2018/11/03 のログ
ミツフサ ウタ > 「貴族の暗殺だったり、反抗的な村を村民共々地図から抹消したり、結構後ろめたい汚ない仕事もやってるんですよ、ウタは。もう後戻りできないところまで堕ちてるんです。」

その事を知った者は皆一様にウタから離れていく死を運ぶ商人、血塗られた雌狐と罵りながら。
気を緩めた拍子に余計なことまで口走ったと遅すぎる後悔に苛まれたウタの耳と尻尾はその心情を示すかの様に力無く垂れ下がった。
今更引き返せるはずもない。この手を血に染め続けるか囚われ奴隷として凄惨な最期を飾るか。二つに一つなのだと言う現実が付きまとうウタはそれでも明るく振るまい続けるだろう。あるはずもない希望を夢見ながら。

「滑稽だと思いませんか?」
そう言って自嘲気味に笑った

イグナス > 「――その有様でまあ、よくやる。」

大きく驚きもしないが、それでも予想を上回る程度には悲惨な言葉に。
僅かに目を細める。川岸に置いていたタオルを拾い上げれば、ぼふと、彼女の頭にかけて軽くふいてやり。


「なに、やりたいことをやりゃあ、いい。
 ……生き様に良いも悪いもねえさ。止めたいなら止めるし、したいならする。そンだけだ。」

どこまで行っても男の言葉は単純であっさりとしていた。
自嘲気味の彼女をぐいと引き寄せてやりつつも、そのどこまでも気楽に。
ただあるようになるように、望むように、といった具合で。

ミツフサ ウタ > 「ふ、ふふふ。あはははは♪」

吹っ切れた、と言うより馬鹿馬鹿しくなった。
彼はそういう男だったと改めて理解した。

「ウタはほんとに馬鹿ですねー。話したらイグナスさんも私を忌避して離れていくかもなんて本気で悩むなんて。あー馬鹿馬鹿しい。」

ひとしきり大笑いして頭に掛けられたタオルを受け取ったウタの表情は明るく溌剌としたいつもの彼女に戻っていた。

「色々と大きくて豪快な人ですね、イグナスさんは。」

そう言って笑う彼女の表情は四つの職の仮面を被った物ではない、ミツフサ ウタという一人の少女の心からの物だった。

イグナス > 「はあ?―――っく、くく。なんだ、そんな馬鹿なことを考えていたのか。」

一瞬不思議そうに、すぐにクククとひどく楽しげに、笑った。
相手が何をしていたか、何をしているか、なんて。
大したことではないとは言わないが、大きすぎることでもない。少なくともこのくらいでは、気にしないようで。

「おう?おう、まあ、そりゃあ。このサイズだ。
 でかいのはいいことだ、んむ。……ったく、ほら、——風邪ぇひくから、いくぞ。」

彼女が受け取ったタオルでがしがしとほっぺを拭いてやる。
跳ねた水滴を拭けば、少女の笑顔は完璧だ。
ともあれ、このまま水に浸かっていても風邪をひく。いくぞと声を掛けて、踵を返した。

ミツフサ ウタ > 「ふふん、壮絶な過去を持ったウタは悩み多き【美少女】なんですよー。こーんこん、と。」

イグナスの後を追い水から上がった彼女はお気に入りの魔法発動トリガーを呟く。ウタの周囲にゆらゆらと浮かぶ狐火が現れ水気の残った尻尾や衣服を乾かしていく。

「あ、そうだ。」

髪を結っていた風呂敷を緩めその内側に広がる彼女の謎空間に手を突っ込みなにかを取り出しながら言った。

「つまんない愚痴聞いてもらったお・れ・い♪させてくれませんか?」

彼女の手に握られていたのはとある高級宿の部屋の鍵だった。

イグナス > 「は。よく言う。ったく、——あン?」

そのまま川から上がって足を踏み出そうとした直前
宿のカギ、差し出されたそれに瞬き一つして――く、と笑う。

「おうとも、もちろん。
 ……ンじゃあ、いくか」

ひょいと鍵を受け取った。もちろん据え膳食わぬはなんとやら。
おいしくぱくりといただく気、満々で。彼女を連れて、宿へと向かっていったとか――

ミツフサ ウタ > 「そうこなくっちゃ♪」

連れられていく彼女の尻尾は上機嫌に揺れていたそうな。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からミツフサ ウタさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアバドンさんが現れました。
アバドン > ガラ、ガラガラガラ………。

メグメール(喜びヶ原)に存在する王都より延びて各地を繋ぐ街道の一つに今宵は崖崩れを想像させる岩でも崩れて地面に落ちる……ような不吉な音が響き渡り、その音を追うようにしてズシン、ズシンと重たい音が響く。

微かに揺れる街道の土。
ほんの少しではあるが舞い上がるそんな土ぼこり。
荷馬車が荷を落したか、騎士団がそろいもそろって更新中か、否、今宵街道に姿を見せるのは地竜・アースドラゴンの亜種であろう特殊な個体。

その身の丈は3m程と人と比べると巨躯ではあるが、せいぜいオーガやふとったオークくらいではある。
しかし土の竜はたっぷりと肉厚なその肉と共に背中に腕に脚にと竜の鱗の代わりに鉱物や水晶のクラスターをまとい、その体重をさらに重たくしている、が故の重たい音、そして身体が揺れるたびに落ちるのは背中の鉱石の破片であった。

地竜の進む道は何処へや
重たい足取りと重たい音を供にして、王都の方面ではなく無名遺跡か小さな村々のある方向へと歩いている。

ただ玩具を求め探す為にあわよくば肉を得て喰らう為に。
ヒトが居ればそうしようと、それが武具を身につけていればそれも食らおうと、金色の瞳に赤い筋を幾筋も浮べて血走らせながら、時折思い出したように長い尾で大地を叩き、地竜は今宵は街道を彷徨い歩き続けるのだった。

アバドン > 口から瘴気やブレスを吐く事は無いが、地竜が呼吸をする度に周囲に存在する魔力は希薄となり、吸い上げた魔力を吸い上げたままに体内に取り込んで、全身に行き渡らせる。

鉱石や肉を喰らう食事と呼吸の度に周囲の魔力を吸い上げるのは地竜にとっては極当たり前の行為であり、周辺の魔力が希薄になる事で魔力を必要とする精霊やその類の存在が地竜に怯えて逃げる獣と一緒になって街道からすっかりと姿を消している。

それを気にとめることはない。
逆に姿を見せようものなら地竜はそれすらも喰らう心算で、取り込んで鉱石に変えて身にまとう心算で、血走った金色の眼は本能に準じた行為の犠牲者を探すべくあたりを見渡し、その瞳で睨みつけて探り続け、時折地竜族の特徴でもある鼻筋から伸びるねじれた巨大な一本角の根元にある鼻腔をヒスヒスと動かして、嗅覚でも獲物を探そうとしていた。

大地を踏みしめる度に響く足音、背中の鉱石の一部が崩れて落ちる音、身の丈3mもある巨体は見通しの良い街道では目立つだろうに、今宵は人気も無いからか悲鳴も何も聞えない、まあ馬車と遭遇すれば馬は怯え逃げて馬車がひっくり変える事は間違いないし、結果そうなったら馬は美味しく頂かれるであろう。

愚鈍で多少は知能はある地竜。
だが知能は効率よく獲物を見つける術よりも、獲物を嬲る為に特化していて、街道を歩くだけの行為が獲物を見つけるのにあまりよくない事などわかってはいないのだ。