2023/01/06 のログ
サリス > 珍しいぐらいしっかりしたどん詰まり状態に陥った。
人生ってこんなもんですよね、とどこか諦観した考えで目の前の壁を見つめ、人生の壁を乗り越えることも打ち壊すこともする気がない己を再認識という明後日な思考。

通りすがりの同校の上明らか年下の学徒をさらっと利用したぼっち先輩は、彼のことを心の中で不幸中の幸いと位置付けた。

まるっと誤解していた自分に彼が魔法による索敵を行ったことを説明すれば、

「……バル君魔法科ですか? さすがに学年が大分違うので一緒になることありませんでしたよね……。何を隠そう私も魔法科ではあります。絶賛落ちこぼれですが。
 サリちゃん先輩ってサリス先輩より大分込み入ってますよね。バル君がいいならいいんですが。
 わあ、思春期のダイレクトな性欲がネックを擡げまくってますねえ……その貌で言われると違和感半端ないです」

月の子みたいに銀色で幼げな少年の口から駄々洩れする下世話に淡々と零す感想。
ショタは無垢な方がショタっぽいなと独自の結論。

「私金ないです、奢っていただく謂れもございません。返済もしかねます。1の案を却下とします」

シンプル且つ分かり易い理由で少年から提示された案に首を振った。

「………3の案はこの時期の寒空では凍死の危険性すら考えられます。
 命最優先につき、それも下げさせていただきます」

死ぬ。こんな所で一晩過ごすなんて苦行は確実に凍え死ぬ。何のために不審者から逃げて来たのかが分からないのでそれもない。

「私としては愉快且つ個人的にノーリスクな2を推奨したい所存」

自分本位を貫いた結果の返答。
彼にとっての利点はないが、己にとっては単純に面白そう。お空素敵。どう考えても一番推したい。
じいっと据えられる彼の眼を真っ向から見返しながら、ひとかけらの悪びれもなく答えれば。

眼鏡の奥の彼の小さな望月のような眸を覗き。

「サリス先輩をお宿に連れ込みたいのは重々お察しですよ。
 青少年の当然で丸出しな我欲はお察しですけど、サッちゃんどちらかというと飛んでみたい。真の意味で飛んでみたい。
 バル君、ユーキャンフライで」

彼が月に惑って幻想を感じてくれているのを片っ端からぶち壊しそうな風情のない、それこそ我欲に塗れた発言を撒き散らして、サっちゃんとお空を目指しませんか、と真顔でプッシュ。

バルゴラ > こいつ一度本気でデコピンしてやろうか?
それともチョップがいいですか?と思わなくも無い、たぶん。
結構、だいぶ、かなり好き放題言われているが、半分くらい?寧ろ大半、ああもう……。

一つ深呼吸を。
深く吸って冷たい空気を肺に溜め込んで、再び白い湯気混じりの吐息をふーっと吐き出す。

それから両手をパンっと合わせる。
仕切り直しするつもりであるが、たぶんサリちゃん先輩には効かぬだろうな、と思いつつも、此処は一つ、笑顔を浮かべながら答えるとしよう、まずはサリちゃん先輩の淡々とした感想への返答である。

「……一緒になってたらこんなインパクトのある先輩は絶対に忘れていないなぁ……。うん、魔法であれば幾分か得意であるので、教えますけどもー?あとサリちゃん先輩はどうみてもサリス先輩じゃなくて、サリちゃん先輩って感じなので、それと、性欲なんかじゃねー起伏の無いサリちゃん先輩じゃ興奮しませんー……たぶん。」

一息で、為るべく口角泡を飛ばさずに一息で。
下世話なつもりではないと、最後はちょっと自信なかったが、ここら辺で自分が知る限り安全な場所が其処しか知らないだけなので、利用?一度だけ、こう、今に近しい状況のときにだ。

「…ほんと、本当に下心はなきにしも非ず、と思うんだけど、サリちゃん先輩は……くっ、殺せ……。」

肯定も否定も出来ない。
耳の先が少し、頬も少し赤いのはきっと寒さの所為だろう。
ともかく、思春期でナニが悪いのだ?とは言わないが、それを隠すのもなんだか気まずいと一方的に感じてしまうので、本音を交えて、ごまかしを交えて、最後は交えるどころか誤魔化した後に――…サリちゃん先輩のリクエストにお答えしよう。

「……サリちゃん先輩とお空の旅と洒落込みましょうか、もー……。」

これがきっと答え。
けれども一応、本当に一応、念と釘を打つことにする。
ああやっぱりこういうところだ、こちらのリスクなんてサリちゃん先輩にとってはきっと考えていない、自分の好奇心、希望が優先で、嫌われる要因なんだろうなーと。

――…でも、なんだか悪くない。
それなら応えられるなら応えるのもまた良いのでは?と、自分に向けて、小さく笑ってから眼鏡のレンズ越しにサリちゃん先輩らしい何もかもぶち壊してくれる言葉を紡ぐ唇に視線をチラと向けから、そんなサリちゃんの我欲を快く受け入れた後に、隠蔽の魔力の解放を。

至極簡単。
解放すると念じるだけ。
それだけで真顔のサリちゃん先輩の視線の先で魔族としての姿を見せることになる。

背中には今は蝙蝠の大きな翼が着衣と透過して大きく広がり、瞳もまた瞳孔が縦に長く細くなる、そして額には右側が根元から折れて、サファイアに似た輝きと光沢を持つ断面を見せながら、一対の捩れた角が生えてくる。

それでも最低限の隠蔽を。
此処で追われて追い出されて学院退学は笑えないので。

「……というわけで、実は魔族なんですけども。これ絶対に内緒だから?わかるサリちゃん先輩、内緒ですよ??バラしたら末代までのろいますよOK?」

と、月輝く夜空の旅へと誘うべく、右手をそっとサリス先輩に差し出して、捕まって欲しいと。

当然ながら、夜空への旅はお姫様抱っこの予定である。

サリス > 別に悪口を言っているつもりは微塵もない。
ただ、思うがままに言葉を紡ぐと――結果事故る、という哀しい惨状。

しかし、遠慮会釈はないのはお互い様、くらいは思っている。

深い呼吸で白く凍った吐息を纏う少年をぼーっと何も考えていない貌で眺めていると、不意に叩き合わされた掌。
乾いた音を間近で立てられて、茫洋とした表情は一度まばたきを見せた。

「一緒になっても私なんかとはきっと話すこともないでしょうからお忘れになっても不思議ではないですけどね。
 おお。毒素を孕んだ感じのご返答がやってきました。これは面白くなってきよりました。毒々しい系ショタですか。いいジャンルだと思います。サリちゃん先輩感心。
 そうですか。学院の男子は8割はやりたい盛りだと個人的な見解を有していましたもので、これはまた失敬です」

ちっとも失敬さが感じられない、淡々とした調子での謝罪(…謝罪?)。
彼の物言いにがんがん遠慮がなくなってくれば、そっちのがやり易いとでも言いたげに持ち上げた。

「なんですか、何故に急なくっころきた? サッちゃん分かりません」

耳先が赤い、紅潮も見える。そんな様子は年相応に可愛い少年に見える。
弟にしたい下級生ランキング上位に食い込める素養を多分に感じた。
可愛いですねえ、と、もー ゆうてる声に内心ほのぼのし始めていた。

「バル君話が分かる子。そういうところ非常にいいと思います。素敵な取柄」

とかく、素直に賞賛を投げるのだ。
己の希望をなんだかんだと受容してくれるのだから、それはもうありがたく思うしかない。
小さな体で懐の大きな少年にがっつり甘えておく。
今からお空をフライ出来るのだ。傍目には分からないが超嬉しい。
無表情な中で眸だけはしっかりキラキラしていた。

――そして、魔術で遮蔽されていた彼の真の姿が露わになれば。
容姿はそのままであるが付随する角や翼が、まるで一瞬前の少年とは別の存在のように見せていて、さすがに目を瞠る。

「バル君……こっちのがかっけえですよ。私は好きですねえ。魔族さんですか。めっちゃそんな感じですよね。
 ……ああ、はいはい、内緒ですね。誓って秘密にしましょう。――人に言ってしまうのは勿体ないですし……そもそも聞いてくれる人などおりません……ぼっちということが稀には役立つということでしょうか」

役立つ、と称していいのか我ながら疑問だが。
「ねえねえ知ってる!バルゴラ君てさあ」とか、広められるような友達とかいない。いて欲しかったものだが綺麗に皆無だ。そこは彼が安心できる大きな点と言えそうで。

手を差し伸べてくれる正体を顕現させた魔族少年は、月の浮かぶ冴えた夜空を背景に、まるで夜の使徒のように映って僅かに眩し気に目を細めた。

その手を取ると、引き返せない場所に行っても可怪しくないようにすら感じながらも手を伸ばして捕まった。

――しかし、横抱きに抱えられるには己より小さい相手であると違和感、と俯瞰的視座を持たざるを得ない……誓って文句の類ではないが。

バルゴラ > ため息も出るし、怒りもするし、笑いもする。
普段は貴族あれと行動しているし、学院では真面目……ではないが好き放題しているけども、あまり表情をころころと変えたりはしない、何と言うかサリちゃん先輩がこうであるから、自分もこうであっていい……違うな、端的に言えば遠慮なく言葉を交わせる事が酷く楽なのだ。

月が眩い夜の中、空を飛ぶのだってきっとサリちゃん先輩とならそこそこ悪くないだろう。

でも、ちゃんとひとつひとつ訂正をさせてもらうのが先。
何度目になるか、また静かに冷たい空気を肺に閉じ込めて、白いと息をはーっと吐き出す。

魔族の姿をさらしてもやる事は変わらずため息も同じ。
好き放題、うん、好き放題な上に失礼なのを失礼とも思わないサリちゃん先輩の鼻先を指先でつつこう、と思ったがまだ今宵であったばかりの相手に失礼かと、指先を途中まで伸ばしておきながら引っ込めつつ、一度大きく蝙蝠の翼を羽ばたかせて調子の確認を、それから改めて訂正の言葉である。

「……絶対無理、こんな先輩を忘れるとか自分が魔族だと忘れるのと同じくくらい無理だから、無理無理。あーっともう、ジャンルとか、アレだもうアレ!……ほら素的なとりえとか褒めても急上昇と急落下しかでないからね?」

さてさて、空を飛ぼうか。
大きく高く折角銀月が綺麗な夜なのでゆっくりゆっくりと飛ぼうか、反論出来たことですし?

さて、空へ大空へ――…と思ったのだが。
サリちゃん先輩少し不満げでは??
お姫様抱っこ失敗?ねぇ、失礼な事考えてない?

と、お姫様抱っこをしようとしてから、止めた止め。

サリちゃん先輩には自分で飛んで貰おうと、結局サリちゃん先輩をお姫様抱っこすることなく、手を繋いだまま空へと踏み出せば、手を繋いでいる間はサリス先輩に飛行の魔法の力を伝達し、サリス先輩が常識の範囲内に加えて手を繋いでいる間だけ、ふわりと身体は浮いて人影二つ空へゆっくりと舞うだろう。

「……ほら行きますよサリちゃん先輩。ほらー褒めたって何もでないし、今度ランチ奢って、後は魔法の練習の手伝いをするくらいだからね?」

異性にかっこいいとか言われたり、そういう意味でなくても好きと言われたら全力で照れる、ので頬も耳先も今度はハッキリ熱を持つのを自覚しながらプィっとそっぽを向くと、夜空へ、サリちゃん先輩が望めば月までも……は無理だけど高く為るべく高く空と舞うだろう。

あと褒められたから食事を奢るとか、魔法の練習の手伝いをするわけじゃないからな!下心があるんだからなと、言い訳しつつ、拒まねば何処までも何処まで、夜空の散歩を愉しんだ後に、一先ず学院へとサリス先輩を送り届ける……事になるのか、寄り道をする事になるのか、それは手を繋いだ先のサリス先輩のご希望によりけりであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からバルゴラさんが去りました。
サリス > 自分より小さな少年に担ぎ上げられて夜空を舞う、というちょっとした違和感な光景は――実現しなかった。

代わりにその小さい手を取ってキンと冷えた冬空へと舞い上がると、月や星は一層はっきりと眸に飛びこんできて。

浮遊の魔法を覚えたいと思っていたところ、それは非常に良い後学となったのだった。

ツン(デレをつけるのは失礼なので自粛)系ショタ、と彼にさらなるレッテルを貼り付けつつ、夜間飛行からの送り先は両親と暮らす自宅の方角へとお願いして。
無事に送り届けてもらうと、彼が再び隠蔽の術を施したなら両親へと事情を話して篤く礼を言う事だろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からサリスさんが去りました。