2018/09/02 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にパラスワームさんが現れました。
パラスワーム > 太陽が真上に来るように月が一番高く昇る真夜中。
人気の無い闇に包まれた王都と各地を繋ぐ街道を1頭の狼がうろうろとさ迷い歩いていた。

時折思い出したように足を止め頭部を持ち上げて、涼しげに輝く白い月に鼻先を向け、黒く濡れた鼻を鼻腔をヒスヒスと動かして匂いを探している仕草を見せる、極普通の狼……に見える異様な獣。

少なくとも見た目、行動は極普通の狼であるが近くにより見れば何処と無く筋肉質で、更に両の眼はギラギラと興奮した様子で輝きを宿している、がしかし灰色の体毛は何かに濡れたような不可思議な輝きを持ち、体温調節の為に鋭い牙並ぶ口から伸ばしている舌肉は妙に長く、滴らせる唾液の量はこの狼が歩いてきた軌跡がわかる程に垂れている。

――…群れもなく、周囲に他の仲間が隠れている様子も無く1匹で歩いている時点でおかしいのだが、哀れな狼に寄生したそれは知らない、ただ狼の肉に巣食い、狼を操り、繁殖するに相応しい肉を求めて狼の振りをして彷徨っているだけ。

街道を歩くそんな危険な生物、遭遇する不幸者は今宵存在するだろうか。

生ぬるい夜風、それに僅かに混じる狼に寄生した触手が滴らせる奇妙な粘液の生臭さ、異常に気がつき引き返すなら、狼と遭遇する前が良いだろう。

パラスワーム > 旅人や馬車が行き交う事で固まった街道の道は獣の足でも歩きやすく、ある程度の速度をだしながら狼と狼に寄生した触手の足取りは軽く獲物を探す散策は続く。

鋭いが何処か濁った眼は触手の寄生効果で光僅かでもハッキリと他の生物の動きを捉える事が可能であり、嗅覚も聴覚も同様に強化されているお陰で狼は獲物を難なく探す事が出来る。

意識もまた本能を触手に弄くられているだけで、狼自身の自我も存在している所為で拒絶も少なく、中々に両者の相性は良くて、触手もわざわざ狼をこれ以上弄くらずに言う事を聞かせることに成功している。

だがしかし、それだけでは増えて満ちる事は出来ない。
まずはこの狼の肉体を利用して獲物を早急に見つけなければ何れ朽ちて死んでしまうだろう。

思考ではなく、本能。
寿命は長い生物ではないが故に繁殖行動を急ぐ。

虫の鳴き声が微かにするだけの街道にそんな狼の軽快な足音が爪が地を削る音が響き渡った。

パラスワーム > 狼は街道を一頻り歩き終えると、別の場所で獲物を探す事にしたらしく、歩く速度を上げて走り始めると近くの木々の合間に飛び込んで、そのまま森の中へと駆けていくのだった。

その後獲物を掴まえられたかはわからない、が狼を退治する依頼が冒険者に入っていないのであればそう言う事なのだろう。

そして街道には再び静寂が舞い降りたのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からパラスワームさんが去りました。