2022/10/29 のログ
■アーシャ > 此処最近ずーっと忙しかった所為で身体が鈍って仕方が無い。
忙しかった理由は尋ねれば誰にだって答えるほどに機嫌良く、その機嫌が良い理由と忙しい理由は合わせてひとつで、何と貧民地区に新たな隠れ家を見つけ占有する事が出来たから、である。
場所は貧民地区と平民地区の境に近い普通なら誰かが占有してもおかしくない区画にある元奴隷商人が表向き商売をしていた空き家である。
運が良いことに、寧ろ怪しいくらいに誰も寄らず、自分だけが何故か其処を見つけることが出来き、尚且つその空き家の鍵も拾ってしまったという幸運具合で、普段ならコレ罠じゃないか?と思ってしまうが、とんでもない、空き家の周囲も家の中もちゃんと確認したが罠らしきものは無しなのだ。
鍵もかければ防犯もバッチリ。
何故こんなに都合の良い物件が空いていたのかと思うのだが、それを深く考えると時折発生する物音や勝手に物が動く現象や地下?っぽいところから悲鳴?見たいな音が聞こえてくるのが気になるので、止めておくし、早々に聖職者の人を捕まえてお払いして貰いたい。
「……誰かしら伝手があってもいいよなぁ。」
両腕をぐぐっと伸ばして肩と腕を解しながら、今夜は久しぶりの夜の散歩を楽しむつもりで、貧民地区でも比較的治安の宜しくない路地を歩き、何か面白いものか金目のものがおちてないかと散策している。
耳を澄ませば酔っ払いの罵りあいと、娼婦の姉さん方の黄色い声とちょっと動物の鳴き声のようなあの声、眠気覚ましには調度良い、今はまだ眠くは無いけども。
■アーシャ > 屋根があり、雨風が凌げても人肌恋しさは何ともならない。
娼婦の姉さん方も貧民地区の仲間と言っても安くしてくれるわけでもなく、下手すれば素行の悪さで門前払いも有り得る。
これでも少しは娼館の雑用の雑用を手伝う事もあるし、もう少し手心を加えてくれても良かろうに、と考えたところで、何も解決する事はないし、お金が転がってくる事も無い。
あ、誰か路地裏に迷い込んできたら軽く脅かして遊んでやろうか?それとも弱者的な立場を利用して、と考えながら歩いているとゴンッと鈍い音に続いて強烈な痛みが額に。
「痛ぇぇぇ!!!」
両手で額を押さえて路地でしゃがみ込む。
ぶつかるという心構えも覚悟も無い状態でぶつかった時の痛みはそれはもう耐えがたい。
眼にはじわじわと望まない涙が浮かんでくれば、クギギギと歯を食いしばり涙を堪える、しかし何にぶつかったのか。
壁という感触でもなかったし、ましてや路地に柱はあるまい。
――可能性としては貧民地区だとしても辛うじておこぼれに預かってる魔力動力の外灯だろうか、まさか人……何てことは無いだろう、たぶん。
■アーシャ > 何度か額を手で擦って痛みを飛ばしてから、顔を上げる。
見えたのは夜空の星々と痛みで見えるキラキラしたと魔法を動力とした外灯であって、ぶつかった衝撃か何かで先端の明かりがちかちかと点滅していた。
「……くっそ、何でこんなところに………。」
確か昨日までなかったろこんなところに、とボソボソと愚痴をこぼしても、外灯の点滅は直らないし、額の痛みも消えない。
先程までのいい気分が台無し。
浮かれ気分もすっとんだ。
ハァ……と肩を落としてため息を吐き出すと、額にダメージをくれた外灯を思いっきり蹴ると、ずるりとそのまま外灯に背中を預けて地面に座り込むのだった。
気がつけば夜も更けて、辺りは点滅する外灯以外に動くものもない、後は先程まで聞こえていた酔っ払い同士の罵り合いも娼婦の姉さん方の声もなくなって、心地よい虫の音色くらいしか路地裏には聞こえない、それはそれで悪くないのだが、矢張り人肌恋しく、どうするかなー……と誰に聞かせるでもない独り言を零すのだった。
少年は何度目かのため息を吐き出した後に歩き出す。
新しい隠れ家へと、そこでベッドに飛び込んで眠れば嫌な事は忘れられると…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアーシャさんが去りました。