2021/05/06 のログ
■ナイン > 少なくとも、軽重吊り合わせて遣る義務は無いだろうな?
…何、此方が衣を軽くすれば、相手の口が軽くなると考えてみろ。実に良い手じゃないか。
まぁ連中の揉み手が後どの位続くのかは判らないよな。
けれど、掌に何かを握り込んでいるという事は、端から変わっていないのだろうさ。
…っくく、私は何でも口八丁だからな?貴男が利用させてくれるというのなら――吝かではないよ。
きっちり貴男に――ホーレルヴァッハ家が割を喰わないように。気を回して遣るさ。
(彼の意図は良く分かった。態々グリューブルムの名を出す…家家の繋がりの存在を敢えて、それこそ軽くなった舌先が滑らせたとでも言わんばかりの物言いは。
意図的に周囲へと。遊興に耽っているかのようでいて、その実、聞き耳を立てているであろう者達に聞かせる為。
何とも有難い心遣いであり。だから、事前に己の絡んでいる案件に関しては。此方からも便宜を図ると口約束。
それも、また。一方的な従属や支配ではない、一定の協力関係なのだという事を。他者へと知らしめる言い草であり…
勿論。口約束とはいえ約束だ。彼への礼でもあるのだから、反故にする気は無い、と言っておく。)
言っただろう?割と…雰囲気という物を気にするんだよ、私は。
時と場をさえ選ぶのなら、好きに盛れば良いのだろうし――私もそういう気になる事が、多々有るけれど。
仕事が残っていたら気になって愉しみきれない。
こちとら仕事中だというのに、周りで愉しまれていたら。腹が立つ。
そういう物だろう?人間切り替えが重要なのさ。
(溺れる者は少なくない。寧ろこの国で、程々以上の地位を持つのなら…手段としても目的としても、快楽と無縁では居られない。
なので溺れる事自体は否定せず。但し、時と場を選べ、と。どれだけ深みにのめりこもうと、切り替えられるのならそれで良いのだ。
寧ろ、その位の割り切りが出来る技量でも無いのなら。優秀とも有能とも呼べまい、と。)
ほら。それだけの観察眼が有るんだ、充分さ。
少なくとも何を着ているのかよりも、その中身にしか興味のない連中に比べればな?
(案の定――ではなく。期待値に応えが返ってきた、と言うべきではあったが。
それでも彼の口から、昨夏の一件に関する話が出て来たのなら。さも得心気に肯いてみせた。にんまりと緩む口元が、少女の上機嫌を示すだろうか。
チェアの上で組んだ脚を解き。改めて躰毎、彼の側へと向き直る形で。横へと向いて座り直す。
その間に返ってくる感想と、意見に。未だ水には入っていない為、多少湿度を帯びた程度の前髪を弄りつつ。)
歳相応――か。 …まぁ其処は確かに。普段、考えないものな。
それこそ昨年のように。戯れる為の物なら、屹度それで良いのだと思う。
逆にこういう時。そう、欲深い連中に腹を割らせる為というのなら、という意見も欲しかったがな。
そら、どういった物なら男好きするのか、だ。同性寄りも異性に問うてみたいのは当たり前だろう?
(前半に関しては。さも納得したという風に肯いた。
相応の少女らしく居たい、なぞと考える事は滅多に無い。王城でも、此処でも――少しでも大人達に近付ける様。
少々貴族らしからぬ物言いで言うのなら、ナメられる事の無いような言動を、格好を。意識せざるを得ないのだ。
だからこそ。貴族として、ではなく少女としての己に対する、忌憚のない意見は。素直に受け容れる事としよう。
それはきっと。再び夏が訪れる頃にでも、役立てられる機会が来る筈だ。
さて、置き。
幸か不幸か先程迄語り合っていた通り。今日此の場での少女は、未だ。立場を忘れていないのである。
即ち――貴族家当主である事を。意地の悪い、悪辣な、決して男共に後れを取るつもりのない女である事を。
そんな己が。普段とはまるで違う…と言っても良い、何とも戸惑いを隠しきれないかのような彼の表情を見てしまったのなら。
………嗤った。獲物を見付けた、捕食者にも似た眼差しで。)
ふむ、知らないんだな?それなら案内してやるさ。水遊に関する物なら、此処はごまんと扱っているのだから。
…もう一つの方も訊かせてくれよ、男連中が鼻の下を伸ばしてくれそうな奴。…最初に見られると思えば、役得だろう?
(さ、と。パーカー程度の上着を羽織って立ち上がれば。
態々、背を向けた彼の反対側、正面へと回り込んで。手を差し伸べ、立ち上がる事を促した。
…少年風情の表情を見せた彼をからかう、滅多に無い機会なのだ。絶対に逃してやるものか。)
■ギュンター・ホーレルヴァッハ >
「…ふむ。では、諸々は改めてダイラスにて打ち合わせよう。
帝国とは融和的な状況になっているとはいえ、未だ戦争を継続している敵国である事には変わりない。
私は…いや、ホーレルヴァッハは兎も角。『王国』に損を与えぬ様な立ち回りを、期待しているよ」
それは、僅かな皮肉か。或いは、純粋な声援か。
此の国に対して思う所が僅かに、しかし明確に異なる二人。
それを知るからこそ、彼女に向ける言葉は嗤う様な。それでいて期待する様なもの。
少年は王国を見限っており、少年の一族は既にその資産を王国に頼らず増加させる事が出来る。
此の国を憂えるのならば、努力するのは少女だけかもしれないな、と。
小さく、笑みを零すのだろう。
「雰囲気、か。私も、気にしないでもないが…。
確かに、やるべき事を片付けぬ儘享楽に耽るのは私も好かぬ。
此方があくせく働いているのに、きゃんきゃんと喘がれては腹も立つ。
とはいえ。そういった切り替えを出来る様になるには、やはり或る程度の能力を持ちつつ、程々に遊ばせて耐性を付けてやらねばとも思うがな」
己や少女は、そういった物事に対して割り切れる。
公務と享楽を、一定の線引きを持って切り替える事が出来る。
それが出来ない者を切り捨てるのは容易いが、出来ない者を出来る様にするのも支配者の務めだと。
――まあ、要するに。優秀だが堅物な部下達の息抜きをさせてやらねばな、と再び溜息を吐き出すのだ。
「…中身にしか興味が無い連中など、そこらの娼婦でも抱かせていれば良い。
第一、そうやって女を吟味する連中こそ、派手な装いの下にあるのは肥え太った肉体ばかりなのだからな」
フン、と少しばかり居丈高な吐息。
彼女が例に挙げた者達を小馬鹿にする様な、そんな声色。
しかしそんな言葉も態度も。上機嫌な笑みを浮かべて此方へ躰を向けて座り直した彼女の姿を、僅かに向けた視線の先で伺ったのなら。僅かに崩れてしまうのだろう。
何だか、些か、嫌な予感に駆られなくもない。
「…戯れる為の装いだろう。
常日頃そうあれ、とは言わんが。
陽光が大地を妬く季節の数日くらいは、水着を纏って年相応にはしゃいでいても、誰も文句は言わぬさ。
……それはそれで、別に構わんが。その意見は突き詰めれば、私の好みになってしまいそうな気もするがね」
彼女に年相応の時間を過ごして欲しい、と思うのはきっと己の我儘なのだろう。
共に並び立ち、時に互いに策謀を巡らせ、宮中の魑魅魍魎に抗って。
それでいて、気高い少女を何時か己の手で手折ってやりたいと思っていても。
それでも、彼女には許されなかった時間を、少しでも。
と思ってしまうのは、我ながららしくないと自嘲するばかりだ。
それは、慈悲や慈愛。庇護などではなく。絶対的な権威と地位を持つが故の傲慢な我儘だとも分かっているから、尚の事反吐が出る。
――そんな情緒だから。開放的な空気と、久しい再会に浸ってしまったから。
尊大と傲慢の鎧を、何処かに置き忘れてしまったから。
狼狽え、戸惑い、感情を押し隠そうとしたから。
…彼女に、獲物として捉えられる。罠に嵌まった獣の様に。
「…な、それは…いや、別に、構わない…が。
……全く。此の私を好き放題連れ回すなど、ギルドの商人共がどれ程羨ましがることか、分かっているのか」
差し出された手を取って、異性である彼女に引っ張られる様に立ち上がって。
先程の嫌な予感が、どうにも現実になりそうな気がして、少しだけ途方に暮れる。
今日は、らしからぬところを彼女に曝け出し過ぎた。
会合の場所が王城の儘なら、きっと此処まで露わにする事も無かっただろうに。
そして、彼女がそれを見逃さないであろうことも、良く知っていた。
揶揄われるだけで済めば良い、との思いと。
男共に晒す為の水着を、自分が選ぶという僅かな独占欲と。
どうにか、普段通りの態度を取り戻したいという焦りと。
そんな複雑な胸中の儘、彼女に誘われる様に…一先ずは、此の場を後にした。
様子を伺っていた貴族の娘達のきゃいきゃいとはしゃぐ黄色い声を、背中に受けながら。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
■ナイン > っは、ん。それは勿論さ。『私が』損をしない為でもあるんだ、手を抜く筈はないだろう?
――お互いに利用し合っている。それは端から解りきっている、どちらも納得済みじゃぁないか。
(傍から聞けば、それは。王国と帝国の関係について、としか聞こえないだろう。
だが少年と少女、この二人の間でだけは。もう一つの意味を持っている――我々はお互いに、そういう関係だろうという。牽制と確認だ。
少女は王国を見捨てられない。少女にとっての王国は、変え様の無い己の因って立つべき所。
故に諦めの悪さは、己自身の為なのだと。改めてその点だけはきっぱりと主張しつつ――だが、取り敢えず。
今日の所は不穏当な会話も、この辺り迄となるだろうか。
切り替えが、割り切りが、大事だと。己自身がそう口にしてみせたのだから。)
おや。随分と優しいじゃぁないか。
出来無い奴は出来ないよ、屹度。慣れれば良いというのは……それは、貴男達男の意見だよ。
こんな時、女の側は苦労させられてばかりなのさ。
(割り切るからこそ、少しばかり不満気に。首を竦め気を吐いた。
…得てして。溺れさせられる…を通り越して狂わされるのは、女の側が殆どだ。
王侯貴族であろうとも、女として生まれた以上は常に、狂喜に陥れられる危険が付き纏うのが。この国の習わしである。
息抜きの為、教育の為、そんな名目で利用されては堪った物ではない。
好い加減爛れる慣れてしまった己のような人間ならばともあれ。出来無い物を切り捨てるのも――
そんな言い草とは裏腹に。出来得る限りは、壊れない程度で済ませて遣ろうというのも。己の役割なのである。)
ぁ、は。それに関しては同意するよ――見たいと思う事にかまける輩程。逆に見られる事など、考える頭も無いのだろうさ。
いやいや……っくく、その点貴男は未だ冷静だよ、ちゃんと…検分して、判断してくれているじゃぁないか。
華奢、か。ハッキリそう言われてしまうのは些か癪だが――貴男の事だ。悪気は無いのだろうし。
だからだよ。嗚呼、下心と関係無い…というか。男共の下心が何処に向けられるのか。それを雑念無しで答えてくれそうな男など滅多に居ない。
(人それを朴念仁というのである。いや、彼の場合は己と同じく、割り切りや切り替えが出来ているとも言えるのだが。
こうやって仕事に意識を割り振っている際の彼は間違い無く…ソレであると言って良い筈だ。
そんな彼が。此の場には似つかわしくない、牡の牙を剥いてみせるチャンスが来る前に。徹底して先制攻撃を決め込む事にした少女は。
…それはもう、己自身からすれば、決して似合いはすまいと考えているような。
もしかすると彼の側からは――少しでも、と思い描かれてしまうかのような。
少女らしい微笑みを、毒気の表に貼り付けて。)
善は急げと言う奴さ、亦何時老人共の気紛れで、第二回が行われるとも限らないからな?
…ぁは、解っているとも。だからこそ見せびらかしてやるんじゃないか。」
なぁ?、と同意を求めつつも。伸ばした手を握られたのなら、彼が立ち上がるのに手を貸して。
水着で歩き回っても問題のない施設だ、その侭、プールサイドから歩み去る。
目を丸くする男達、声を上げる娘達、そんな様子など知らぬ存ぜぬ。己にとっての愉しみは、今正に此処からなのだ――)
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からナインさんが去りました。