2023/07/22 のログ
レベリオ > 月明かりに照らされる人気のない路地。
平民地区への近道、として使うものがいない訳でもないが
夜も更け始める時間ともなればそういう者も少ない。
空き家やあばら屋に囲まれた路地は視界も悪く
不心得者に引き摺り込まれて、それきり――なんて危険性も充分ある。

そんな中を、長身の影が歩いている。
貧民街には似つかわしくない仕立ての良い衣服に身を包む。
歩く足取りは、深夜の散策を楽しむようなそれに近いゆるりとしたものだ。
片手には申し訳程度に金属製のランタンを持っている。
けれど、そんなものがなくても存分に夜を見通すことができる。
人の気配のない家々、積み上げられ、崩れそうながらくたの数々。

「今夜は外れ、か――?」

唇が微かに解け、低い声音が零れ落ちる。
独り言。残念そうに、けれどどこか楽しそうに紡ぎ出す。
その唇からは微かに、犬歯というには些か長い白い歯が覗いて見えた。

散策と呼ぶには、いささか物騒な期待を秘めて
狩りと呼ぶには、いささか目的が明確ではない。
何かが起こるかも知れないし、起こらないかも知れない。
これはそういう時間の潰し方だった。

レベリオ > 夜気に混じるのは、真夏に近い濡れたような空気。
その中に、響いていた足音が、ある刹那、まるで幻のように消える。
気配を感じさせるのを止めたせいか――それとも。
答えを知るのは、ただ、路地を人魂のように滑っていくランタンの光だけだった―――…。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からレベリオさんが去りました。