2018/03/23 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にガラッゾさんが現れました。
■ガラッゾ > 今宵もまた月は薄雲に隠れ星は何処にも見当たらない。
時間帯としても確かに月が昇り太陽が眠る時間である暗くて当たり前だが、それにしたって光が時折雲の切れ目から差し込む月光程度しかない、その中を一人王都に向けて歩く小柄な人影が一つ。
フードを深く被り、明かりのない街道を外れずに歩く姿は異様であるが、勿論本人は人ではない為、異様でも全然気にしないに傍目なんぞ気にもしない。
ボロボロのフード付きローブの腰には二振りの短剣。
その各々の柄に手を指先を触れさせながら、闇深い街道を軽快して歩き、周囲に意識を向け気配を探り、いつ何時何があっても言い様に気を張っている……。
でもよくよく考えれば自分は襲う方の立場である。
なら闇は友であり光無き夜は領域である……と、濁った眼を細めていたが少しだけ力を緩め、気の張りすぎた状況に大きく白い息を吐き出して落ち着こうとした。
今日は仕入れの帰りではなく、品を売り捌いた帰りである。
兄弟達と作った作品が偶々農具であったため、王都より近隣の村を選んで売り捌き、丁度酒も土産に買った帰りだ。
歩く度にちゃぽ、ちゃぽ、と音がするのはローブの懐に仕舞った小さな陶器の酒瓶の中でそのみやげ物が踊る所為。
とにかく、急ぎすぎず、慌てず、あわよくばすれ違う人に刃をつきたててもう少し懐を温めておければいいかなと、魔物なりに色々と考えながら歩き続ける。
■ガラッゾ > 野良であるが故に馬車の襲撃など出来るはずも無く、冒険者のチームなどは逃げるが得策、ねらい目はこんな馬車に乗り損ねたり、歩く距離と速度を間違えた初心者冒険者か護衛を雇えなかった商人か、体力の無い魔法職、若しくは危険を承知で野営をしているやつらから一人一人剥がして襲撃か……。
野良で無ければ兄弟を引きずり出せるのだが、野良なので集落の仲間を呼ぶことは出来ても距離的に無理である。
肉体も強靭とは言い難く、単独での戦闘は向いていない。
――やれる、とすれば物でも売りつけて借金のカタに嵌めて、と言うところだろうか?幸い売り物は今腰につけている自慢の二振りの短刀がある。
「まっ、それもコレも邪神様の気まぐれッテカ……。」
決して寒くない懐は心に余裕を生み出してくれる。
軽口を叩きながら、夜目だけを頼りに王都への道を歩き続けるが、鳥の鳴声も聞えない、蟲すら鳴かぬ自然地帯に挟まれた街道にゾっとする何かを感じない事も無い。
つい、そんな嫌な感覚に右手の人差し指を伸ばして鉤鼻の先端を掻きつつ、周囲に視線をめぐらせて少しぐらい何か楽しみがないかと……堕ちたる神様に心の中で祈りと気持ちだけの生贄を捧げ、街道を道沿いに進むのだった。