2020/12/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/女郎屋の奥」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/女郎屋の奥」にアイリースさんが現れました。
■ビョルン > とっぷりと更け切った夜の最奥。
温い寝床を抜け出して厠へと立つ。
用を足して使う手水は指先を切り裂くようだった。
濡れ縁を踏んで寝所へ戻りながら、暗みに目が慣れたのか裏庭の景色が漸く目に入るのは部屋へと続く襖を開こうと手を伸ばした頃であった。
「嗚呼、」
寒いと思ったと一人言しかける声もその気温に臆したように喉へ上がる前に消える。
雪明かりというのだろうか。
月光にぼうと浮かぶような積雪。
目を凝らせば時折、はらはらと細かな雪が舞っているのも見える。
襖の引き手に掛けた手を退けて眺める。
■アイリース > 「……」
気配、というものに敏感でなければ。
忍など務まらない。
一緒にいた相手が起き、部屋を出て。
まぁ、どこへ行ったのかはどうでもいいのだけれども。
気配からして、用足しだろうなぁ、と思いつつ。
私も起きれば。
「……うぅ」
ぶるり、と。体が震えてしまう。
寒さ厳しい季節とはいえ、またずいぶんと冷えるな、と。
そう思いながら部屋の外を見れば。
……いつのまにやら、雪が積もっていた。
そこで私は、あることを思いつき。
いそいそと準備を進める。
「たまには。風流なこともしないとね」
準備したのは、暖かい茶。
せっかく美しく雪が積もったのだから。
雪を眺めながら、茶を飲んで。
少し、静けさを楽しむのもいいのではないか。
なんて、そんな思いつき。
■ビョルン > 暫く眺め後、丹前のポッケに手を入れれば燐寸の箱が指へと触れる。
濡れ縁に設置した蝋燭台へと火を点せば、よりはっきりと雪景色が目に映る。
本来ならばそそくさと寝所へと戻るような夜更けではあるが、寒さからか目が冴えてくる。
女はどうしているだろう。
薄く襖を引いて奥を確認すれば、短く言葉をかける。
「雪だ」
先程水を掛けた指先の感覚がなくなりそうだ。
■アイリース > 準備が終わったと同時に。
相手が、部屋へと戻ってくる。
ふ、と。相手のささやきを聞いて振り向き。
「ですね」
と。短く返答する。
そのまま、相手にお茶を差し出し。
「どうぞ、若様。
温まりますよ」
本当は、部屋を暖かくしたほうがいいのだろうけれども。
それでは、少し味気がない。
なので、あえてお茶を準備していたわけなので。
■ビョルン > 部屋では冷え切った手先に湯呑を受け取る。
「痛……」
思わずそんな声が上がるような温度差だ。
そうしてまた、灯りを点してきた縁側へと足が向く、
手を温めながら何か思い出したように振り返り。
「水屋に、頂き物の上品<じょうぼん>がある。
雪見酒に飲みな」
静謐な夜の、雪景色などそう落ち着いて見る機会がない。
再び濡れ縁へ出て、庭を見渡す。
夜明けに道が凍てついていたら、今年はこのまま仕事納めとなるのだろうか。
「其れも困る」
末端であればそれもまた良かったのだが。
■アイリース > 「あら、大丈夫ですか」
相手の漏らした声に、思わず心配しての声が出てしまう。
しかし、そのまま相手が縁側に向かうのであれば。
私もゆっくりとそれに着いていき。
「あら、それはいいですね。
じゃあ、機を見て出しましょうか」
なるほど、雪見酒はいいなぁ、と思いつつ。
相手の隣で、庭を見る。
……こういった風景を、この国で楽しめるのも。
また、貴重なひと時と言えるかもしれない。
「何が困るんですか?」
相手の口から漏れる言葉にいちいち反応してしまうのは。
なんでしょうか。惚れた弱みか?
■ビョルン > 冷えていた弓手で湯呑を持ち、馬手は寝衣の懐へ差し入れて冷えを防ぐ。
「俺は酒はわからんから、好きにしたらいい」
寒椿を植えた一角は特に雪に映える。
そこへと視線を向けながら、問いかける声に返し
「──いや、石畳の道が凍ったら仕事納めの幹部会に行くのに大きく迂回しなければいけなくなる」と。
こくり、と湯呑の茶を飲む。
胃の腑へゆっくり落ちるような温かさを感じればふう、と長く息をついて。
「沁みるね」
■アイリース > 「あ、そうでしたね。
まぁ、頃合を見て、ですね」
寒さを感じながら、そう静かに囁く。
この雰囲気は、嫌いではない。
「……あぁ、そういうことですか。
それはまぁ、確かに」
相手の言葉に、頷く。
確かに。凍った石畳の道というのは、なかなかに面倒だ。
「そうでしょう。
……ん。おいしい」
私も、自身の入れたお茶を味わう。
うん。いい温度。体の奥底から温まる。
■ビョルン > 晩酌の相手はまたそのうちいずれ。
おおかたの王都の男がそうしているように、己もいつかは飲むようになるだろう。
だがその実感はない、とすればまだ先だ。
子供の頃から酒を嗜む人間こそ稀有であろうから、まだ好んで飲まぬことを恥じる心理はなかった。
「わざわざ馬を出して裏道から裏道へってのも面倒で」
後の眠気を妨げぬと聞く、香ばしく焙じた茶葉のようだった、
「次の雪も、一緒に見るんだろうか」
ふつと、そんな言葉が口をついて出る。
■アイリース > 相手と一緒に、ジャマの入らない場所で静かに飲みたい。
それはまぁ、いずれ、ということで。
「そうですねぇ。
……かんじきでもあればいいのかもしれませんが」
すべるのが問題なら、滑らない具足を用意すればいいのだが。
こっちでは、かんじきの入手は難しいだろう。
「……そう。
ありたいですね」
相手の呟きに関しては。
素直にそう返事をしてしまう。
……なんというか。絆されてるなぁ、っていうのが自覚してしまう。
頬が熱く感じるのは、お茶のせいだけではないだろう。
■ビョルン > 「……カンジキ」
また東の国か、または忍びの道の道具だろうと思うが追及は避けた。
半端に溶けた雪が乾かぬうちにまた固く凍結するのは、雪が降り積んでいるよりも厄介に思える。
「───うん、」
今年一番に小さな声で頷いた。
照れ隠しにお茶を飲んで大袈裟に吐息をするがそろそろそれも冷めかける頃合いであり。
「年が明ければ19歳、なんだそうだ俺は。
拾われっ子で、名前は辛うじて彫ってあったが誕生日がわからないそうで」
寝支度のままの格好で、今度は足が冷えてきた。
両足で交互に己の足を踏んで擦る。
■アイリース > 「はい。かんじき。
こぅ……こぅ……」
やはり、こっちの国では馴染みがない道具だろうか。
私は、ちょっと身振りで説明しようとするのだが……。
実際、説明しようとすると難しい。
「……」
ちびちびとお茶を飲んでいると。
どこか、心が和んでしまう。
「……そうですか。
あぁ、そういえば。私の誕生日って……」
相手の身の上に関しては、軽く聞いていたので。
それに関しては、ふむ、と頷くが。
私自身の誕生日について考える。
さて、いつだったっけ?
■ビョルン > 「ふむ」
まあなんだかそういった名前の冬の装具があるという程度の理解に留めた。
空気は冷えているが嫌ではない。
懐に入れる手を取り換えながら相手の話を聞いている。
「俺が初めてお前に触れた日だ。
そうだろう──」
誕生日を思い出しているような言葉の隙間に。
すいと己の我を差し込む。
桔梗咲くようではや暑いような初夏の日を思い返す。
■アイリース > 「あれ、でもあれは氷上というよりは。
雪上を歩く道具だったかな……」
あれ、と首を傾げながら思い出す。
どうだったかなぁ……。
「……言い方。
でもまぁ、そうですね……」
それでいいか、と思わなくもない。
ぶっちゃけると、忍の里にいた頃は、そういうのを気にしなかったわけなので。
じゃあ、思い出の日を誕生日にするのが、逆にいいかもしれない。
■ビョルン > 己の所属に於いては、生まれのはっきりしない者も多い。
故に同じく年明けで年齢のカウントが増す男は少なくなかった。
「いいじゃないか、生まれた日のことを自分で覚えている訳でもなしに」
極稀には生まれた記憶が在る人間も居るらしいが。数字にすれば誤差にも満たぬだろう。
「──俺も書き改めることが出来んなら、5月にしよっかな」
口元僅かににょりと笑って視線を向ければどんな反応見せるんだろう。
そう考えれば一瞬ながらに笑みは深くなり。
■アイリース > 「それはまぁそうですけどね」
私自身は、里で生まれて物心ついたら修行の毎日だったのだが。
まぁ、里の大人たちは、基本的に『誕生日』なんてものに関しては頓着しない。
それこそ、修行の区切りのために年齢を気にするくらいのもので。
「……それって、ありなんですか?
まぁでも。誕生日が近いなら。
お互い、忘れなくていいですね」
む? と首を傾げてしまうが。
相手のことだ。なにか考えているのだろう、と思いつつ。
相手に、素知らぬ様子で笑顔を返そう。
■ビョルン > 「俺は産みの親もきっと居ない、
だから正しい誕生日の値打ちなんてきっとないから」
初等学校に通うような子供でもなければ見た目で年齢の見分けもつかぬ。
成人すれば尚のこと、見た目でも言動でも全てが年齢相応というサンプルは存在しない。
「何ぞ、公式な誓いの文書でも作成する日が来るならその時にでもいっそ改めても構わんかなと」
そう言って湯呑に残った茶を啜り。
こほん、と乾いた空咳が出た。
「また、寝るか。冷えてきた」
懐から出した手で相手の頬っぺた摘まみかけるが、ふと向きを変えて頭を撫でた。
いつぞや竹光で叩いた詫び、である。
■アイリース > 「値打ち、ですか。
難しい話ですね」
値打ち、なんて話になると。
そもそも、誕生日の値打ちとはなんぞや? となる。
でも、私だって似たようなものだし……。
「あぁ、そうですね。
年齢が増えていけば、そういう書類を作る機会も増えますしね」
う~ん、と。考え込んでしまう。
私も、その辺はおいおい考えていかないといけないのかもしれない。
「……そうですね。
では、寄り添って寝ましょう」
寒いですからね、と。
私は笑いつつ、相手の手の暖かさ、優しさに目を細める。
そうして、私は相手の手を引いて。
布団へと、ゆっくりと入るのであった。
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