2022/08/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区『どこかの軒先』」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 「───────」
沈黙を埋めるのは、衣擦れに似た、小さな雨音。
届け物の帰りに降り出した雨に、濡れてゆくか、どこかの軒を借りるかで迷い、後者を選んだ。
なるべく目立たない路地裏の軒先に居場所を求めて。
雫音は、耳に心地よい。
通り雨が止むのを待つ間、こうして自然の奏でる音に耳を傾けているのもよいだろう───。
■マーシュ > そっと手を差し伸べて、空から落ちる雫を掌で受け止める。
体温に溶けるようにわずかにぬるい雨滴が掌を滑り落ち、滴るのを、静かに眺めている。
雨に対して何か感慨があるわけではない。ただ、身動きの取れない時間の潰し方を他に知らないと言いたげな風情。
屋内であればいかようにもすべはあるのだろうけれど、使いの帰り道、となればどこかに立ち寄ることも憚られているあたりは、女の性格が出ていた。
それほど強い振りでもない。
振り切って歩き出してしまえばあきらめがつくのかもしれないけれど、そうするほど急ぎの帰路でもない。
■マーシュ > やがて掌に滴り落ちる雨滴がやめば、薄暗い雲間から光が差し込む。
ほぅ、と安堵めいた溜息を零して手をおろすと、濡れた手のひらを手巾で拭い。
しばしの宿りとしていた軒先を後にするのだった───。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区『どこかの軒先』」からマーシュさんが去りました。