2018/05/03 のログ
シスター・マルレーン > 「こんなの晴れるまで待つしかないんですって、本当に……」

ぶつくさ文句を言う。言わざるを得ない。
ちょっとくらい文句を口にしても……よいですよね、ああお許し下さい。

「雷が落ちないだけ、マシではありますけど………」

さて、と少し悩みながら、今度は街道の周辺の柵に目をつけて。
よいしょ、と引き抜き始める。

泥をなんとかすることが目的ではなく、馬車を通すことが目的なのだから……
車輪が通る場所を造ればいい、という考えだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にマニィさんが現れました。
マニィ > 周囲の音を吸い込むような雨が降り、河川が近いのか蛙の輪唱だけが負けじと平和的に喧しかった。

「いやはやこうして安全な所まで辿り着くと生きているって実感があるなあ」

鍔広の帽子が傘代わりとなって雨の中でも悠然と歩きながら私は長く嘆息する。
何があったのかと言えば、簡潔にするならば運が悪かったと言うしかないだろうか。

「ああいうのなんて言うんだっけ。鉄火場?」

平穏その物な雨空を見上げて思い起こすはタナール砦。この国における人対魔の主戦場の一つに挙げられ、奪い奪われが日常と化し勢力の分水嶺と成った場所。
激戦区と言っても良い場所に何故私が居たのかと云うと、全ては素材採取のついでにと軽はずみに受けた依頼が原因と言えた。
『砦に駐在している夫に手紙を渡して欲しい。』
此処暫くは戦況が落ち着いているらしい。と噂を聞いていたものだから二つ返事で快諾したのが運の尽き。
到着し、該当の人物に手紙を渡して帰ろうとする私の目の前で馬車は箒星のような尾を曳いて飛来する炎に焼かれて御者ごと消えた。
後はもうお祭り騒ぎのようなもので、砲撃の音やら魔力の爆ぜる音やら、悲鳴やら怒号やらで辺りは平和的じゃなく喧しいったら無かった。

「ま、過ぎた事は忘れよう。人間は忘れる事が出来る生き物だ──」

そんなこんなで色々あったけれど私は頑張って逃げ戻ってきた。偉いぞ私、凄いぞ私、流石魔女だ。
自分への御褒美に拠点へ戻ったら何か美味しいものでも食べに行こう

──なんて、浮かれていたものだから足元に即席の沼があるなんて思う訳も無く
私は豪快に頭から沼に突っ込んで水しぶきを上げる事となる。

シスター・マルレーン > ………おりゃ、っと。

「ああ、もう………。こういう時は引き抜けないんだから!」

ずぼり、っと地面から長い板を引き抜いては、隣に並べて。
これを組み合わせてレールのようなものにすれば、と考えているとそのうちに。

「……どぼん?」

振り向けば、今まさに土をたっぷり足した泥の海に誰かが沈んでいくところだった。

「……ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?
 ほら、手に捕まってください!
 捕まらなくても引っ張りますよ!」

慌てて傍に寄って膝をついて、手を差し伸べる。
例え掴まなくても、服を掴んで引きずり出すパワーはある。

マニィ > 空転する視界。
眼前に迫る茶色。
全身を襲う冷たい感覚。
土の香り。
塞がれる呼吸。

そうか、土葬されるってこんな感覚か。といやに他人事のような俯瞰思考が風船のように浮かんで何処かへ消えた。

「──ぶぅおわっ!?な、なんだ野盗の罠か!?行商馬車でも狙っているとしか思えないぞ。だが待て落ち着け話し合おう。
私みたいな魔女を襲撃したら祟りとか呪いが後々きっと凄い事になるぞ。全身に紫色のぶつぶつが出来たり、
何を食べても甘味しか感じなくなったりするかもしれない。でも私は優しい魔女だから沼に落とされたくらいでそんな事はしな──」

閑話休題。
それら感想は一先ずも二先ずもさて置いて、私は泥の水面よりゾンビの如く顔を出し平時の口調もすっ飛ばして叩き売りの商人のように捲くし立て、
立てきる前に手が差し伸べられたので誰何するより先に掴んでずるずるべったんと陸揚げされて事無きを得た。

「いやはや随分親切な野盗もあったもので……ってマリーじゃんか。え、何?君がやったのかい、これ。猪か熊でも獲ろうってなら場所が悪いぞ。
精々獲れるのなんて私みたいな魔女くらいだ。」

顔の泥を拭い、一先ず誰か判るようにしてから、誰か判った顔見知りに呆れた声を差し向けよう。首がいやに傾いでいるのは泥に塗れた髪の毛が重たいからで
意図した訳ではないけれど、ちょっと嫌味に見上げている風にも視えるかも。

シスター・マルレーン > 「そんなのできるんですか。」

思わず引く。いやそんなのホントやめてください。
とりあえず助けながら、この魔女を敵に回すことはやめておこうと誓う。

「……ちーがーいーまーす! 私がこんなところでなんでこんな罠作るんですか!!
 地面に穴が開いて、雨が降って大変なことになっているから何とかしろ、って言われたんですよ。」

と、一生懸命弁明する。
たしかに火に油を注いだかもしれないけれど、それは伏せる。

「……ちょうど、柵の板を繋げて泥の上に渡そうとしていたんですけど。……
 とりあえず、あちらの木陰に移動しましょうか。」

雨をしのげる場所は一応ある。……それでも、完全に濡れないとはいかないが。

マニィ > 「出来る訳ないだろ」

思わず引いた彼女に何言ってんだコイツ的に鼻で笑ってやろうと思ったから、そうする。ふんす。

「ああ違ったのか。いやほら、野獣の肉が食べたいーなんて食通な連中が依頼を出すなんて割とあるからね。
元猟師でもなきゃ猫の額みたいな知見だろうし、変な所に罠くらい仕掛ける事もあるだろうし、
君ならそういう変な依頼を受けそうだし……いや、まあ実際苦労しそうな依頼を受けている訳だけど」

それから髪やら服についた泥をべったんべったん放り捨てるようにしながら言葉を放り、
目線をマリーの言葉に従わせ柵板やら木陰やらへと泳がせる。

「いやま、先に柵を渡しておしまいよ。私だから良かったけど君、これが短気な輩だったりしたら大変な事になってるぞ。」

立ち上がるとローブがおもっ苦しいものだから、裾を引き上げ腿の辺りで結び止め、柵の下へと向かうのさ。
一人より二人って奴だ。

シスター・マルレーン > 「できないんですか!」

思わずツッコミを入れてしまう。入れた。

「いや、そうだとしても、この雨の中街道筋に罠なんて張りませんよ。
 それに、私の依頼は人助けばかりですから。
 それこそ薬草を取りに行くとか、戻らない人を助けに行くならまだしも……。
 ………いやまあ、そっちの方が楽そうですけど。」

溜息をつきながら、確かに、と頷いて。
手伝ってくれるのであれば、素直に受け取ります。遠慮を今更この雨の中でするのも、空気が読めないってものです。

「とりあえず馬車さえ通れればいいので、2つ橋を渡して、残りで補強しようと思うんですよね。」

特別長い2本を、よいしょ、と沼に渡そうとしつつ。

マニィ > 「専門外だよ。私に出来る魔法なんてのは、これくらい──Dweud.Colli Tywyllwch」

呆れたようなツッコミに苦笑を返すついで、立てた人差し指に光が灯る。
魔法の明かりは明滅する度に色彩を青、赤、緑、黄と鮮やかに変えて周囲に光を粒子状に散らして私の指から飛び立つと
二人の周囲を緩慢に回りだす。

「で、成程人助け。そうなるともしかしたら、数日後に君向けの依頼が出るかもしれないな。
タナール砦って名前くらいは聞いた事あるだろ?ちょっと依頼でそこまで足を運んだら丁度魔族の襲撃があってね。
今はどうなってるか知らないけどいやあこの自慢の美脚を活かしてだね、それはそれは頑張って逃げてきた所だったんだ。
もし人間側が劣勢になったり、砦を奪われでもしたら救助の依頼なりあるかもしれないぞ。……あってもお勧めしないけどさ」

露になった太腿をぺしんと叩いて健脚をアピールしたりもしつつ、恙無く板は沼に渡されて一先ずは形になる。
余程の間抜けな御者でもなければ馬車が落ちる事はきっとないだろうと、出来栄えに満足そうに頷こうじゃないか。

「で、とりあえず雨宿りはいいんだけど……君、着替えとか持ってるかい?或いは焚き火にでも使えそうな燃料」

板の上をそろそろと歩いて沼に浮かぶ帽子を拾い上げ、さてと振り向きマリーをじろじろと見よう。
傍目にはやっぱりこう、墓場から出てきたゾンビが修道女に近付いているようにしか見えないかもしれない。

シスター・マルレーン > 「………雨の中ですけど、綺麗ですね。
 じーっと見ていられないのが、残念です。」

苦笑を浮かべながら、ゆるりと泥の中に足を踏み入れて……止まる。

「タナール砦、ですか。
 覚えておきます。 ……きっと、私には回ってこないでしょうけれど。
 そういうのって、結構冒険者の方、好んで受けられるんです。」

と、苦笑をしながら。
太腿を叩く相手にも笑ってしまう。ホントにこの人は、なんて。

「……着替え、ですか。 シャツは持っていますよ。
 修道服もありますけど。 ………着ます?
 とりあえず、身体、拭きますか。 この恰好だと入れてもらえないかもしれませんしね。」

本当にこの服しか持っていないのだろう。
雨で落ちればいいんですけど、なんて、すっかり上から下までぐっしょり濡れた修道女。

マニィ > 「ここで君の衣服を剥いで燃料にして服を乾かすってのも手だけどね。私はそこまで鬼じゃない。魔女だけど。
……魔女なのに炎ひとつ起こせないのか?とか思っただろ。ちょっと気にしてるんだから言わないでくれよ、臆面もなく泣いちゃうぞ。
見たくないだろ?泥塗れの女がする迫真のバンシーの真似なんて。
だから君も私を泣かせないように危ない所には……行かないなら良かった、うんうん。」

笑う相手に肩を竦めておどけて見せるのは綺麗な魔法と言われたからの照れ隠し。
木陰に移動をしてからは木を背に座り込み、帽子の中の小瓶が無事かどうかとお店を広げて確認作業。

「いやなに君も随分濡れてるようだし余分があればでいいんだけど……あ、それならシャツの方で。寸法、合うといいんだけどね。
……うん、小瓶も無事だし何よりだ。とりあえず身体を拭いてしまうよ──っと。」

ぞろりと泥塗れのローブを脱いで、これまたぞろりと泥塗れの下着を脱いで私はあっという間に追剥にでもあった哀れな被害者のよう。

「いやーまさかお外で全裸になる日が来るなんて思わなかった。都合良く近くに天然の温泉でも湧いてればいいんだけどね。」

タオルを早く早くと催促しながらくしゃみを一つし、雨空に負けてたまるかいと快哉のように笑おう。
空元気だって出続ければ元気には違いないのだから。

シスター・マルレーン > 「やーめーてください! 流石にダメですよ!
 …それ、怪我見せられて早く治せって言われた私にも当てはまるので言わないです。
 聖職者だから一瞬で治せるわけないじゃないですか……!!

 ……ん、多分依頼は回ってこないでしょうけどね。」

回ってきたら、行かざるを得ないのだから。 ここはちょいと濁しておく。

「………ん、大丈夫だと思います。 はい、これ、使ってもいい布です。
 私も仕事は終わったし、着替えてしまいましょうか。」

……ん、しょ、とローブをこちらも脱いで、下着姿になるのだけれど。
全身びっしょりと濡れ、肌に張り付いて流石にエロティックになってしまう。
……あはは、と笑って下着も脱いで。

「……本当ですよ、これ、絶対風邪ひくやつですよね。
 帰ったらお風呂でも一緒しましょうか。」

布で身体を拭きながら、二人分のシャツを取り出して片方手渡し。
…少し、大きいだろうか。

マニィ > 「……あー……君も苦労しているんだね。ああいうのって魔法ってよりは奇跡の部類?ともあれ使えたら便利だろうなあ、少なくとも生活には絶対困らないぞ。
街の薬屋連中や医者には滅茶苦茶恨まれるだろうけど」

どうもトラバサミを踏んでしまったようで声を荒げるマリーを宥め、受け取った布で濡れた身体を拭いて存外ぶかぶかなシャツを着込んで改めて一息。

「解熱剤でも調合しておくかな……お風呂、いいね。また九頭竜のお風呂でも使おうよ。あそこの温泉は髪に艶が出て中々悪くないんだ。
それに君の身体も視れるしさ。いやはや羨ましい肢体しちゃってさ、まったく。」

シャツが汚れないように布でぐるぐる巻きにされた頭を指差し、次には丈が短いのに胴の部分がやけにぶかぶかなシャツを引っ張って揶揄し
猫みたいに笑ってみせようか。

「日頃の行いとか食べ物のせいなんだろうかな。私も背が伸びる分そっちにいって欲しかった──と、おや、この音は。」

なんて事をしていると街道の方からは馬車の音が近付いてくるのが判り、木陰からひょいと顔を覗かせて様子を覗おう。
果たして馬車は無事に沼を渡れるのだろうか。

シスター・マルレーン > 「使えて恨まれるなら程よいんですけどね。
 使えないのにイメージでなんかこう、恨まれたりするんですよ……!?」

トラばさみにざっくり足をかまれたのはこっちらしい。
肩をがっくりと落としながら、こっちもシャツを着こんで。

「……あ、そうですね? では帰りに寄っていきましょうか。
 もー、お世辞を言ったって何も出ませんよ。
 ………それも時折聞かれるんですけど、良く分からないですからね。」

なんて、からからと笑ってしまう。
冗談、だとしっかり思っているようで。
胸の大きさに関してはちょっと恥ずかしそうに……シャツ一枚だと、良く透ける。

「……よし、大丈夫そうですね。」

馬車がおそるおそるわたっていくのを見れば、よし、と嬉しそうに。
シャツ一枚のショーツ姿で、木陰から様子を窺うのは控えめに見ても行儀はよくない。

マニィ > 木陰から並んで顔を覗かせて馬車の進行を覗う様は、格好が格好ならば手馴れた賊にも見えたかもしれないけれど、
シャツ一丁姿となればそうは見えない……以前に御者が気付く事も無く馬車は無事に通り過ぎていった。
マリーに倣い、よし、と拳を握って成果を称え合おう。

「君の依頼は一先ず無事に終わって何より……で、お世辞じゃないってば。
君、かなり聖職者ってよりは夢魔の類を想わせる体つきだぞ」

そのまま握った拳を彼女の透けた胸を柔らかく当て、歪む様に口端を緩く歪めて魔女のような悪い顔。

「……ふっふっふ、今回のお詫びに温泉がてら一晩共に過ごして貰うなんてのも……いや冗談だよ冗談。
私は屈強な殿方から君みたいな子まで全然イケるけどこういうのって無理強いは良くないからね。
……いや無理やりってのも案外……?」

もう一度悪い顔。但し今度は芝居がかって明らかにわざとやっていると知れるような部類だけど。

シスター・マルレーン > 「………ま、……またまたぁー。」

ふにょん、と柔らかく拳を受け止めながら、一瞬硬直して。
冗談ということで押し通すことにした。
上手なんだからー、なんて、頬を少し赤くしたまま。

「……お、温泉はいいですし、宿もいいですけど。
 ほ、ほんと冗談ですよね? ね?」

わざとだと思う。そう信じたい。
二人分のローブを取り出しながら、冷や汗交じりで尋ねよう。
この恰好でとりあえず宿まで、と。

マニィ > 取り出されたローブを羽織り、普段の物とは違う造りに腕を広げながらへぇだのほぉだの声を上げ、
顔を赤らめ乙女ちっくに恥らう様には目を数度瞬かせて意外そうな様子を向ける。

「……あれ?前に言わなかったっけ。ま、いいか。私は気に入ったなら相手の性別はあんまり気にしないぞ。
お堅ぁい聖職者様には難しいかもしれないけどねえ~っていやそんな怯えなくても。ゴブリンじゃあるまいに手当りしだい襲う訳ないだろ。」

言い淀むマリーに目線を合わせるように腰を曲げ、平時している間延びな喋りを添えてみせ、次には素になり溜息を吹きかけてやろう。

「そもそも前にも温泉一緒にしているし、気にしても仕方ないだろ?という訳でとっとと帰ってお互い依頼報告を済ませて報酬を得て温泉へと繰り出そうじゃないか」

けらけらと薬草くさい息を吹いて笑って意気軒昂。
さっきの馬車に乗せて貰えば良かったのにと気付くまでは、だけど。

シスター・マルレーン > 「い、言いましたけど。 でもほら、実際には何もなかったですし、冗談かなぁー、って。……その……。
 で、ですよね。 ええ、そうです。
 まずは戻ってお風呂にでも入りましょう。」

ではでは、と綺麗な修道服に戻った女二人は、ゆったりと街へと歩みを進める。

馬車は………ま、まあ、お風呂に入って水に流しましょう、となるのです。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からマニィさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシスター・マルレーンさんが去りました。