2017/10/03 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 途中で不本意な足止めを喰らったが、その後の行程は順調だった。
港湾都市に向けて南下する山賊街道側ではなく、九頭龍山脈の北側を通るルートに入ると、そろそろ目的地のタナール砦周辺である。
魔族の勢力圏との境界が近いこともあり、王国内では辺境の扱いをされるかも知れぬエリアでは、宿泊に適した村の数も目減りし、殆どが野宿となる。
早馬を差し向けて得た情報では、どうやら砦は魔族側の領有となっているらしい。

「これが商いならば、さぞ高値で売れただろうが…惜しむらくは、運んでおるだけじゃからな。
 特別手当とはいかぬ故、王都に戻ってから給金の袋を覗いて落胆するでないぞ。」

街道から少しだけ脇に逸れた原野を踏み均し、今宵の野営地としたらしい一行。
焚き火を前に車座になって談笑する最中、この隊商の長たる小さなシルエットが軽口を叩く。
このまま魔族の支配が続くようであれば、王国内に橋頭堡を築かれることとなり、更なる侵攻の手が伸ばされるであろう事に疑いはない。
そんな主観的危機感に背中を押された王国軍が反攻に出るのは、これもまた疑いのない事柄だ。
故に、攻勢に用いる物資を欲しているであろう事は火を見るより明らかであり、荷台の物資に値を付けて良いのならさぞ吹っかけられるだろうと。
人の悪い笑い声があがり、程なくして音もなく妖仙は人の輪を離れる。

ホウセン > 僅かながら、王都より北方に位置していること。
山脈がそう遠くないせいで、少しは標高が高いこと。
そして、移動の間に季節が進んだこと。
これらを併せた結果、夜風は涼しいを半歩通り越して肌寒さを覚える。
こういった時、キッチリと着込んだ異国情緒漂う着衣が丁度良く、小さな背中を身震いさせる等という事態には及ばない。
隊商から離れ、焚き火の明かりが届くかどうかの距離で、スルリと茂みの裏側に。

「はてさて、此処まで来て最後の最後でケチが付くのは面白くないからのぅ。
 誠に億劫なことこの上ありゃせんが…」

行動一つに、もれなくボヤキがついてくる。
懐から煙管入れを取り出し、煙草を詰めて口に咥えるまでの一動作が、嫌に堂に入っている。
火をつけて一服し、緩く紫煙を吐き出す。

ホウセン > 幾百、幾千、幾万と繰り返し、特段意識するでもなく出来てしまうのは、喫煙と式の使役の両方だ。
ふっくらとした柔らかそうな唇から漏れた煙は、そのまま風に吹かれて散逸するのを良しとせず、その場に漂う。
至近に他者がいても、その鼓膜を震わせることもなさそうな口の中での短い詠唱。
妖仙を囲うように漂っていた紫煙は、大ぶりな西瓜程度の球体に遷移し、草むらに落下する。
変容は留まることなく、やがてそれらには四肢が生え、頭部のない人型になるまで僅かな時間しか必要としていなかった。

「彼奴らの勢力圏はまだ先と聞いておるが、はぐれ者が気紛れでちょっかいを出してくるとも限らぬ故…」

確率は決して高くないであろうと評価しつつも、同時に皆無ではないと踏んでいる様子。
だからこそ、生み出した”煙鬼”に歩哨の任を与えることにしたのだ。
地均しをしていない野営地の外側は、所により妖仙の腰の高さまで草が生い茂っている。
故にこじんまりとした今のサイズならば、隊商の人間には秘密裏に警戒にあたれるだろう。

「…引っかかるのは、余程の間抜けか目立ちたがり屋ぐらいじゃろうか。」

人間ならまだしも、人外の存在ならば式の発する妖仙の気配を感じ取れようもの。
それでも存在の隠蔽をせぬのなら、露悪的な台詞が示唆するような輩か、もっと性質の悪い超然的な”何か”だ。

ホウセン > 用心が功を奏したか、結論はまだ先のこと。
目的地たるタナール砦近郊まで、残すところ後僅か――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からホウセンさんが去りました。