2016/12/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に獣魔さんが現れました。
■獣魔 > 「……クアッ!!クアクアッ!!!」
無数の木々が織り成す深い森を引き裂くようにして作られた神聖都市や王都からゾスやタナール砦等を結ぶ街道に今宵は一際甲高く不気味な何かの鳴き声が響き渡る。
聞けば鳥に近いというべきか、若い竜種の鳴き声か。聞く者に怖気を感じさせるその声はこの頃街道の周辺を縄張りとして山賊紛いの行動を繰り返す獣魔の群れの鳴き声であった。
――獣魔。
魔族ほど知性は高くなく魔力も低い
魔獣ほど力はないが、魔獣よりも賢く狡猾である
だが知性有る亜人と比べると理性よりも本能を重視する言わば半端モノである。
しかし、同族をまとめる統率力と武器を扱う知性と腕力、そして手先の器用さにおいては他のモンスターと危険度は比べ物にならないだろう、それも集団であればそこ等の騎士団に匹敵するレベルの脅威である。
そんな獣魔の中では小さな群れになるであろう街道周辺を根城にしている大小様々な体躯の獣魔。
勿論その手に持っている武具もまた様々で、特に目立つのは無骨な金属のナタを巨大化させたような武器を持つ獣魔である。
群れの中でそこそこの地位を持ち合わせているのか、街道を挟むようにして存在している森の木々の陰で悠々と以前商隊を襲ったときに得た戦利品であるワインをビンを引っつかんで呷っており、その傍には巨大なナタにしか見えない手作りの金属の塊りを地面に突き刺し、それに寄りかかり一人酒盛りを始めている。
――街道を走る馬車か冒険者かともかく不運にも領域を通る事になる獲物をジッと待ち、瞳を凝らして睨みつけているのはそんな力のある獣魔ではなく、もっと下位の背丈格好がバラバラの若い獣魔達。
無論その手に持つ武器は与えられた武器でさび付いた槍や手斧に盾と貧弱な装備を構えて、緊張した面持ちで街道に視線を向けていた。
獲物の到来を今か今かと……
勿論毎回都合よく獲物が街道を通る事はない
故にそれを逃すと小さな群れの中でより地位が低くなる事は間違いなく、出世欲の強い若い雄は地位にしがみつこうと必死なのだ。
■獣魔 > 誰もが一級の戦士であり、誰もが上級の鍛冶師でもある獣魔の群れに興味を抱き傭兵として招き入れる好事家や戦争屋も存在する生粋の戦士である獣魔達。
しかし、これが悪い方に傾いた結果として人間の山賊やゴブリンの群れ程度では比にならない程の最悪な集団となっているが、元々獣魔とはそういう存在なのだ。
幼少の頃から飼いならそうと考えて実行したモノも居たようで、卵から孵しただのメイドに産ませただのという情報さえ共有されており、ある種の希少な生物とさえ言われている。
「カァツ!クワックアッ!!」
最前線で街道を見張り獲物が通りかかるのを待ちわびる若い獣魔の定期報告の鳴き声が街道に森に響き渡ると、一瞬だけ森のほうで何かがざわめくが、直ぐに静まり、再び静寂が街道を支配する……。
気がつけば周辺は耳が痛いほどの静寂に包まれている。
その静寂を時々破るのは最上位の地位を持つ獣魔が喉を鳴らし酒を呷る音だけ……。
次第にその酒を喉に通す音が荒くなるのは獲物が来ない苛立ちの所為、そしてその苛立ちに八つ当たりされたくない周囲はその獣魔を怒らせぬように武器を為るべく音を立たせたい為に抱きかかえ震え、息を潜める。
その中で最前線の若い雄達だけがそれを読めず、喉を時折鳴らして血の気の濃いところを見せていた。
■獣魔 > ガキンッ!!!
静寂を再び打ち破るのは苛立ちが限界に達し、堪忍袋の緒が切れた……のではなく、飲んでいたワインが尽き鬢を逆さに振っても雫の一つも落ちない事に飽きた上位者の獣魔が送った合図……オレは帰るぞと。
その音に続き、他の獣魔達も各々持っている武器で同じような音を討ち響かせる。
槍を獲物としている獣魔は槍の石突で石を叩き割り、錆びた両手剣を構えた獣魔は切っ先を地面に叩き付けて同じように石を割ってガキンッと音を鳴らし、同調の意を示す。
其処からは行動が素早かった。
木々立ち並ぶ深い森が一瞬で静寂から騒がしい何時もの森へと戻る。
狼や梟の鳴き声、虫の羽の音……
あれだけ居た筈の獣魔の姿は既になく
一斉街道から離れて森の奥に消えていった……
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」から獣魔さんが去りました。