2023/01/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にミュゼットさんが現れました。
■ミュゼット > 夕暮れ時の―――
平民地区であれば、夕餉の煙が家々から立ち昇る時間帯
けれど場所が貧民地区となると、そうともいかない。
まだ客商売をしている通りならばともかく、スラムではそのような煮炊きの気配はほとんど見られず。
けれど、今日ばかりはスラムの一角にある古びた教会の前で炊き出しが行われていた。
「順番に並んでください。ちゃんとみなさんに行き渡る量はありますから!」
まだまだ続く長い列に、自らも給仕を務める白いシスター服を身に纏った少女の声が響く。
普段は貴族でさえも、その義務を放り出しておざなりにしている奉仕活動
どうにかその貴族から資金を寄付してもらって、こうして炊き出しを行うことができた。
その代わりと一晩中、肥え太った中年貴族の相手を余儀なくされてしまったけれど。
寒い冬空の下でほっとした表情を浮かべている住民たちの姿を見れば、それだけの意味はあったと思う。
「熱いからお気をつけて。次の方、どうぞ。」
杖をついた老婆に、湯気の立つシチューが入った椀を手渡し。
次に並ぶ相手へと微笑みを向け――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にクレイさんが現れました。
■クレイ >
こんな地区、その上シスターが配るとなれば本来であれば問題が起こる物だろう。例えば食事を奪い取ろうとしたり。
それが起きない理由は教会の騎士もあるかもしれないが。この男の存在もあるだろう。
教会に雇われたか貴族に雇われたか。それはこの際重要じゃない。
「……」
貧民地区ではそれなりに有名な傭兵であるこの男が今回護衛の1人として狩りだされている。それが重要だ。
流石にこの男の前で暴れようとする輩はいないのだろう。いるかもしれないが即座に鎮圧されている。にらみを利かせて剣をカチャリと鳴らせば大体は黙るから。
そうして配ってるのを見れば。
「アンタ、そろそろ休憩したらどうだ。他のシスターもいるんだろ」
ずっと配ってる様子の彼女にそんな声をかける。
■ミュゼット > 年端も行かない少女とは言え、一応は教会の中でも、一目置かれる立場。
そうなると当然、護衛も付くわけで。
少女自身はそんな大仰なものは必要ないと伝えたのだけれど、教会の威信というのは思いのほか面倒なものらしく。
そんな護衛のひとりから、休憩を促す声を掛けられ。
「ありがとうございます。
でも、一応とはいえ、ここの責任者ですし……」
やんわりとそう断ろうとした矢先に、当の教会の神父からも休憩を取るように懇願される。
少女が休憩しなければ他の者も休憩できないからと諭してくるあたり、年配の説法者らしいもの。
そう言われてしまうと休憩しないわけにはいかず。
「それじゃあ、少し失礼しますね。」
教会前の広場には、炊き出しを受け取った人々が思い思いに散って久しぶりの温かい食事を堪能している姿が見える。
それらを邪魔しないようにと、広場の片隅に投げ捨てられた瓦礫の方へと。
無防備にひとりで行動する少女の姿に、神父はやや慌てたように先程声を掛けた傭兵へと付き添いを依頼し。
■クレイ >
始めはこの男もこの辺りの護衛だし、睨みを利かせないとと思っていたので動かなかったが、神父に言われては良いかとうなずく。自身は今回は依頼を受けた側。逆らう事等できないのだ。
その場は他のメンバーに任せる。そして歩き出した少女を見つけて。
「中々大変だったな。こんなに人が集まってたのは久々に見たわ。いつもこんな事やってんのかあんたたち」
彼女にそんな風に声をかけながらなんて言いながらポケットをゴソゴソと。
取り出すのは小さな包み紙にくるまれたお菓子2つ。
「食うか? まぁ腹の足しにはならないが……甘いし一応活力にはなるぞ」
体を動かすのに必要な栄養を最低限だけ煮詰めたお菓子。飴のような物だが、栄養価は高い。こういう場で堂々を食事はできないだろうなと思って持ち込んだお菓子のひとつだった。
■ミュゼット > さすがにこれだけの量の炊き出しを行うには、朝早くから仕込みが必要になる。
そうでなくても、ここ数日は準備に追われていたために、積まれた瓦礫のひとつに腰を下ろすと、ふぅっと気の抜けたため息を漏らして。
「お勤め、ごくろうさまです。
先程は、お気遣いいただき、ありがとうございました。
これも神父様をはじめ、協力していただいたみなさんのおかげです。」
少し眠そうに、こしこしと瞳を擦っていると、先程声を掛けてくれた傭兵が追いかけてきてくれる。
座ったままでは失礼だろうと立ち上がると、貴族令嬢と言われても遜色ない言葉遣いと振る舞いで頭を下げる。
けれど「いつも」と問われると、年頃の少女らしく僅かに首を傾げ。
「いつもというわけじゃないですよ。
今回は、貴族の方からのご支援があったので……。」
少し困ったような表情は、そのために費やした根回しを思い出したため。
そんな物憂げな表情も、男が取り出した小さな包み紙を見て、一変し。
「い、良いんですか? その、ご自身で食べようと思われてたんじゃ……」
と辞退の言葉を紡ぎつつも、身を乗り出している辺りは、シスターと言えども欲求には正直だという事実を物語っており。