2019/02/17 のログ
ご案内:「ル・リエーの水遊場」にイルザさんが現れました。
イルザ > 上層階の高貴な者が集まるプール。
大人っぽさと少女らしさを兼ね備えたような、大きなリボンを谷間や腰に飾った
黒いビキニを着用し、更衣室から出てくる‘貴族’の娘。
一応ここではロクサンヌという偽の身分証で入っているため、彼女はイルザではなくロクサンヌ嬢だ。

本日ここを訪れたのは、標的に近付くため。
数か月張ったが、常に誰かが近くにいるため、なかなか機会に恵まれなかった。
ならばまずは好意的な出会いを果たし、親交を深めて2人で会うことが
可能な関係になったほうが良いだろうとの判断が、組織よりなされた。
正直――――苦手だ。

(「いきなり接触するのも怪しいし、とりあえず……水に入って様子見るか」)

組織より与えられたビーチボールを抱え、階段を下りて水に入っていく。
イルザの上背では胸の下まであるプールで、遊ぶには少し深く感じる。
もっと浅いプールも勿論あるのだが、対象者と同じプールのほうが都合が良いわけで。

(「背丈の違いはどうにもならないからなー」)

水練も当然仕込まれている。が、この場合、ガンガン泳ぐのは違う。
泳ぎは得意じゃありませんの体で、ビーチボールに被さり、ぷかぷか浮くことに。
のんびり、だらり。これが意外と難しい。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

お貴族様たちが集まる、高級志向の水遊び場。
そこに場違いな風体の男が一人。
不機嫌そのもの、という表情でプールサイドに立っており。
周囲を覗うようにしている。

「……はぁ……」

ため息を吐き、頭を振る男。
楽しいプールには相応しくない姿だが、ちゃんとしたお仕事中である。
このプールで水遊びと称して女漁りに励む貴族様の護衛任務。
それが今日の男の仕事であるが。

「……帰りてぇ……」

男はこの場所に来てからずっとこんな感じであった。
なにせ依頼人であり護衛対象の貴族様ときたら。
男に対して無茶振り暴言当たりまえ。
勝手にうろつくわ、不用意に女性客に近づくわ。正直面倒この上ない訳で。
ましてやその実態たるや悪どい方法で金儲けして平民を苦しめているような相手だ。
金払いが良くなければ死んでも受けたくない仕事というのが今回の仕事の率直な感想なのだが……。

「……ん?」

一応仕事は仕事。周囲への警戒を行っていた男であるが。
依頼人と同じプールに入ってきた少女を見れば、目を細める。
ちり、と頭の奥に感じる違和感。冒険者の勘が、何かを訴えている。
男はゆっくりとプールに入り、護衛対象と少女の位置を確認しつつ、少女へと近づいていく。
一応、タダの客を装ってはいるが。荒事に慣れている人間ならばその動きが素人とは違うことに気がつくだろう。

イルザ > リラックスしているように見えて、常に対象者の様子をうかがっていなければならないので楽しくない。
一応‘ナンパ待ちのお嬢様’を演じているつもりだ。
相手が己の年頃の少女を好むことは知っており、後々面倒なことにならないよう、合意の上での関係を求めているはず。
実際に関係を持つ気にはならないが、後日その期待をさせて2人きりになれる機会があれば良い。
その演技が上手かったのか、それとも1人で水と戯れている無防備な状態がそうさせるのか、
他にも声を掛けてくる者がいて、それを躱しつつの時間。

「……………」

ふと、視線を1人の男へ向けた。
相手もまた己を確認しているのなら、その時点で目が合うのだろう。

(「さっき一緒に入ってきた護衛か。警戒されてるなぁ。バレたかな」)

―――――――にこ。白髪の少女は笑顔を向ける。
普段なら絶対にしない行為だが、今は尻軽なお嬢様。
男とあらば愛想良く接し、相手が魅力的であれば共寝に誘う。――と思われる必要がある。
護衛が先に近付いてくるのなら、標的の目にも止まって好都合かもしれない。
己の目的に薄々感付いていようといなかろうと、確証はまだないはず。
距離を置くでもなく、相手が近付いてくるのならその場に立ち止まり。

セイン=ディバン > 警戒対象として接近を試みる相手は、ぱっと見は爛れた関係を望む貴族のお気楽娘、という感じだが。
男はどうしてもその少女が気になっていた。
それはもちろん色気のある話ではなく……。

「……」

近づいている最中、視線がぶつかる。
相手は笑顔だが、男は逆に表情を苦いものにする。
男の冒険者としての勘は、いよいよ危険を訴えている。
なんというか……ナンパ待ちのお嬢さまにしては。
気配が微妙に違うのだ。男を値踏みする高慢さも。
淫欲に塗れた臭いも。自身の肉体を誇る気概も。まったく感じないのである。

(……いや、しかし。ふむ……。
 ちょっとコンタクトしてみますか)

どうしたものか、と考えていた男だが。
そこでにやり、と笑う。よくよく考えれば、クソみたいな依頼人に媚を売る必要も無い。
というか、むしろ痛い目見せてやった方がスカッとする。
依頼失敗など冒険者には珍しくもない。そう考え、男は少女に近づき。

「やぁお嬢さん。お一人?
 ウチのご主人様がキミみたいな美少女と遊びたいって言っててね。
 もしもお暇ならどうかな?」
『この声はキミにしか聞こえない。ちょっと聞きたいんだけどさ。
 キミ、オレの依頼人のあのクソデブオヤジに害なそうっていうお客さん?
 だったら……協力するぜ? もしもオレの勘違いならまぁ、無視してくれていいけど』

シーフとして訓練をつみ身につけたスキルの一つ。『多重発声』を使い。
表面上はナンパの様に声をかけつつ。もう一方では小声で相手に尋ねる男。
信用されるかどうかは不明だが、まずは相手の素性の確認である。

イルザ > 声を掛けられ、口を開こうとしたところに聞こえるもう1つの声。
少女は驚いたようにぱちぱちとまばたきを繰り返した。
驚いたように、というのは、発言の内容についてではない。
相手の能力に驚きました、というような反応に抑え、なにも知らないお嬢様は不安げな顔になる。

「なにかあったの?……怖い」

潜入中、咄嗟のことにも対応する訓練は受けており、逆に相手を警戒するようにビーチボールを強く抱え、1歩後退りした。
当然、目的を同じにする者が現れたとしても、素性をつまびらかにするわけにはいかない。
例え口外しないと約束があっても己の問題では済まず、背後の組織に関わってくるだけに。
初対面であってもなくても、同じ反応を返すしかないのだ。
どちらにしても鋭い者なら悟るだろう。それに関してはなにも言う気がないと。

「私は楽しく過ごさせてくれるカッコイイ人を探してるだけだから……怖いことには巻き込まないで」

(「失敗だな。こうなると私以外が近付くべきだろうな」)

言わずとも、組織の目はどこかにあるはずなので、その手筈が整えられるのだろう。
そうすれば少女は対象者の前に現れることはなくなる。
一気に仕事がなくなった。――――なんだか気が抜ける。
だが、ここを出て人混みに紛れるまで己はロクサンヌという令嬢である。
表情に翳りを見せたまま、少しずつ相手から距離をとろうと。

セイン=ディバン > 受け取り方によってはまるで奇術の如きスキル。
それを相手に向ければ、相手の反応は驚いたような表情。
そしてそこから不安そうな顔になり……。

「……あぁいや。キミがそういうのをお望みじゃないなら引き下がるけどね。
 カッコイイ人、かぁ。ウチのご主人さまはかっこよくはないかもだなぁ。ははは」
『……身分を明かせない? それとも本当に刺客じゃないのかな?
 あるいはオレを疑ってる? いやどれでもいいんだけど。
 もう一度だけ尋ねるよ。もしもキミが刺客なら……。
 オレがあのクソオヤジの周囲の護衛を上手く排除してやる』

冒険者としての経験豊富な男だが、相手の振る舞いや言葉からは、真意が読み取れない。
分かるのは、刺客であろうとなかろうと、この少女はそのことに関して明言をしないだろうということだけ。
もしも刺客なら、卓越した腕とプロ意識の持ち主だな、と思い。
あるいはただの客ならオレはそうとうなマヌケだな、とも思い。

「あ、じゃあさ。ちなみにオレと遊ぶってのはどう?
 歳は確かに中年だけど、それなりにイケてる自信あるんだけど」
『オレのことが信用できないとかそういうことなら、そのまま離れてくれればいい。
 キミが望むならオレは力を貸す。なんなら、命をかけてもいい。
 オレが怪しい動きをしたらサクッとやってくれて構わないぜ?』

多重発声を繰り返しながら、表向きは口説くかのようにおどけ、両手を上げる男。
周囲からは見えないようにウインクをして、相手の反応を窺いつつも……。
なんとそこから男は、多重発声でずらずらと口説き文句を並べると共に。
依頼人への怒りを漏らし始めたのである。
後半はただの愚痴のような感じになったが、どうやら男としては完全にこの少女に力を貸すつもりらしく。
とはいえ、怪しいことこの上ないのも事実だが。
さてさて、少女はどう判断するか。