2018/04/13 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にガラッゾさんが現れました。
ガラッゾ > ――薄雲に月は隠れ、喜びヶ原の街道には薄闇が落ちている。

街道に人影は一つだけ、その小柄な影は視線から隠れるようにボロいローブを着込み、フードを深く被り、その奥では澱んだ瞳がギラギラと輝いてる、獲物を探す獣の如き餓えた眼差し。

この闇の中を光源も為しに慣れた様子で歩くのは小柄な人影が夜目が利くと言う証明であり、闇の中でも十分戦闘を行えるだけの力があると言う事。

「……フアァ……………。」

の割には街道の夜風に流され響く音は随分と間の抜けた欠伸の音。

そんな事を言っても眠いものは眠い。
今日も村々で作品と呼べぬ鍬やら鋤を売り歩き、普段なら村を焼き払うのだが、人の手でしか手に入らぬモノと交換し、それを集落に届けて、今度は王都に向って帰ろうと……。

召喚されたガラッゾ達ならそんな苦労は要らないのだろう。
だが受肉し此方に肉体を持って馴染んでしまった野良の身は食わねば餓えるし、飲まねば乾く、犯さねば増えぬと重たい鎖を引き摺っているようなものだ。

ともかく、一先ず王都に帰り、肉を得た事で憶えた酒をかっ喰らおうとついでに土産に集落に酒を持ち帰る為にランタンの燃料をケチり歩いているのだ。

出来れば村からの護衛の仕事とか小遣い稼ぎが出来ればよかったのだがそれもなし、乗り合い馬車は時間的にないし、この見た目じゃ乗せてくれないだろう。

決して善なる生き物じゃない事も自覚している。
別にそれを抑えて隠そうとする心算も無い。

まあ今日も歩くついでに獲物を見つけてたのしめりゃ行幸、無きゃ無いで、それもまた邪神様のなんとらやらだ……。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にトールさんが現れました。
トール > 古い蔵を開けると聞いてゾス村へと買い付けに赴いたその帰り、月明かりすらも射さぬ夜にランタンの明かりだけが街道をわずかに照らす。
二頭立ての馬車が立てる音がやけに響くのは他に音を立てるものがいないからだろう。
御者席では初老の男が手綱を握り、キャビンの中には一人の少女の姿。
豪奢なドレス姿の銀髪の少女はまるで深窓の令嬢のようにも見えるだろう。

「すっかり遅くなってしまったな。」

窓から外を眺めながら少女が独り言ちる。
王都まではあとどれくらいだろうか……。
帰ったら湯を浴びたいが……時間的に近所迷惑になってしまうだろうか。
そんなことを考えながら嘆息をひとつ漏らす。

「……ん?」

ふと、暗闇の中に動く小さな影を見つけ、眉を寄せて目を凝らす。
そこにいたのは……小さな妖精。

「やあ、君はどこのガラッゾかね?」

御者に馬車を止めてもらい微笑みを浮かべ窓から声を掛ける。
取引相手として懇意にしている妖精だろうか、と。
見た目だけで彼らの区別など到底つかない。

ガラッゾ > 馬車の音には気がついていたが、どうせ乗り合い馬車などであっても乗せてもらえるとは思っていない、なら無用なトラブルは避けるべきだと、近づく音と気配に街道の脇にのろのろと移動するのだが、もうそれすらも酷く面倒で、フードの奥で醜悪な顔をしかめっ面に変えながら、馬車のほうを睨みつけようとしたら……何故か馬車が止まった。

睨みつけた事がばれたのだろうか?
それとも指名手配されていたか、召喚のほうの同族の犠牲者かそれとも兄弟の犠牲者か、考えるだけで心当たりが有りそうで思わず隠れよう、と結論をだした所で耳に聞こえる声は酷く甘美で……。

「………アア、誰カト思えバ………噂は聞いてイエルゾ、スキ者の取引アイテとカ?」

聞き覚えのある声色であり、聴覚に纏わりつくのは何とも言えぬ甘露な音。

以前兄弟の誰かが紹介者だと連れてきた女で、兄弟の中でも何人か相手をしてもらった様だが、その時家具や農具を主に作る自分は居らず、噂と出かける間際に聞いた声だけは覚えており、初見ではあるが思い出せば心のあたりのある声だった。

家具のガラッゾとも言うべきガラッゾ。
性格は酷く臆病であるが、作る家具は特別なもの。
妖精を閉じ込めて光源にしたランタンやそれ近しい機構を利用し巨大化させて犠牲者と興奮すると光るスライムを閉じ込めた家具などはこのガラッゾの作品である。

女を抱く以上に作品に組み込むこのガラッゾは同族でも勿体無いと酷く嫌われていて、たぶん良くない噂や女を閉じ込めて飾る家具などろくでもない作品をガラッゾ達の集落に言った覚えがあれば見たことは有るだろう。

ただ容姿は他のガラッゾと変わらないので矢張り区別は着き難く、他のガラッゾと違うところがあるとすれば単独で行動をするのを好んでいるところだろう。

――…で、止まった馬車から覗く、噂と声に憶えのある女を馬車の脇から見上げ、酷く苦々しく口元を歪めながら、濁った眼で視線でなんのようだ?と言わんばかりに睨みつけ、フンスッとこれもまた不機嫌そうに鼻から息を抜いて見せる。

トール > 「好き者とは手厳しいな。」

どうやら取引のある集落の妖精のようだ。
いきなりの挨拶に苦笑を漏らしつつ窓枠へと肘を載せて軽く身を乗り出す。
灯りの点いたキャビンの中から少女の豊かな膨らみと整った顔が覗くも妖精からは逆光になってはっきりとは見えないだろう。

「別に用はないのだが、見かけてしまったのでね。
 儂はこのまま店へと戻るつもりだが、もしよかったら途中まで乗っていくかね?」

御者が手綱を握ったまま嫌そうな顔をするが、すでに代金は十分すぎるほど支払い済みだ、文句など言えるはずもない。
キャビンは十分な広さがあるし、このまま一人でも残りの帰路で暇をするだけ。
話し相手くらいはいたほうがいいとキャビンのドアを開けて笑顔で誘う。

ガラッゾ > 悩む、好意に甘えるのは苦手で断りたくもある。
だが疲れ切った身体には馬車に乗る誘いは酷く甘美な誘いで、断るには身体が我侭を言う、もう疲れている言葉に甘えようと、腕も足も重く重く……。

逆行で見えぬ顔、まあスキ者な顔も身体もしているのだろう、興味はない訳ではないが、好みではない、露骨に表情に不機嫌そうなモノを浮かべ、両手でフードを払い醜悪な表情を馬車の両者に見せ付けて、断れるなら断ればいいと、鼻息を荒げてそれでも開けられたキャビンのドアをくぐり、馬車の中へと入り込むと、ドスンと態度まで不機嫌そうに女の多面に座る。

「……オレハ他と違っテ手垢のツイテない、女が好みデネ?良けレバ店員でモオレに売ってクレナイか?」

例もいわず、失礼な言葉を遠慮なくぶつけると、大きな溜息を吐き出す。

家具のガラッゾ、他のガラッゾと違う個性はフードをはずせば見える。
それは頬から鼻筋を越えて残る刃物でつけられた様な古傷。
その傷の所為で更に醜悪な顔に拍車が掛かっていた。