2023/06/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にオウルさんが現れました。
■オウル > 夜空は重たい雲に覆われて、夜風は湿気て肌寒い。
こんな夜は貧民地区でも流石に人通りはなく、歩いているのは少年ただ一人だった。
耳を澄ませば盛ったネコのような声と罵声に怒声に呻き声。
此処は最悪にして最低を越えた王都の負の顔。
そしてそんなところで危うい飴玉を配る自分も最悪だ。
早く平民地区に人並みに生きたいと思って現状を変えられない、数多いる貧民地区の住人の一人だろう。
――冒険者の真似事をしているだけマシって奴かもしれない、が。
「飴玉配れったってさぁ……。
手はずが整ってるんだから学院に撒いて来いって言われてもさぁぁ!」
――愚痴をこぼす。
ギルドの裏の顔から今週の配布ノルマ分の飴玉を皮袋に詰められて押し付けられ、ついでにラジエル学院に入り込んで配って来いと、今面白い事になってるらしいから、その隙にだぞ何て言われてしまい、どうしていいのやらと路地裏の壁に寄りかかり、大きなため息を吐いている。
やったら二度と表に顔を出せない気がするんだ。
堕ちるかしがみつくかの境目なきがするんだ。
どっちでもいい、ってわけにはいかない選択肢。
さてどうするべきだろうか……。
■オウル > これからを決める選択肢になる。
当初の予定通り平民地区で生活基盤を整える。
或いは路地裏生活を続行で貧民地区でのしあがる。
どちらを選ぶにせよお金が掛かるわけで……。
「暫くはこうして稼ぐしかないよな……。
まあうちは払いはいいんだ払いは………。」
ギルドマスターはケチだが報酬に関しては厳しく、信賞必罰って奴だし、裏切り者はデッドオアデッド、その辺さえ守れば貧民地区では比較的マシな人物なのだろう。
直接見たことはないけど。
歩き続ければ路地裏から今や平民地区との境の路地。
この辺りは比較的治安はよいので、少し此処で時間を潰してから平民地区へと行こう。
此処で迷子を捕まえるか、炊き出しする善意の第三者に小遣いをねだるか、さて、さてさて……。
■オウル > 鼻孔をくすぐる湿った香り。
雨の匂いというのか、若しかしたら気のせいかもしれないが。
――スン、と鼻を動かすと、雨の匂いが空気に混じるのを再確認する。
「……平民地区の宿、空いてるかな?」
欠伸をかみ締める。
欠伸の所為で少し涙目になったので、左眼は眼帯があるのでともかく、右眼を指先で擦りながら、本日の宿を求めて歩き出すのだ。
目的は平民地区の安宿。
足取りは重くも軽くも無く、明日のために強く踏み出すのだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からオウルさんが去りました。