2023/01/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にサリスさんが現れました。
サリス > 真冬の路地は王都中どこも凍てついているに違いないが――この一帯は、何故か余計に寒々と空気が鋭いように感じる。

身体の芯まで冷え切ってしまいそうで、自然早まる脚。
それは寒さの為だけではなく。

「…………」

後ろから尾けられているような。そんな気配を覚えて一層速足に。
最初は気のせいかと思っていたが、試しに歩調を緩めたり、または早めたりと変更してみても一定距離を保って後ろにいるようで。

冴え冴えとした睦月の空に浮かぶ月輪に淡く照らされて二つの影が荒んだ地区の路上に落ちていた。

こんな場所なのだから日々何軒も暴行事件は起きてはいるが。
季節柄屋外での犯行はぐっと減るのが常態ではある。
故にただ方向が同じなだけといった、何かの間違いか、尾け回して面白がっているだけの稀有な迷惑人であれば良いのだが。

内心でそう願いながら、とにかく面倒な事態になっては最悪、と出来る限り急いでその人通りの少ない路地を抜けようと小走りになり。

「こういう時、やたら距離が長く感じますね……」

――思わず独り言ちたその時……、

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にバルゴラさんが現れました。
バルゴラ > ――その時、偶然に見知った制服の姿の女子が眼鏡のレンズ越しに灰銀色の瞳に飛び込んでくるし、見て判りやすい程の貧民地区の住人だろうか、良からぬ輩が顔見知りかもしれないその女子生徒にナイフ片手に声をかけようとしている。

此処は王都マグメールでも治安の悪い貧民地区。
今日は『ある本』を求めて貧民地区の闇市とか露店の方を覗きに来たのだが、そんな奥の奥に足を踏み入れる前に何とも言いがたい出来事に遭遇、或いはエンカウントしてしまった。

普段なら相手が誰であれ見知った顔でもなければ、余計なトラブルや何やかんやを避けて通るのだが、今まさに良からぬ輩に声をかけられそうな人影が暗い路地で見知った顔かわからないとしても、その着ている衣服ともっている鞄が間違いなく自分も通っているラジエル学院の学生服で、万が一、若しかしたら、或いはと考えると無視するのも聊か寝目覚めが悪いと思い、スラックスのポケットに入れた護身用の水晶板に指を滑らせながら――…どうにでもなぁれ、と声をかける事にした。

最悪の最悪は正体を明かして良からぬ輩を追い払おうか、できればそれは無しの方向で行きたくて、知り合いに声をかける同じ学生のつもりで、一度咳払いをした後に……。

「……おや?クラスメイトで友人の……えっと、名前が思い出せないな、誰だったっけ、……まあ、僕のお友達、こんな所で迷子かな?それとも、今夜は僕と待ち合わせしていたっけ?」

抑揚の無い声は怪しさがあふれるか。

本当に大根役者もいいところ。
自分でも何で棒読みなんだろうか?
これ、相手にスルーされたら恥ずかしくないか?
と色々脳裏に駆け巡るものがあるが、良からぬ輩が声をかける前に、小走りに女子生徒にかけよると、背後から隣にひょいっと隣に姿を見せ、その女子生徒の顔を見上げてから、小首を傾げて見せた。

サリス > 背後からの不穏な気配が、一層、濃厚になったような気がした。
追跡者の構えるナイフが月光に閃くのが見えた、訳でもないが僅かな反射に無意識に気づいたのか。
不審者を確認しようと思わず振り返ろうとしたその時。

月明りではなく、刃でもない銀色が目の端に煌めいた。

「――………、」

背後の不審者よりも先に視界に飛びこむ小柄な少年。黒い影のような黒衣の不審者よりもよほどはっきりと目についた。
その少年特有な高めの声は、どうやら己に向かって話しかけているようだが。

「………私に友達などいません。正真正銘完全無欠、ぼっちの中のぼっちですから。なんなら苛めの常連です。
 ……お人違いではないでしょうか」

不審者に尾行されているのだから、明らかに芝居がかった少年の助け舟に気づいて話しを合わせるくらいの機転を利かせればどうだ、と第三者がいれば言いたくなるほど欠片も芝居に乗らず。率直に彼の言葉を否定した。

そして、

「ですが、どうやら同じ学院の眼鏡っ子ショタさん。
 ――どこのどなたかは存じませんが、同校のよしみでご一緒しましょう。
 今夜は私、一人でいたくないのですよ」

主に不審者が刃物片手につきまとっているからだが。
少年の他に暗がりに紛れて様子を窺っている存在に気づいてか。
彼の返答を聞かない内に、ぐいっと手を伸ばしその腕をつかんで行こうとしながら。

バルゴラ > 友達などいない、ボッチの中のボッチ、苛めの常連、友達などいない、と女子生徒の言葉を耳にした時は、アッこれは自分の善意が滑ったかな?と心の中で少しだけ泣きかけた。

もしそのままで終わるなら、懐から水晶板を取り出して乱暴では有るが正当防衛と喜んで、危いものを振り回しかねない輩を制御しにくい今の現状の身体で何処まで制御出来るか、いざ、いざ!と思ったけども……だ。

幸か不幸か…幸でもあり不幸でもあるか、でも女子生徒と知り合えた事は幸福なのは間違いないが、輩を実験体に出来ないのは不幸でも……いや幸福だろう、偽善でも善であれたから、それがノブレス・オブリー……。

と、否定されたにも関わらず女子生徒の言葉の続きは話をあわせなくとも、願っても無い展開であって、小首を戻しながら慌てて言葉を返す事にする。

「……うーん、間違いではないけど、眼鏡っ子ショタとはあまりにあまりじゃないか?これでも僕はバルゴラ・ゼディアッ……っと……ちょっと……。」

ただその言葉は最後まで言えなかった。
なら今夜は寝かせないよ?くらいの貴族的な冗談を言うつもりであったが、件の女子生徒に行き成り腕をつかまれ、自分の足で歩き出す前に、先に女子生徒が歩くものだから、言葉途中で少々驚きの表情と共に彼女の進む方向について行く事に。

――…何処へ行くのやら。
少なくとも比較的でも安全なところだろうか。
つかまれるがままに女子生徒についていく、ついていく。
なんせ輩を排除できたわけではなく、不穏な空気はまだ残っているし、此処は貧民地区、立ち止まっていても良い事はないのだから。

サリス > 同じ学院、という理由だけで危うきから救ってくれようとしたらしい少年の善意は伝わったのか。
伝わっても話を合わせる器用さは持ち合わせていなかったので小細工なしに正直に返答した。

まさか、話に乗らなかったにも拘わらず、まだ助勢をしてくれる気だったとまでは想像に及ばなかったのだが。

「どこからどう見ても眼鏡でショタな男子ではありませんか。鏡をご覧になってご確認ください。
 バルゴラ……バル君ですね。私はサリスです。サリス先輩とお呼びいただくとあなたへの好感度が面白いように上昇しますのでご一考ください」

下級生に先輩と呼ばれるのを何よりも好むという、拗らせ系ぼっち。
抵抗されないのであれば掴んだその細腕を引っ張りながら少々強引なまでに脚を速めて不審者を振り切るべくその場から辞そう。

「………撒きましたかね………」

不審者がイレギュラーな存在が入ったことで追跡しかねている内にさっさと立ち去ったため、それ以上背後についている気配はなく。
特に当てもなく、ただ逃げやすい道を場当たり的に選んでやがては。見知らぬ袋小路に出た。

「………勢いで取り敢えず振り切れたのはいいものの……バル君、ここ、どこでしょうね?」

訊きたいのは多分彼の方だろうが。
小路で行き止まって、己よりいくらか下にある彼の目線を見やりながら首を傾げた。
――一難去ってまた一難か。立ち竦むことになった二人の頭上で磨き抜かれたような銀月だけが静かに見守るのである。

バルゴラ > 腕をつかまれたまま引っ張られ続ける。
抵抗しない、寧ろついていくついていく。
善意が僅かでも伝わっていると信じて……は心配しすぎか。

少なくとも助けようとした善意は伝わっている、と思いたい。
しかし友達なしか、ボッチか、イジメは良くないと思うが、基本自分もやる側の人間であるので、言わぬが花だろう。
ただ相手を選ぶからね?基本自分より上下に近しいもの以外は苛めないし、殴らないし、寝首もかかない……と、それよりも。

「……でもね?だからね?自分にはバルゴラ・ゼディアックって……、いや、もうバル君でいいですよサリちゃん先輩?あっサリス先輩にして高感度ぐーんとあげると、後で二人っきりでご褒美とかありですかねサリス先輩。」

面白いように上昇させた場合のメリットはあるのだろうか。
有ろうが無かろうが、サリス先輩或いはサリちゃん先輩と呼んでやろう、こっちはバル君だからな、初めてそんな風に呼ばれたわ。

うん、とこれも、それどころじゃなくて。
サリス先輩或いはサリちゃん先輩の言葉に一先ず、自分の眉間に人差し指を寄せて、少し周囲に悪意がないか確認し、狭い範囲で逃げ切れない範囲で調べて終われば、軽く頷くのだった。

「……大丈夫ですよサリちゃん先輩。おっとサリス先輩。辺りは一応敵意みたいなものは……って、もう、絶対サリちゃん先輩って呼ぶわ……此処、どこか判らずに逃げたんですか?マジで?」

はい、訊きたいのは此方です。
此処はどこ?いやサリス先輩が手を引いてくれたから、サリス先輩が知っている安全な場所に移動したと思っていたから、少しだけほっとしたのに、何と此処はどこか判らない。

これ、先ほどの輩来たらまずくない?
と思ったが、小首を傾げるサリス先輩を見ていると、情けない顔をしたらずるずる更に難が襲ってきそうな気がして、誤魔化すように夜空を見上げ、冷たい輝きを放つ銀月に向けてため息を吐く…どうぜんそれは湯気のように白く、ふわりとのぼって夜空に消えるのだが。

「……あー…この難を脱する方法が3つほどあるか聞きますか?」

さて、目下の難題攻略である。
ため息を吐き終われば改めて視線を戻し、小首を傾げるサリス先輩の足元からその顔までじーっと灰銀色の瞳で見つめなおして月の輝きの下でサリス先輩の姿を確認し直してから尋ねる、攻略方法があるのだ。

それを聞くか否か、尋ねる。
どれもろくでもないけれどだ。

サリス > 当て所もなく、初めて出会った少年をぐんぐんと引っ張って結構な競歩で進んで行く。
とにかく奴を撒かなくては。一時頭にはそれしかない。
それに彼を付き合わせている理由は、主に自分の為だ。彼の善意に乗っかり窮地を脱しやすくするが為。

遺憾ながら虐げられる側の人間だが、そういう利己的な性分がまた、同級生の不興を買っているのかも知れない。

「聞いてますよ、何回も仰らずとも分かってます。バルゴラのバル君。
 非常に恐縮ながら、ビタ一文だしませんが、先輩呼ばわりは私のテンションが上がるのでお勧めしておきます」

どんだけハイテンションになったところで表面的な感情の機微は薄く。周囲はそれを全く察せないインナー過ぎるハイテンションではあるが。

袋小路までこの初見の少年を付き合わせて、どん詰まりになるという、惨状。
不幸中の幸いは行き止まりになっている為、そこを訪れる者はおらず、差し当たった危険性はないというところか。

眉間に人差し指を当てている彼が何をしているのか理解は及ばなかったが、その所作と敵意はないと続くその言葉は、そのお年頃特有の病でも患っているように感じて。
アレな子ですかねえ……と失敬なことを想念していた。

「サリちゃん先輩って呼ばれかたもなかなかぐっと来ますね……採用。
 ええ。地区のどの辺りなのかまったくもって存じ上げません。そんな私の所業、謝ってほしいですか?」

謝罪を求めるかと問う態度に問題を感じるぼっち。ぼっち
たる所以が判りそうである。
月光を浴びて月を仰ぎながら凍った溜息をつく彼の周囲が一瞬吐息のせいで白くけぶる。
お月様の子供みたいだ、と朧に感じながら銀色の少年を眺め。

「伺いましょう。勿体ぶったからには、さあ張り切ってどうぞ」

3つあるが聞くか、などと前置きした少年へとハードルを上げておく。
促す挙措で掌を差し伸べ、己の上から下まで凝視する視線に動じることなくこちらもまた、じ、と静かに視座を置いて。

バルゴラ > ――…見紛う事なき行き止まり。
進むには壁でも乗り越えて、戻るには輩が待ち伏せて居そうな路地へ、選択肢としてはどちらも有り得ない。

善意にのられる気持ちは悪くない。
貴族としての役目云々もあるが、見知った制服姿を捨て置く事は出来ない性分でもあり、逃げ切れた?事に改めてほっとしているが、何だろうか、サリス先輩から感じるものは。

不愉快ではないが何か利用されてる?感?良くわからない。
サリス先輩とは知り合ったばかりもいいところである。
まあ良しとにかく良し、細かいことは気にしない。
善意とは利用されて何ぼ、利用できるだけの力を持ってなければ、利用されないだろうし。

さて、気を取り直して、言葉とは裏腹に感情の機微が読み難い、けど、こんな楽しくなるテンションで話を続けてくれる、この現状の主犯であるサリス先輩が聞いてくれる解決案を指折り語ろうか。

でもまずは……。

「……ただの格好つけじゃなくて、魔力による周囲の敵意探知です。あと、サリス先輩……採用されたからこっちでいいか、サリちゃん先輩に謝って欲しくないですよ?謝って貰ったら善意の意味がないじゃないですか……謝るくらいなら乳を揉ませてもらえると嬉しいです。」

こちらの問題、ならぬ返答を白い湯気混じりの吐息を吐き出しながら言葉にした後に、ちょっとだけやり取りが楽しくて、クスッと小さく本当に小さく笑った後に本題へと。
あと、後半は冗談半分であるが半分は本気である。

「ひとつはたぶんだけど、近くにある連れ込み宿に避難、明るくなったら比較的安全なので宿で道を聞いて帰る。」

まずはサリちゃん先輩に提案1をした後に人差し指を立てよう。

次は当然中指である。

「次に絶対内緒にして欲しい方法でスリル満点の空のたびをしながら帰還する。これ、内緒にしないと、ヤバイ、僕がヤバイ、ので絶対に内緒にして貰いたい。」

最後に薬指をピンっとたてる。
三つ目の案である。

「……諦めて此処で周囲から見えないように結界を張って野宿する、もう寒さは我慢する、凍えても誰も責任取らないし、取れない……で、サリちゃん先輩どれにします?最初の案が一番安全安心、料金は僕が払いますよ……此処まで来たら一蓮托生ですから。」

と、じぃーっと眼鏡のレンズ越しに灰銀色の瞳でサリちゃん先輩を見上げて小首をかくとかしげる。

まあ、ぼっちたる由縁を発揮し、ああ、サリちゃん先輩のそういうところだぞ、と言うのを感じても尚助ける気持ちは変わらないし、苛める気もない、苛めるならベッドの上がいい、とそれは心の奥に秘めておこう。

あとは――…答えを待つのみ。

その間は視線を逸らさない。

月の輝きに照らされたミディアムの灰青髪は綺麗だし、紫藍の大きな瞳は眠たげな雰囲気をまといはしているが、それがまた不思議なくらいに吸い込まれそうで、幻想的な……ボッチというのが少し信じられなくなるくらいに、綺麗なサリス先輩を見つめ続けてしまう……。

ただ少し起伏がなだらかなのは、それもそれでサリス先輩の魅力なのかもしれないが、その点を見ると愛らしいとさえ。

――…うーん、何を考えているのか自分。
月に惑わされたか……。