2020/12/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > ――まずい、と思った時にはもう遅かったのだ―――
「ぅっ…! く、あ゛……ん゛ッ」
周りを数人に取り囲まれ、退路を断たれ、四方八方から強かに打ちのめされ路上に転がり落ちるように倒れ込みながら、亀の子のように身を丸くして腹部を守るしか成す術がすでになくなってしまった女は痛みに喘いでいた。
薄暗い袋小路、街の灯すらここでは暗く明滅した貧民地区の裏通り。道の隅には空き瓶や木箱や壊れた雑貨などガラクタが転がりそこに闇が溜まっている。
ゴミと闇に紛れて眠っている浮浪者が夜を越せずに凍え死んでしまう季節がひたひたとやってきた頃合いに、路地に足を踏み入れてしまったヒーラーが遭ったのは数人のローグ風情の一応は冒険者と職のついた女たち。
こういう手合いにこんな所で出くわすと大体碌なことがない――
見た目だけで云えば絶好のカモと映る小柄な部類に入る年若い女であるので、裏通りでチンピラ崩れの冒険者なんかに出くわしてしまうと、概ね絡まれる――
今夜も、ここいらで回復屋としての仕事で呼ばれやってきたはいいものの、運悪く〝一仕事〟しようとしていた女ローグの集団に遭遇し、応戦したものの多勢に無勢。
2人は沈められたが残りの3人に後れを取ってしまい、リンチ状態の今に至る――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にラファルさんが現れました。
■ラファル > 「ねえ。なにを、してるの?」
袋小路、五人の後ろから響く小さな、若い声、女ローグさらに、3m程後ろから、声が響く。幼女の声だ。
幼くとも、その声は、静かで透明。不気味なほどに、静まり返った声だった。
ローグが、声に反応して振りむけば、其処には、半裸の幼女が立って居る。
金色の竜眼を持ち、同じ色の髪の毛をツインテールに結んだ幼女が、立っている。
金色の竜眼は、凝っと女ローグたち、を見つめている。倒れている女性を、見つめている。
立っている姿に隙はなく、彼女らが逃げようものなら、食いちぎられる、そんな気配を漂わせていた。
この、寒い冬で胸を隠すだけのベルト、短パンだけと言う、裸に近い格好なのに、だ。
「ねえ、なにを、しているの?」
もう一度、同じ問いかけ。静かで、透明な声、しかし、だ。
盗賊たちは、動けなくなる、恐怖と言う二文字で、縛られて動けなくなる。魔眼とか邪眼とか、そういった類ではなく。
圧倒的な幼女の気配に、立ちすくむことになる、竜は、その威を持って、圧をローグたちに掛けるのだ。
竜の本気の威圧を受けてしまえば、彼女らは、当然身動きが取れなくなる、逃げようとしても、袋小路、追い詰められているのは、誰なのだろう。
一歩踏みしめれば、空気が止まる。
もう一歩踏みしめれば、空気が歪む。
にっこり笑う幼女は、肉食獣。狩るべき獲物を前に、逃げ出さぬように、檻を作る。
目に見えぬ、空気の壁、それは、大事なお姉ちゃんを守るための、壁でもあり、彼女らが人質をと思うころにはもう。
空気の壁に捉えられ、手が届かぬ場所となる。
一歩、一歩、静かに、ローグに向かい、歩む。
■ティアフェル > 早く、一刻も早く苦痛に塗れて自尊心を打ち砕くこの惨めな長い時間の終わりを願うことしかできずにいたが――
「………え……?」
不意に、蹴り上げられる動きが止まった。それは本当に急に。時を止めたかのように唐突で。
そして、遅れて二度響く少女の声に気づいた。
暴力を揮う、粗末な装備の女たちは動かない。否動けない。
薄暗く埃っぽい袋小路に確かに渦巻く威圧。圧し潰すような圧迫感。
ローグたちは歩み寄って来る彼女から後退ろうと、撤退しようと試みるが碌に動けないし、動けたとしても透明な折に阻まれてそれ以上の退路がない。
「ぁ……、れ……? ら、ふぁ……?っ、ぅ」
よ、ろり、と唐突な展開に緩慢な所作で顔を上げて、瞼の腫れた目に映る小柄なよく見知った彼女の名を口にしようとしたが肺に受けたダメージの為に咳き込んで声にならず。そのまましばらくげほげほと噎せていた。
今、何が起こっているのだろうと好きに殴る蹴るされて全身打撲で苦痛にまみれた思考ではすぐに察せられず。
ただ、この場での頂点は誰であるのか、それは肌で察せられて、戸惑うように瞬きをした。
■ラファル > 「ボクのおねえちゃんを
い じ め た な ?」
桜色のあどけない小さな唇から零れる声は、耳にも心地の良いソプラノの声、透明感のある声といって良いだろう、耳に滑り込み、心地よく感じられるウイスパーボイス。
そこから放たれる言の葉は、聞き違いという事を拒絶するように、確りと彼女たちに届くのだ。
一言、一言、重く、静かに、その言葉の意味を理解してもらうかのように、幼女は言葉を放った。
一歩、一歩、静かに、急ぎの無い歩み、此方を見る盗賊たちに恐怖の色が見えていても、それを、一切気にすることも無く。
死刑宣告を行う裁判官のように、泰然と、歩み寄る。
恐怖に慄くローグたち、年上のようだが、がちがちと震えている、寒いのではなく、怖いのだ。
この、貧民地区に在り、荒事に成れている筈の彼女らが覚えるほどの、恐怖を、ただ、静かに彼女らに向ける。
「ティアお姉ちゃん。
大丈夫?お薬、使うよ?」
綺麗な顔が、ぼこぼこで、あざがあり、体も全体的に、見えないところも含めて、痛々しいぐらいに痛めつけられているのが判る。
ダメージが酷い、幼女には回復の魔法は使えないが、道具はある。
冒険で手に入れたポーションなどがあるから―――。
「ん。」
ポーションの瓶の蓋を開き、幼女は一瞬迷う。迷ったから、自分の親指をピット切って、ポーションの中に。
蒼い色をしたポーションが、ルビーのように紅く輝く。
彼女を優しくあお向けに寝かせて、少し顎を上げさせる。
「ティアおねーちゃん、ポーションだよ、飲んで?」
優しく姉に言いながら、口元にポーションを差し出す、振り掛けてもいいが、内臓のダメージを考えると飲ませた方が良いと判断したのだ。
介護を始めれば当然、視線が離れて、それにより、圧が失せてローグたちは暴れ出す、半狂乱となって逃げようとしている。
しかし、幼女の作り上げた風の檻は、彼女らの脱出を許さずにいた。
逃がすわけないじゃないと、想いながら、優先順位一番の、人命救助を行うのだ。
ちなみに、倒れて気絶している二人も、同じように風の檻で逃げられないようにしている、起きられないように気圧の檻で押しつぶしている。
■ティアフェル > この場でもっとも小さくもっとも幼い少女が、荒くれた女たちを纏めて圧している。まるで圧し潰すように。
それは静かな声を響かせて表情は神色自若としたような、憤怒の影も薄いものだったが、確かに、間違いなく、一人の少女が成していた。
怯えて逃げ出そうと暴れ藻掻くそれらを、腫れた眼差しで横目に。
連中を相手にするより先にこちらへの気遣いを見せてくれる、自分にはただ小さく優しい、妹と扱う少女を見つめて。
「っは、は……恥ずかしいな……みっともない、とこ……見せちゃったぁ……」
血のつながりこそないが、姉と嘯いているのになんと情けないと自嘲が漏れてやはり、げほ、っと咳をして口元を抑え。
髪は留めていたリボンがほどけかけて、結った形を成していなかったし、右目が腫れあがって、口許は切て頬も痣でぷっくりと膨れている。衣服は軽く裂けて、埃と靴跡でまだらになっていた。こんなところ、見られたくなかったな、と痛みに滲んでいた涙で崩した双眸。
姿勢を仰臥位のように反転して介抱する姿勢、回復ポーションを口元に運ぶ所作に躊躇った。
いいのだ、自分で回復できるのだ、もう大丈夫……。
そう云って一度は留めようと思ったのだが、気づかわし気な眼差しで覗き込んでポーションに指先から零した血を含ませて顎を上向けさせる様子に、飲み込んでしまう。
もし、断ってがっかりされるのが哀しい。
きっと、回復ポーション、それがより効果を発揮するようにか何かの理由で血すら流した彼女の厚意に甘えることにして。
「ぁ、りがと……」
掠れた声で口にすると、まあまあ悲惨なお化けみたいな顔で不器用に微笑んで。
く、と瓶の縁に唇を当てて、飲み込んでいく。
こく、こく、と小さな瓶の中身はすぐに干して。
そうしてポーションで負傷を回復させていく。
その間にも破れかぶれのように、殴り掛かってこようと奇声をあげて、斜め後方から棍棒を振り上げてくる女が一人いた……。
■ラファル > 「ううん、恥ずかしい事なんて、無いよ。
みっともないなんて、無いよだって、一人で二人倒している、つまり、二人分強いんだ。」
それはすごい事なんだ、と幼女は笑う。幼女は人間ではないから、比較するべきじゃない。
それに、彼女らは、自分で生活が出来ずに奪うしかできないのに、お姉ちゃんは、自分で生活が出来ている。
みっともない所なんて、何処もないよ!幼女は笑って見せる。
「お姉ちゃんは、勇敢に戦った、そして、生き残ったんだ。だから、ボク、尊敬してる!」
それは、幼女の純真な純粋な思い。強い、弱い、それらをひっくり返している彼女の努力に、幼女は笑いかける。
彼女の傷は、誇れる傷だ。
と言っても屹度、判ってもらえないかもしれない、こう言うのは、戦士の人とか、男の人が良く考えることだから。
「大丈夫、だよ。」
変な作用はない、一時的に回復力が高まり、体力が付く程度。竜に成ったりとか、そういう力はないし、そんな風に与えはしない。
3分程度で痛みが引いて、傷が早く、跡形もなく治り、肌がピカピカで新品のようになるくらいだ、3歳若返ったかもしれぬ。
変な作用はない(当社比)
姉を介護する方に意識を向けて居たが、一人、自分の束縛を抜けた女がいる。
把握はしていたし、対処もできる、それをしなかったのは、姉を守り、癒す方を優先したに過ぎない。
だから、無防備な後頭部に、女の棍棒がラファルに当たり―――。
幼女は揺らがなかった。
竜の鱗を、竜の守りを抜けるほどの威力が無かったようだ。
「ボクの術を抜けたことに対する賞賛として、敢えて受けたけど。軽いよ。
お姉ちゃんのデコピンの方が、まだ痛い。
―――おとなしく、していてね?終わったら遊んで、あげるから」
視線を向けすらしない、彼女らは、ローグは、幼女の敵足り得ない。
油断はなく、もう一度、檻に閉じ込める。
二重三重と、竜巻のように荒れ狂う風の檻が出来上がる。
■ティアフェル > 「……そ、っかな……
全員、ぶちのめしたろ、って……思ったん、だけどな……」
少々おどけた言葉。どうしても掠れて少し途切れがちになる、少し不明瞭にくぐもった声で、賛じてくれる声に微苦笑を浮かべては、いてて…と傷に響いて口端を歪める。
「……うん……ありがと、ね……」
このまま袋叩きが続いているとひょっとすると命すら危うかったかも知れないが、結果オーライかと、笑顔の妹の頭を力の入らない手を伸ばして撫でて、腫れて歪んだ顔で笑い返した。
こんな小さな子に励まされるなんて、やっぱりちょっと情けないなあ、と思わないでもなかったが。
きっとそれよりも、笑って、そうだねと肯いた方が正しいような気がして。
そして大丈夫と口にされて小さく首を縦にする。おかしな物だと疑った訳ではない。そうじゃなくって、自分の力で治すことは可能だ、と云いかけてやめたという事情。やはり云う必要はないなと思って。
服用するとみるみる裡に傷は癒えていく。腫れは引き裂傷は塞がり、痣は消えていく。痛みも伴って失せていき、代わりにむしろ艶の良い肌になりかわっていく。
だが、背後からの強襲をちょうど目の当たりにする位置にいて、腫れの引いて行った目を見開いて、小さく声を上げかけたが……、
まるで、虫でも飛んできたかのように無反応な様子。
確かに安物だが頑丈な棍棒はその金の頭を直撃したが、蚊に刺されたほどでもないと平然として女に声を返し、動きを封じる様子に。無意識にほー、っと息づいて、そっと撫でるようにその金髪の後頭部に手を触れさせて動かし。
「……うーん……ノーダメージとはいえ……あのオンナ。すり潰したろか……」
まったく別状ないことは把握できたが、ちっと舌打ちして唸り。それから程なくして回復を遂げると、はーっと息を吐き出し。
「ありがとう、もう大丈夫みたい。復活!」
手を借りずとも元気にすっくと立ちあがることができて、安心させるように、にっと笑みを投げかけた。
■ラファル > 「ティアおねーちゃんならきっとできるよ!いっぱい鍛えて、目指せ、五人抜きだよ!」
二人倒せるなら、鍛え方次第では5人を相手取る事が出来る筈だ。純粋に信じているから、きらきらキラキラ輝く目。
終わったら訓練しないとね!なんて、にこやかな幼女。
「わ……!」
なでなでされて嬉しかった。ちょっと場違いな状態だっただろうけれど、でも、撫でて貰えるのは嬉しい物で。
嬉しそうに撫でられて、目を細めてうにぃ、と妙な声で鳴いてしまうのだ。うにぃ。
彼女が元気だったなら、今なでて貰ったら販社で抱きついて頬ずりの一つしている筈だ。
彼女が今大ダメージ中なので、自重する、我慢大事。
そして、竜の血入りポーションは見る見るうちに回復するのだ、竜の血は十分な栄養と回復効果を与えてくれる。
もしかしたら、寿命も一寸上がったかもしれないけど、純粋な竜の血ではないので。
その程度で収まっていると思う、錬金術師を齧っている姉が竜の血を使って作れば、もっとすごいのが出来るのは間違いない。
今回は、一寸入れただけ。
痛みもなく、ダメージもない、殴られたという認識すらないレベルである。頑丈は頑丈、ダメージ与えるなら、腰の刀を抜いて刺したほうがずっとダメージになる。
それに手を伸ばした瞬間、肉団子にするけれど。
心配して、撫でてくれる掌に甘えるようにスリつく幼女、すりすり、すりすり。
「おねーちゃん、処す?処す?切って刻んで磨り潰す?」
舌打ちして向けられる敵意、姉の敵意を敏感に察知し、放置して居た盗賊たちの処遇を問う。
命乞いしようが、容赦する気はないし。
姉がどうしたいかに、掛かっている。
「わぁいやった!血の方でよかった!ぺろぺろ舐めるとか、唾液で治すとか……しかないから!」
竜の体液は強力な回復薬。でも、絵面。
なので、血を選んだのである。一番見た目が穏当なものでした。
にっと笑って復活を宣言する姉に、びしいっ!と素敵なサムズアップ。親指の指紋も見えまする。
■ティアフェル > 「っふ……ラファルちゃん、わたしが行きつくところは――10人抜きっしょ」
かなり無茶な掛け算だったが、少しばかり気取った笑声を零しては、輝く瞳に答えた。血反吐吐くまで鍛えてやるからな、と悔しさも後押しして気合は十分。
いい子、と懐いてくれる子にいつものように撫でる手。今は少し力なかったがそれもすぐに取り戻して元気溌剌となるのである。
竜の体液は、素材として珍重されており、高級ポーションにも使用されるが、副作用も一般的に確認されている。いいことずくめ、ということはなかなかなく、適用しない一部の体質には反発することもあるけれど、幸いここではそんなこともなく。
問題なく効果を発揮し、よーしよしよし、ともうすっかり回復したもので、存分にすり寄ってくれる女の子の頭をなでてかいぐりしまくって、むぎゅっと抱き締め。
「んん……そーね、そうしたいところだけど、いざやっちゃうと寝覚めが悪いわ。タコ殴り+適当に剥いて放置程度でいっかな。
この時期、明日にはきっと酷い風邪を引いて拗らせて数日辛いでしょう。くれぐれも人に感染すんじゃねーぞ」
ペースト状にしてあげたいのはやまやまなれど、仮にも幼女連れなのでそんなことは大人として致しません。
び、とサムズアップにこちらも親指を立てて返して。
血を流させるくらいなら唾液でも鼻水でも文句はなかったのだが、終わってしまったことは後の祭りだ。気を取り直して。
「さー。ほんじゃ、ラファルちゃーん。死なない程度にしばいてお洋服ももらっときましょーねぇー。5人いるからお手分けしましょーね」
お遊戯でも始めるかのようににこにこと屈託ない笑顔を弾かせて。衣服の埃を払い、乱れた髪を手櫛で梳いて簡単に首筋で一つに纏め直して破けた箇所には溜息で済ませて、気を取り直し。
手分けして半殺しにして剥いて放置コースをご提案。
自力でやってのけられる訳じゃないからちょっとズルかな、とも思ったが向こうも一人に5人で来て大分ズルだったから相子だと。