2018/04/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にカシマールさんが現れました。
■カシマール > 草木萌える春、である。風の装いも心地よく、なだらかな平野の若草を揺らしていく。
空は快晴旅日和、髪に隠れて見えない目が見据えるのは、遠く遠くの町の影。
鼻歌交じりの急ぎ足。一歩、踏み出す靴には土埃。どこから歩いてきたのか、それは分からない。それでも歩いた距離は察せるか…
「ふんふんふふ~ん、季節流れの儚さ辛さ、忘れな草に書き連ね~」
だが、旅なれた装いとは裏腹に、その足取りはバターを売りに行く娘よりもおぼつかない。
時々足を止めては、道端の名も無い花を見つけて上機嫌だ
■カシマール > そんな彼女の下手糞な歌に誘われたのか、遠くの草むらから兎が一匹顔を出した。
髪の毛の下の目が、ぐりんと視線だけでその先を射抜けば、ズボンの裾から、這いずる音もなく蛇のように触手が一本地面に落ちた。
草むらの影から影へ、音を殺して触手は這いずっていく、無論、相手は野生の獣である。
触手の接近に大きな耳を揺らしたかと思えば、文字通り、脱兎とその場から背を向けたが…
跳躍する前に、先端が花のように裂けた触手が真上から兎にたたきつけられた。そのまま地面に押さえ込んだかと思えば、数度脈動して、触手の中へと飲み込んでゆき…
■カシマール > 「んー…雌か、兎は雄が美味しいんだけどな。は~…町についたら、おねーさんでも買おっかな…それがいい、そうしよう」
誰に言うでもなく、一人ごちた。
今頃飲み込まれた兎は、少女の腹の中で見せられない事になっているだろう。
人になら手加減する捕食でも、獣であれば容赦もなしだ。
だがやはり、美味いのは人であれば…食いながらでも腹は減る、僅かばかりの空腹に腹を一つ撫でながら、まるで何事もなかったかのように町を目指して…
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からカシマールさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にガマグルマさんが現れました。
■ガマグルマ > ―――我に返るのは月明かりに街道が照らし出される時間帯。
じゃり……と足元の土を踏み鳴らす僅かな音が、遠い世界の音に聞こえたあと――感覚としては夢から醒める様な形にも近い。
足が重い。比喩表現の意味でも、物理的な意味でも、だ。
足元を見ると、自分では絶対に吐く事の無いだろうスポーティなマウントブーツだ。しかも、自分で購入した覚えもお願いをして購入してもらった記憶も無い。
――更に言うなら、ブーツの底に鉄板を敷くような武闘派では無い筈だ。
闘う目的ではなく、逃げる目的で靴を選ぶなら問答無用で軽い靴だろう。
しかもジャケットもずっしりと重い。ざらりとした表面は摩擦を殺す為の繊維が編みこまれ、仮に夜盗程度が揮うナイフやダガーくらいなら刃は防いでくれそうだ。
……繰り返そう。自分は断じて戦闘行為等好まないし、そんなものを選ぶくらいなら素っ裸になって身軽に逃げるような人間だ。
こんな武装にも近しい衣服に――腰には護身用という範疇からは大きく逸脱したような大振りのダガーが1本携えられている。
鞘に収まっているそれはベルトに巻きつけられ、脱落しないように鋲で皮ベルトに固定されている。
「――――またか?」
どうも自分の意識が途切れ途切れになる時間がある。
どう記憶を辿っても、わざわざ危険な王都の外を歩く用件も約束も無い。
さらに、脚の向いている方角から考えると、丁度……どこかの土地から王都に戻ろうとしていたようだった。
足が重いのは、馬車を使わずに歩いてきたからか。――血の臭いはしていないが-―。
■ガマグルマ > 自分に奇妙な特性が宿っていることは知っている。
この特性に自覚した前後から時折記憶があやふやになる期間や時間が生まれているのだ。
幸いなのは、その記憶があやふやな期間であろうとも出国、入国の手続きを忘れる事無く、さらに犯罪行為はしていないだろうという事。
それと、自分がどこで何をしているのかを知っている人間にも、未だ嘗て会っていない事だった。
「――日数がどれくらい経過したかはわかんねぇけど――まぁ、王都に戻るかぁ。」
この症状を誰にも相談しない理由は幾つかある。
1つ目は、自分の特性について秘匿しておきたいから。
剣術も、魔法も、弓矢の才能も無い己が生きていく為の切り札と言ってもいい特性。
これを表に出してしまうと、興味本位で研究、解析され――最悪取り上げられてしまうという危機感は持っている。
この特性のお陰で良い女と良い思いも出来ている。良い衣類、良い食事にありつけているのだ。
2つ目は、これが何者かによる…催眠術?傀儡を作成する類の術だとしてだ。
自分の命には無害であり、寧ろ装備のような物まで整えている。何かで利用しているのかもしれないが、それを自分に知らせないのは知らせたくない事情があるからなのだろう。
好奇心は魔王すら殺す。これについて調べる事、それを快く思わない人間、いや人間じゃないかもしれないが。
そういう存在が少し邪魔だな、と思った時点で自分の命など簡単に消されるだろう。
そう思ってしまえば、調査をしようという意識すら持てなくなるのだ。
自分に与えられた時間を、自分が保有している特性で思い通りに過す。
それが今の自分での最上の贅沢とも言えるだろう。
■ガマグルマ > 「ただなぁ……気味が悪い」
ひとりごちた。甘めの声音が夜風に流れて消えていく。この発言が願わくば自分の記憶を奪う、身体や意識を奪う存在に聴こえなかった事を願い-―近くの岩に腰を下ろして、改めて自分の状況を省みていた。
間違いなく衣類については自分の趣味とはいえない。
そして水も食料も――携行していない代わりに僅かながらゴルドはある。
行商人や通行人にでもあえば、ゴルドと交換で食料や水と交換してくれるくらいはあるだろう。
ただ、自分は今飢えも乾きも感じていない。
食後すぐという感覚も無く、適度に腹がこなれた状態と言っていい。
重い装備をしていなければ気軽に街道から少し離れた隠し温泉にでも向かい女性客を覗こうとするくらいの体力も体には満ちている。
足が重い事を除けば、概ね健常であり。そして体からは汗の臭いも血の臭いも、地下にいった時のようなかび臭いにおいも。
香水や花の匂いも何一つと言っていいほど残されていない。
此処まで徹底して痕跡を消している相手は、権力か実力か。両方か
何かしらの手段で自分を消す事は造作も無いの――だろう。恐らく。
■ガマグルマ > ――自分が大怪我を負っているわけでもない、意識を戻した際には殆ど無傷なのだ。
夢遊病にしては服装然り、自意識を取り戻すタイミング然り不自然その物とも思ってしまう。
まして出国手続きすら問題なく済ませていると言う点が余計に薄ら寒さを際立たせていた。
異常なはずなのに、その異常さが茫洋としすぎて全体像が見えてこない。
「王国の魔術師に頼るか……騎士団かぁ…?いや犯罪しているわけでもなし、何時意識失うかわかんねぇし……。」
保護してもらうならば、王国の騎士団だろう。……顔見知りもいるが、何より信頼は置ける。魔術師については多少の抵抗感こそあるが、騎士団に相談する場合なら特性は隠したままで話を行い、会話に乗ってくれる可能性はある。
だが、やはり其処まで考えた段階で――騎士団からも情報を得られる立場の人間が黒幕の可能性を思えば、相談しようかという今しがたまでの考えを踏み潰してしまうのだった。
■ガマグルマ > 自らの手を月明かりに照らし出す。汚れは無い。
皮膚がむけたりと言った力仕事を行なった痕跡も無い。試しに下世話な事を頭の中で想像した際に、きちんと下半身は反応する。
眩暈を覚えるでもなく、意識が覚醒した直後のふわりとした夢見心地な足も今ではしっかり地についている。
悩んでいても仕方が無い。切り替えよう。
そう考えて岩場の上でごろりと。岩の堅い地肌を背中に受けるようにして仰向けになり、雲一つ無い夜空と寒々しく輝く月を見上げる。
動かないのは、下手に移動をして目立つよりもこのまま岩と一体化して夜明けを待つほうが安全だという認識を持っている為だった。
動く姿よりも、留まっている姿の方が人目はごまかしやすい。
増して今は夜なのだ。――下手に動く影を見つけさせてやるより、こうして朝まで耐えたほうがマシだろう。
■ガマグルマ > 目を閉じる。そのまま静かな――否。
大音響の鼾を奏でた自分が夜盗やモンスターの危険に晒されること無く朝を迎え王都へと戻る事が出来たのかは――今はまだ確定していない話だった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からガマグルマさんが去りました。