2016/11/24 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にサイラスさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にサイラスさんが現れました。
■サイラス > 喜びヶ原を夜が包む。
街から外れてゆく街道沿いに、ぽつりとひとつ野営の火があった。近寄る者があれば、幾つか転がっている岩に寄り添うように一台の荷馬車が停められていることに気がつくだろう。野営の火は、そこから少し離れた見張りの焚く火であるようだった。
火を囲むのは2つの影、座り込んだ者がひとり、寝転がるものがひとり。
座り込んだ者の顔はほの紅い火に照らされて、どこか張り詰めた表情を浮かべた青年の横顔が浮かび上がっている。その視線は何処かを見つめるでもなく、ただ周囲の気配に耳をそばだてて居るだけのようであった
■サイラス > 「……っ」
漏れたのは小さな舌打ち。というのも、青年の気を削ぐのは見張りの相方の寝息よりも、どこか遠くから聞こえてくる動物の声よりももっと不快なーー岩陰の馬車からかれこれ1時間はひっきりなしに聞こえてくる嬌声やら、荷台の軋む音だったからである。
砦で戦う兵士達への慰問団、の護送。それが自分が請け負った任務の全てだ。
兵士でもない自分が砦に近づけるのなら、方法は何でもいい…と思っていたはずなのだが。
腕にだけは覚えがある荒くれ者の集まりの護衛団が毎夜催す騒ぎに、溜め息の1つもこぼしたくなる。というよりこぼしている。
いい加減にしろと荷馬車へ向けて矢をつがえたくなる衝動は舌打ちと共に吐き出して、また見張りの任務へと戻ることにしよう。
砦には、何としても辿り着かなくてはなるまい。その為にも、任務を邪魔立てする獣一匹許してはならないのだ。青年は瞳を冷たく光らせて、座り直した。
■サイラス > 『俺もお前も3発抜き終わったんだから、そろそろ交代だ』などと律儀なのか下卑ているのか分からない会話を交わしている足音が2つ近寄ってくる。
重たい足音の方は、昼間に襲ってきた山賊の一団を文字通り真っ二つに叩きのめしていた男だし、笑い声が独特な方は魔法の腕が立つ。残りの数人はその辺で寝ているか、馬車で未だお楽しみ中なのだろう。
全く気が合わないが、彼らの命を持ってすれば辿り着けないこともないはずだ。
自分が昔見た夢があるーーむしろ未だに時折見る夢だ。険しい山を割って、巨大な黒い影の『王』がこの地を統べるために訪れる。
彼こそが黒王だ、彼こそが救世主だーー首に下げた黒曜石の欠片を握りしめる。
『それは…マズいな』
ゆらり、と瞳に暗い色が宿ったのはしかし、見張りの相方の心地好さそうな寝言に遮られ眉を顰めることになった。
2つの足音も立ち止まり、ゆらりと立ち上がったマントの青年は寝転ぶ人影の横っ面をブーツの爪先で突いてから歩き出す。寝ぼけ声と笑い声を背に、岩陰に身体を丸めて今日はもう眠ることにしよう。ヤルダバオートの神と精霊の加護が我々の道行きにあるようにと祈りをこめてからーー
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からサイラスさんが去りました。