2020/10/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にカーレルさんが現れました。
■カーレル > 重たげな鈍色の空から堪えきれなくなったようにポツリ、ポツリと冷たい雨が落ち始め、
街を行く人々も足早になり、各々目指す先に急ぎ始める
平民地区から離れれば次第に歩く人の姿も見かけなくなり、寂れた貧民地区までくると、
雨脚が増したせいもあってか、自分の他に人影を見ることはなく、
目的の故買商を営む老人の店までくれば、衣服に付いた水滴を軽く払うようにしながら、
店の奥にいるであろう店主に声を掛けた
姿を表した店主は鋭い視線を此方に向けたが、フードを下ろして自分の顔を確認すると
幾分か緊張も解れたようでこちらへこい、と手招きしてみせる
数々の盗品、曰く付きの品々が並ぶ棚の間を進み、店主の住まいと店とを隔てるカウンターの前まで来ると、
コイツだ、と短く店主が告げてカウンターの下から飾箱を取り出し、箱の中を見せる
「うわっ…本物か、これ…」
箱の中には鞘に収まった短剣が一振り
パッと見ではそこいらの雑貨屋でも、武器屋でも取り扱っていそうな短剣であるが実はちょっと話が異なる
さる魔術の大家と言われる貴族が精霊をモチーフに作り上げた品で家宝として大切にされてきた
しかし、お家の没落とともに失われ、現在でも行方不明となっている
そのうちの1つ『火蜥蜴のナイフ』である
「―――いや、薀蓄は良いよ、あらましは依頼人に聞いてる
あれだろ?他に、地、水、風の品があるんだろ…?それぞれが結構な、魔法の品っていう…」
そうじゃ、と店主が頷いて応える
本物であるかどうか、手にとってもよいか、と尋ね了承をえれば、そっと短剣を手に取り
これも火蜥蜴の革で出来ているらしい鞘から引き抜けば、刀身に刻印された火蜥蜴の影が、
まるで生きているかのようにぬらりと動き、僅かに火花を散らす
「…なるほど、そんで幾らなら手放す?
依頼主はこんぐらいまでなら即金で払うってよ」
短剣を鞘に収めカウンターの上におけば、指を立てて金額を提示してみせる
店主が腕を組み、思案に入ればまあ、じっくり考えてくれと告げ、
傍にあった薪ストーブの傍に寄っていき、遠慮なしに薪を足せばポンチョを脱ぎ乾かし始めた
■カーレル > ブーツを脱ぎ、ついでに靴下もストーブの傍に寄せて
床に腰を下ろし、爪先をストーブの方へ向ければ、ぐにぐにと足の指を動かすと、
冷えた指先がじんわりと暖かくなって心地よい
「あー…ついでによ、じいさん
他の3品の在り処についてなにか知らんかね?
4つ全部揃えて持ってきゃボーナス出すっつーからさ…もちろん、情報についても無料でとは言わんよ」
値段についてどうしたものか、と考える店主に他の品の情報を知らないか、と持ちかける
品々が散逸してしばらく年月が経っているが、偶々、この短剣を故買商が持っているらしい、と聞いたのは
店主と同年代の鍛冶職人からであった
噂を辿ってここまで来るだけでも結構な労力であったから、ここで有力な話を聞ければありがたい
立ち上がってストーブの上の薬缶から白湯をカップに注げば喉を潤し
じ、となにか思い出そうとしている店主の横顔を眺める
「流石に国の外まで持ち出されてるならどうしようもないし、追いかけるつもりもないけどな…
まあ、噂程度でもなんか知ってたらでいいよ…俺も全て揃えようなんて思っちゃ無いし、
揃えられる気もしてないから…もう、1つ2つ見つけられればラッキーくらいなもんでね…」
そんで幾らで売るか決まった?と付け足し小首を傾げる
自分としては幾ら待っても構わないので後腐れなく、手放すに足る分の代金を要求してくれたらそれで良い
散逸した4つの内、どれか1つでも見つけるのが自分の仕事でこの交渉はついでみたいなもんである
身体が温まってくると欠伸を零しながら立ち上がり
ストーブから少し離れた位置に置かれていた骨董の椅子に腰を下ろす