2017/05/15 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシャドウさんが現れました。
■シャドウ > 王都マグメールへの帰り道
乗合馬車の利用も嫌い、馬を借りるのも大嫌い、馬車を借りる手続きはそれ以上に嫌悪。
貸す側は大好きであるが、貸されるのは反吐が出るほど嫌いで、今宵こうやって街道を一人歩くのも止む無しなのである。
――そんな訳で光源である月明かりを薄雲が覆う闇夜の中、辛うじて舗装されている街道を一人、口先に咥えた煙草モドキの青紫色の輝きと左目よりは夜目の効く右眼を頼りにぶらりと歩いていた。
この時間帯は山賊や魔物や野生の獣が出ると聞いているが、まあドラゴンやキマイラ、それにワイバーンや巨人の群れにでも襲われなければ金とコネと腕の一つで何とかなるだろうと、油断と隙しかない余裕の表情を浮かべて、口先で咥えた煙草モドキを口で咥え直し、魔力が急速に身体に満ちていく高揚感と少しだけ重い懐にそんな馬鹿な事は有りえないと足取りも危険と背中合わせの街道を歩いているにしては足取りは非常に軽い。
「……いやぁ、王都から離れて面倒だとは思ったがいい商売をさせてもらったわ……。」
そう、何故街道を歩いているかと問われると、今宵は王都ではなく神聖都市の方で商売を終えての帰路なのだ。
業突張りの聖職者相手に貸した金を有無を言わさず取り上げて、特に腹黒い溜め込んでる奴からは金歯一つすら残らず巻き上げて、普段以上の収益に笑いが止まらない……。
■シャドウ > 夜風を遮るのは青々と茂る木々のみ。
昼間暑かったので薄着にしていたのが悪かったか、今宵の夜風は少しだけ冷たく、肌寒くすらある……。
これで半袖のシャツだったら最悪であるが、その辺は幸いにも長袖で露出しているのは手首より先で、其処はそれ両手を擦り合わせる事で少しだけ暖を取る事ができた。
すりすり、と両手の掌をすり合わせて生み出す摩擦熱、是だけでも結構暖かいものである。
「しかし、寒いな今夜は……。昼間は結構暑いくらいだったのに……ワインの1本くらい残しておいて持ち帰ってくりゃ良かったなぁ……飲みながら歩いて帰るとか。」
迷子になりはしない。
丁度王都マグメールへは真っ直ぐに歩けば良いし、時折旅人が残した目印だの山賊に襲われた犠牲者の名残だのが残っているので、それさえ見失わなければ大丈夫……と思いたい。
後は身体を芯から温める何かがあれば最高なのだが、生憎愚痴っただけあって高級そうなワインは金に変えてしまったし、飲料水じゃ身体は温まりそうもなく、煙草モドキの火じゃ何ともならず、本日始めての溜息をそーっと吐き出した。
着火剤くらいはあるので、焚き火を焚くのも一興ではある。
がそれは矢張り酒が友にある事が大事であり、それを考えると選択肢には入らない、のでただただ歩いて身体を温めるしかなくて……。
■シャドウ > 暫く歩いた後に嫌な気配を感じる。
背中にそっと刃物を突きつけられたような嫌な気配。
殺意、殺気、何と呼ぶべきか、人ではない何かの気配。
歩く速度を緩める、徐々に徐々に……。
最後にヒタと足を止めると背面の気配に向けて顔を向けるでもなく、右手を己の肩の高さにまで上げて、肩越しに中指を左右に振って見せた。
――魔鎧、封印解除。
言葉にしたか、考えただけか、それを知るのは背後の気配と己のみ。
右眼から涙の如くじわりと溢れるのはどす黒い液体。
それは滴り頬を伝い地面に落ちる間際に爆ぜて黒い蝶へと変わり舞い上がる。
そして蝶は男の胸元の高さまで舞い上がると爆ぜて六角形の黒い輝きになり、右手の指先に触れ黒い金属と化す。
最初は1匹、次第に右眼より溢れる黒色の液体が増えるにつれて蝶の数は増し、爆ぜて黒い燐光へと変化し、男の身体を包む黒い全身鎧と変り果てる。
――其処にたつのは何時もの軽薄な笑みを浮べる男ではない。
禍々しい意匠が施された全身鎧に身を包んだ何かである。
そしてその何かは背後の気配に向かい、身体の半分ほどを傾けると肩越しにニタァっと笑みを浮かべ……
走る、前へ、気配から離れるように……。
面倒事も嫌い、正面から殴りあうのも嫌い、金にならない争い事はそれ以上に嫌悪。
相手が美女で力ずくで押し倒すのは大好きであるが、意味もわからない殺気を向ける相手と対するのは反吐がでるほど嫌いで、今宵は魔鎧をまとい鎧の力で身体能力を引き上げた後に走って逃げるのだ。
きっと翌日は筋肉痛であろうが脱兎の如く逃げるのは止む無しなのである。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシャドウさんが去りました。