胸の上に。
■チェシャ=ベルベット > 「んふふ、いつも毛並みは熱心に舐めているからね。
勿論、人型の僕もめちゃくちゃ魅力的だけど」
腕の中で相手に体重を預けて、くてんとリラックスする。
が、結局自分の問いかけは相手を困らせるだけに過ぎなかった。
ちょっとバツの悪い思いをして顔をしかめる。
「……、ティエ。 別に根の張り方なんて、そんなの……」
なんだっていいじゃないか、とは言えなかった。
いっそ自分が女であったなら、無理矢理にでも結婚でも迫って縛り付けてやりたい。
そんなことすら思うが、自分自身も根無し草であるためにきっとその方法を示してやることが出来ないだろう。
「僕、魔物に食われるほどどんくさくないって……!
あー!お腹くすぐるのだめだって!うひゃひゃ、やめ、くすぐったいっ……!」
ひっくり返されたお腹をわしわしと撫でられればけらけらと愉快そうに笑ってしまう。
甘えるように胸にすがりついて焚き火が消されれば猫もごろんと横になる。
小さな両腕で相手を抱きしめるように胸元を抱えるとゴロゴロ喉を鳴らした。