2017/03/10 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にペインテイルさんが現れました。
ペインテイル > 春の風が混じるか今宵の夜風はほんの少しだけ暖かさを感じる風であった。その風を切り裂くように街道を駆けるのは1頭の魔獣である。見た目は狼かそれに良く似た肉食獣か目立つのは頭部と同じくらい大きく、それでいて先端が5本に裂けた耳と、吹きぬける風とは全く違う動きと言うよりも蠢きを見せる長い尾に生えた触手束、明らかにそれは獣でありながら有り触れた獣ではなく――魔獣であった。

街道を舗装された地面を蹴るたびに硬質な爪が大地を抉り、熱気を溢れる呼吸を吐き出すたびに白い湯気になり、魔獣の走る軌跡となる。魔獣の気まぐれで戯れで、有り余る体力を自ら消耗するのにただただ走り続ける。もしその街道の途中に獲物になりそうな人間でも居れば、有り余る体力はきっと走るのとは別に使われる事になるだろう。

――魔獣が求めるのは走る以上に楽しめる死を感じさせるスリルと季節がら始まりかけている発情期、繁殖期の昂ぶりを吐き出せる麗しき雌の存在である。ただスリルにしろ交尾にしろ相手は容易く見つかるものではなく、故に走り続けるのだ。嗅覚は常に他者の匂いを嗅ぎ取れるように意識を集中させ、視線も大地に走る轍の新古を調べるように睨み付け、魔獣は走る……只管にただただ何かを求めるように……。眩く冷たい月明かりはそんな魔獣の姿を照らし出し、魔獣の毛皮は神々しくも艶やかにその光を弾いて……。

ペインテイル > 風を切るような速度で駆ける魔獣が不意に速度を緩め、次第に走るから歩くへと動作を変えて、最後には街道の半ばで立ち止まる。鋭敏になる程に意識を集中させていた嗅覚に引っかかる香りを感じたからだ。鉄錆の香り?それとも何か果実の香りか酒の香りか、この距離では判別できないが、確かに何か鼻腔を擽る芳しい香りが遠方より香っている。

グルルル…………。

魔獣は喉を鳴らし、威嚇……ではない、人間で言う独り言、この先に何があるのかと、眼を細め街道の先を睨みつけながら、幾度か喉を震わせ唸り続ける。だが無論のこと唸っているだけでは解決しない事は魔獣も理解している。だが、不用意に近づくほど愚かしくもない、故に距離を取ったままその香りが何かを判別するまで動かずに、ただただ暗闇の先を睨み続けるのだ。これが荷馬車か何かであれば幸い、若しかしたら誰かが酒を飲みながら歩いているのかもしれない、しかし、これが負傷した冒険者の一団や騎士達だったら?負傷した手負いの人間の恐ろしさは理解している、だからこそ慎重なのだ。無謀に慣れるほど理性が欠けていない、それを証明する様に月明かりを全身に浴びながら月を背負うように街道の真ん中で四肢に力を込めて立ち尽くしたまま動かない。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に花琳さんが現れました。
花琳 > その女は、街道をとぼとぼと歩いていた。

「はてさて、困りましたねぇ…」

鶴駕、つまり鶴に乗ってある場所に赴いた帰り道、鶴が空を飛ぶタイプの魔物の類いに破壊されてしまったために歩いているのだ。
無論、魔物は追い払ったが…
夜闇の中で切り絵をするのは難しい。なのでこうして危険を承知で街道を歩いていた。だがそれは選択ミスだったと気づいたのは今しがた。

この気配は、魔の類い。魔物にしろ魔獣にしろ、この地のそれを詳しく知っているわけではない。対処法など知らない。ならばどうするか、戦闘しかなかった。
女は手に持った扇を木の剣に変える。
魔を寄せ、魔を斬り、快楽を与える代わりに地からを奪う剣に。
そしてそのまま、まっすぐ歩いていく。