2020/10/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に紅刃さんが現れました。
紅刃 > 「お世話に、なりました」

 貧民地区にある店舗。その勝手口に立った女はそう言って頭を下げ、静かに扉を閉めた。日雇いで得た稼ぎを懐に入れる。並の男でも半日足らずで音を上げる、日の差さぬ倉庫での力仕事。本来2人がかりでこなす所、流行病で2人とも職場に出られず、困っていた所に女が通りがかり、引き受けたのだった。

「これで、当座は」

 まるで王城にあった魔導機械のようだ。丸一日休まず正確に仕事を進めた女を雇い主はそう評し、また仕事に困ったら自分を訪ねろと言った。女は礼を述べたが、既にそのことを忘れつつある。
 人並外れた仕事ぶりは、故郷で無理矢理与えられた力があったればこそ。賞賛を得ても、感慨はなかった。髪を後ろでまとめていた帯を解き、貧民地区の更に狭くわびしい路地を抜け、安宿に帰ろうと。

紅刃 > 女の姿は、建物がひしめき合う暗闇へと。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から紅刃さんが去りました。