2022/12/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > 安寧の暗がりに満ちている王都マグメールの貧民地区。手入れがされていない、または手入れの仕方すらも良く解っていない住民達が身を置いている廃墟然とした建物ばかりが建ち並ぶ区画。蝋燭どころか爪の先に火を灯して夜を凌がんばかりの貧しさの中では火も一つの贅沢品と言えるだろう。よって何処の家を見ても灯りらしきものは殆どが見受けられない。野生の獣達がそうするように、恐らくは身を寄せ合って夜の寒波をやり過ごしているのだろうと思われる静けさ。
そんな環境下である為に、そこに徘徊する怪物の姿も夜の闇に半ば溶け込むようにして目立たない。唯一頼りの光源となる月明かりを透かした総身は但しながらにげっそりと痩せ衰えてしまっている。骨も肉も存在しないが構成物である粘液体の大半は削げ落ち、被膜部分を残留させた体型は皮ばかりといった塩梅だ。それも全ては性の暴走により夥しい子等を産み落し、そこに蓄積してきた体力を多大に消耗してしまったからに他ならない。
「グル……」
漸く理性を取り戻し、よろよろと徘徊する獣が求めて来たのは、ほんの僅かでも、その摩耗した栄養を取り戻す事だ。今では少し腕利きの衛兵程度でも、相手にしたならば容易く討ち取られてしまうのは想像に難くも無い。胎どころか、腹腔にもろくにモノを入れていない状態から餌を求めて比較的に人気の少ない場所を這い回り、主に廃棄されたゴミを狙って漁り歩いているという事になる。
■ドラゴン・ジーン > しかし、貧民達の食糧事情は余り芳しいとは言えない。食べられるものならば多少腐敗していようとも口にして胃袋を満たし、食料の乏しい冬の時期ならば尚の事に廃棄されるものは乏しい。林檎の皮や食べ残しの骨、どうしようもなく腐りきって捨てざるを得なくなってカビの生えたパン、野良犬でも口もつけないような残飯であるが、それでも不定形生物の消化力ならば取り込み、それらを滋養に変換出来る。
中にはゴミを漁られる騒々しさに眠りを阻害されて怒れる街民たちの罵声と共に石や瓦礫の欠片を投げつけられて追いたてられる事も在った。もしくは残飯漁りの縄張りに陣取っている痩せぎすの浮浪者風情に棒切れで叩かれ払われる事すらも在る。
「ギャウ…ッ…ッ」
本来ならば食物連鎖の上位に立つべき竜種を目指しているのだが、仕方も無い。数々の遺伝子から得た能力も瘦せこけて弱体化している今では揮う気力も殆ど無いからだ。惨めったらしくも記憶に残している方々の家々のゴミ捨て場を順繰りに回り、そこに辛うじて残っている食えるものを見付けていく他に此処から這い上がる術は無い。普段以上に気を張って、頭部から伸び出ている触角は索敵の為に忙しなく、ぶんぶんと冷たい夜の風を切って周囲を見回し続けている。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からドラゴン・ジーンさんが去りました。