2020/04/04 のログ
セイン=ディバン > 「……えぇぇぇ」

揺れてるよぉ、なんて呟きながらアホ毛を見る男。
いっそ、何か生命体なのでは? とすら疑っている。

「オレじゃなくてもその微笑みは刺さるわい」

心無い微笑みほど辛いものはないんだぞ、と言いつつ。
男は、涙を拭いきり、表情を引き締めるが。

「ノックはしてやれよぉ」

あれ、トラウマになるんだぞ、という男。
まぁ実際のところ。兄弟が多いとそういうことは珍しくはないのだろう。

「さぁて、それはどうだろうな。
 ただ必死だったって話しだし。
 一歩違ってりゃ死んでたろうし」

究極的に言えば、運が良かっただけかもよ、なんて嘯く男。

「がぼぼっ、ぐぼがぼっ」

男としては、水中で大丈夫だ! と言っているつもりなのだが。
確かに、溺れている時と見分けはつかないかも。

「そうだな。今日のところはそれくらいがいいかもな」

目標達成は、焦らずに、というのが大事。
男は相手の発言に頷き、まずはしっかりと身体を支え。

「よし、いいぞ。
 いや、ティア、才能あると思うぞ?」

なによりも、飲み込みがいい。一度指導すれば、すぐに感覚をつかめている。
もちろん、すぐ実戦投入、とは行かないだろうが。
これなら、おぼれることはないだろうと思い。

「よし、疲れたなら今日はここまでだ。
 無理しても上達はしないからな。
 今日の努力のご褒美にドリンクを奢ってやろーう」

男はそこで、練習の中断を命じ。
相手に、冷たくて美味しいドリンクを奢ったんだとか……。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からセイン=ディバンさんが去りました。
ティアフェル >  ……さっきから、ナニ……、と生きてる説のアホ毛の持ち主は訝しくてしょうがない。アホ毛だけがのびのびしていた。

「――攻撃対象はセイン=ディバンに限らない。どこまで効くかデータ取ろう」

 そんなことをすれば即嫌われ者になるが。気にしません。根性悪なので。

「弟だってノックしないのに」

 着替え中に何度開けられたか知れない。痛み分けじゃい、と。そもそもいちいちノックで部屋に入るような上品な家庭はどれだけあろう。微妙な顔していた。

「まあ……セインさんはいろいろ説明されて教えられるよりも、そうやって死地に立たされて『死にたくないからやってやる!』タイプなんだろーね。
 憶え方は人それぞれよね」

 自分に才能がある!なんて誰だって思えないよねと微苦笑気味に肩を揺らし。

「……だから、怖いってば」

 大丈夫と云ってるのか溺れそうと云ってるのかすら判らぬので。怖い水中指導だった。

「焦らず覚えるよ、海運の仕事がある訳でも溺れる予定がある訳でもないからさ。

 っへへ。できてきたかな? 
 先生がいいんでしょ?」

 自分なりのスロースペースではあるが、一人でコツも分からぬままやってる訳ではなく頼れるコーチがいるもので、どうにかこうにか形にはなって来た。先生のお蔭ですよと感謝し。

「はああ、お疲れ様でしたーあ。
 ありがとうございました!
 指導のお礼に奢るのはわたしでしょーに」

 気が付けば大分息が上がっている。ふやけそうな程水の中にいたと、プールを上がってから気づいて頬を掻いて笑い。
 ところで邪魔しちゃったけどナンパは良かったの?と水分補給しながら、結局誤解したままだった女は暢気に尋ねていたとか。
 
 

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からティアフェルさんが去りました。