2019/07/31 のログ
ご案内:「ル・リエーの水遊場」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――嗚呼、まるでたたただ時だけがぼんやり過ぎゆくよう。

日頃の軍務から離れて、長めの休暇に勤しむとなればこういうものだ。
勿論日々の常としていた鍛錬だけは忘れてはいけない。あれを欠かすと、見目的にも色々とよろしくない。
だが、何かと気を煩わす事物から距離を置く。
あるいは思考の内から放り出す。乗騎たる竜の思念の遣り取りは出来るが、緊急時以外は何処ぞの空を飛んでいることだろう。
言葉にする程単純ではないが、それだけで。嗚呼、それだけで――。

「……暇を程よく持て余すっていう感じも、久しぶりだわ。静かなのは丁度良いんだけど」

ここは水遊場の上層に近い階層。夕刻は過ぎ、既に夜に差し掛かりゆく頃合いとなれば空には橙色が硝子の向こうに掛かる。
流水が小川のせせらぎにも似た音を立てて、流れ往く傍に置かれた長椅子に腰掛けつつ、手を伸ばせば冷たいものがある。
よく冷えて雫の汗をかいたアルコール飲料のそれだ。
成る程、暑さに見合った涼風を思わせる色合いの其れを含めば、熱を帯びた喉奥を冷たさが洗う。
適度に泳いで。適度に休んで。生憎と綺麗処には欠けるが、それだけで時間を潰せる感覚というのは新鮮さがある。

アマーリエ > シェンヤン絡みの動向を注視し続ける――のは、他所に任せる。
元より己が麾下の軍は諜報絡みにはとんと向かない。
世話になっている傭兵達の伝手を辿れば、噂話程度で細々とした話は入るものの内憂外患な万事には向かない。
適材適所の概念では、噛み合わない。強き竜が足元を這いまわる蟻の動向に一々気を払うものか。
故に平時と同様に麾下の竜騎士達には順次休暇を取らせつつ、国境の巡回、巡視に当たらせる。

「……――ああ、駄目ね。変な具合で仕事忘れてないわ」

嗚呼、今となってあの手を打っていれば良かった。こうしていれば程良くコトが運んだか?
思考が鈍るほどの酒の強さではないけれども、酒杯を戻しては日頃の癖のように過った諸々に思いっきり顔を顰める。
仕事をサボれる範囲でサボるのはあるが、休める時にとことんまで休んでおこうと部下達に任せて休みに出たのに、これはいけない。

「もう少し泳ぎ疲れれば、変なコト考えずに済むのかしら。……ねぇ?」

嘯きつつ、サンダルの足音を微かに立てて立ち上がろう。
微かに汗ばんだ肌を強さを減じた暮陽が炙るように照らす。目を射れば、それでも眩しさを覚える日差しに身体を解すように動かす。
膝の曲げ伸ばし、背伸びのたびに馬の尾のように括った長い髪が揺れる。