2016/11/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に獣魔さんが現れました。
獣魔 > 今宵の静けさは異様であった。
虫は鳴かず、囀る鳥も今は沈黙を歌う……。
狼達は眠りを貪り、魔物達すら陰に隠れ息を潜める。

月は雲隠れし差し込む光は僅か、都市と都市を結びつける大きな街道は決まった距離で点在する水銀灯がその月明かりよりも明るく整備された道を照らしだしていた。

「クルルッ…クワッ、クワッ……………。」
鳥似て甲高く、一定のリズムを持って甲高くなく何かの声、会話か共鳴か、一人が鳴くとあちらこちらで同様の鳴き声が空気を震わせる。

水銀灯の輝きで照らされた街道、それを挟むようにして存在している広大な森。
その森の木々に紛れながら、街道を通る獲物を狙い息を潜めるモノ達が居る。

鳴き声の主、木々に浮かぶ小さな光はそのモノが街道を睨み獲物が通りかかるのを見つめる静かな狩猟者の眼差し。
聳え立つ木々に混じり、木に背中を預けながら唯でさえ背の高い人影の身の丈ほども有る巨大な刃を持つ鉈をボロ布で磨き、僅かな光にも反射させないように泥を塗りたくる。

――さあ、今宵街道を通る不幸な者は騎士か冒険者か商人か、獣魔と呼ばれるなり損ない達は到来を息を潜めて待ちわびている。

獣魔 > ギシ……ギシ………
土を踏みしめる音が響き、その音に時折枝が折れるパキと言う高い音が混じり、あたりの静寂を引き裂く。
木々の陰に隠れて輝く様々な色の瞳は一つではない、大小様々にして、色合いもまた一つではない。
それだけの数の人影が獣魔達がその数だけ各々得意な武器をドロに塗れた布で磨き続ける。

何時でも、直ぐにでも獲物が街道を通りかかれば襲撃できるように……と。

馬車であれば複数で、単独であれば一人で、獲物に対して襲いかかれるように息を潜み続ける獣魔の群れ。

森の木々が沈黙したのは獣魔達が潜み、武器を携え獲物を待ちわびる異様な光景と空気の所為だろう……。

全身像は爬虫類を含めたリザードマンに近く、顔立ちはそれ以上にのっぺりとして瞳だけが爛々と輝いている。
人間と違うのは長く逞しい両腕、背丈ほどの武器を軽々と扱えるだけの筋力と器用に動く長い指先、普通の兵士であれば束になって叶わぬ程の狩人たちが街道の両脇に広がる森の木々に隠れて息を潜めているのだ。

動物たちは鳴く事すら出来ぬほどに空気が張り詰め、薄暗い霧すらも広がり始めていた。