2020/09/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地迷路」にリズ・リナさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地迷路」にヴァレリー=D=ツインテイルさんが現れました。
リズ・リナ > ある日忽然と、己の居場所はなくなった。
具体的に言えば構成員たちが集まるべき場所に集まるべき時間に集まらなくなり、定期で顔を見に来る上長も姿を見せなくなった。
要は、組織から切られた──という、ことなのか。

どこぞの納屋に潜り込んでぐすぐすと泣いて時間を過ごし、夜になり食料を漁る。
こんな暮らし、いつまで続くのだろう。

大家族らしいと目を付けた家の裏口から大きなゴミ袋が路上へ放り出されれば、辺りの野良犬より素早く歩み寄った。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「見つけたーーーー!」

貧民地区の暗い路地に、そんな声が響く。
ゴミ袋を漁る少女を、一人の女が指差し、そう叫んでいた。
表情は焦りに塗れ、息を切らし。
少女を指差していた女は、次に、全力疾走で少女へと駆け寄る。

「りりりりりリズ、やっと見つけましたわよ!」

なんていうか。焦っていた。
なんなら、少女同様、涙目……っていうか。
女は、あとちょっと何かあれば、本当に泣き出しそうな顔のまま。
どだだだだ、と。貴族とか淑女らしからぬ……。
本気の全力疾走で、少女に駆け寄っていく。

リズ・リナ > あんまり食べたくないけど、仕方ないかな。
噛み跡のついたスジ肉の欠片がついた竹串を、己の為に取り置くか犬へと投げるか思案をしていると鋭い女の声。

「ひっ!」

瞬間身体が動かず、固まっていたが相手が距離を詰めてくれば目を見開き。

「ドリーちゃん、ドリーちゃんなの?
 今までどうしてたの? みんなどこへいったの?」

相手を確認すれば、問いかけを重ねる。
そして眉尻を下げて、

「また一人になっちゃったー」

はふ、と吐息をつくのであった。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 自身の声に相手が怯えている、なんてことに気づかず。
どだだだだ、と相手に近寄り。
そうして……。

「ぜぇ……はっ……はぁ……」

慣れぬ全力疾走で、女は息を切らし。
少女の傍で、荒い呼吸を繰り返す。
しかして、しっかりと相手の言葉は聞いていたようで。

「……それ、なんですけれども。
 ……ハッキリ言えばまぁ、アレですわ。
 私たちの組織は……一旦、地下に潜ったんですわ」

呼吸を整えながら、そう説明する少女。
相手が持っていた竹串を奪い取り、ぽいっ! と投げ捨てる。

「そんなもの、淑女が食べるものではなくってよ!
 ……アナタは一人ではありません。
 ……組織が今後、活動を再開するかどうか分からない以上。
 私がアナタの面倒を見ますわ!」

だから、そんな物を食べるんじゃあない。
そう言いつつ。女は相手の頭を撫でてやり。
服を軽く叩き、ホコリを落とす。

リズ・リナ > なんとも驚くべきことに、この貧民街のさらに奥へ息を切らせて駆けこんできたのは己の組織の女幹部たるその人で間違いはないようだった。

相手から返ってきた言葉にはまた疑問が浮かぶ。

「地下って? ち・か? この下、ってこと?
 ──ドリーちゃんが掘ったの?」

底の抜けそうな靴でどんどんと足元踏みしめて聞く。
食べねばならぬかと半ば腹を決めた肉串が捨てられれば土に塗れる。
あー、と気の抜けた声でその一部始終眺めて。

「ドリーちゃんが? リズを? どうやって?」

そうして身だしなみを正す相手の手。
己の髪は皮脂が滲んでいようし、服は破れている。

「やば、」

泣けてきた。眼鏡を外してシャツの袖口で目元を押さえる。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「……えぇっと、地下っていうのは、いわば物の例え、言い回しですわ。
 ……掘りません! 私にそんなことが出来るわけないでしょう!」

とはいえ。相手に対し、言い回しを選ばなかった女にも非はあるので。
素っ頓狂な問いかけには、ゆるくツッコミつつ。
相手のことを見つめ。

「……そうですわねぇ。
 私の家に連れて行ってもいいですし。
 それか、私のポケットマネーで、新しく別の住処を用意してもいいですわ。
 こう見えても、私。金はありますのよ! オーッホッホッホッホッ!」

う~ん、と考えながら、適当なことを口にする。
どちらも実現可能で。女にとっては何の問題もない。
要するに。

「……ま、アナタの好きな方でいいですわ。ただ。
 私、ヴァレリー=D=ツインテイルは。
 目をかけた相手を見捨てることはしませんことよ」

ふん、と胸を張りながら言う女。
相手が目元を押さえれば、再度、頭を撫でてやり。

「……まぁ、まずは服装と。
 あとは、食事、ですわね。
 リズ。とりあえず着いて来なさいな」

相手の様子を観察していた女は。
そう言うと軽くため息を吐き。その場からゆっくりと移動を開始する。

リズ・リナ > 「……良かった。
 ドリーちゃん似合わないからね、つるはしとか」

一課らしく一般の読み書き算盤はできたが、知識と語彙にはえらく偏りがあることを示すような言葉を返す。

「えっ、リズはドリーちゃんと暮らすの?
 嬉しいけど、いいの? ドリーちゃん偉いんだよね」

相手の高笑いにはきょとり、とする。
それから続けられた言葉を聞けば。

「信じていい? いきなり居なくなったりしない?」

涙を拭けば、また相手の手の感覚を感じる。
辺りの空気も微かに甘い芳香。
この数日、生きるのに必死で忘れていた相手の匂いだ。

「……ぅー、信じるよー……。
 一緒に行っていいんだね、絶対ついてくよ」

泣き止めば眼鏡をかけ直す。
手。手を。
求めるように探って相手の手をぎゅっと握った。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「そうでしょうとも。
 ……いや、えぇ、うん。まぁ、そうでしょうとも」

実際のところ。この女は元々貴族だったわけではなく。
たまたま商売が上手くいった商人が位を金で買っただけの成り上がり者。
なので、昔は普通に力仕事もしてたのだが。それを口にする必要はない、と判断した女は。
微妙な表情のまま、頷いていた。

「いいも悪いもありませんわ。
 私が、そうすると決めたのですから。
 アナタは不安に思う必要はありません」

何を言っているのだ、とばかりに。
女は胸を張り、さらにそう言う。
そこには、嘘の気配も、偽りの気配もまったくなく。
本気で、少女を養うという気配しかなかった。

「もちろんですわ。
 ……ただまぁ、この国のことですから。
 いきなり居なくなることはない、とは言い切れませんけど。
 アナタを見捨てる、ということだけは。絶対にしないと誓いますわよ」

いきなり誘拐されて消息不明、とか。
一応貴族なので、ありえない話でもない。
だが、自分から、捨てるようなことはしない、と。
女は、そう言いながら相手の頭を優しく撫でていた。

「えぇ、信じなさいな。私はツインテイルの娘ですわよ。
 アナタ一人くらい、余裕で守ってあげますわ。
 ……とりあえず、適当に服を……」

求められれば、女は手を差し出し、握られるをそのままに。
なんとか服を入手せねば、と思いつつ歩く女。
ここが貧民地区だったのは幸いだ、と考える。
もしも富裕地区などであれば、入店お断り、なんてこともありえたかもしれない。
女は、服を扱っている店を探す間、露天商から果物などを買い、少女に差し出した。

「お食べなさいな。それと……。
 淑女に涙は似合いませんわよ。
 いつだって、笑顔が一番ですわ」

そう言いながら、女も笑みを浮かべて見せる。
それは、普段女が見せるようなものではなく。
……歳相応。それこそ、『商人の娘』としての女の本質の出ているような。
活発さが溢れた笑顔であった。

リズ・リナ > 組織での幹部という立場、それからパーエィーでの貴族子女としての振舞。
それしか知らぬけれどともあれ「偉い」とのみ、王国にありがちな身分差も根強く感じていたのが本心。
なれど相手の意志だと知れば強く頷いて一緒に歩いて行く。

「いきなりいなくなるのは嫌だ。
 んー、だからリズはこれからドリーちゃんの鞄を持って後を追うっていう仕事するよ。
 それがしたい」

幹部会議には自分を引き立てるような子分に鞄を持たせるものよ、とか別の幹部の言葉だった。

「信じるから、リズはあれだよ──ドリーちゃんに、えっと”尽くす”。
 これも、リズが自分で決めたこと」

商店のある通りに出るとお腹がぎゅうと鳴った。
相手が差し出した果物を受け取り、「ありがとう」の言葉もそこそこに野生動物のような勢いでかぶりつく。

「ドリーちゃんといたら、これからは泣かないで済むかな。
 でもなんでだろ、会えたなぁと思ったらまたちょっと泣きそうになる。ふふ」

そうして衣料品の店を見つければ、汚れも破れもない清潔な服に着替え、気分も幾分さっぱりとして。

「……へへ、これからどうしよう」

にっこりと笑いかけるのだった。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「イヤだ、と言われましてもね……。
 ……ん。あぁ、なるほど。
 それはいいですわね。イザという時は、私を守りなさい、リズ」

どうしたものかなぁ、と考えていた女。
だが、相手の一言に、それなら、そういった形で傍に置けばいい、と。
思い付きではあるものの、相手の言葉を採用することにした。

「よろしくてよ。
 アナタが忠誠を誓うなら。誓っている間は。
 私は、ツインテイルの名と、私個人のプライドに懸けて。
 アナタを守りますわ」

尽くす、という言葉に、ふっ、と笑いつつも。
女はそうハッキリと宣言し、相手に果物を差し出す。
凄まじい勢いで食す姿に、思わず苦笑するも。

「それなら良かったですわ。
 ……ん、この店にしましょうか」

貧民地区の店ではあるものの。それなりに服の置いてある店を見つけ。
なんとか金の力で少女共々入店し、服を買い与え。
これで少しは落ち着いた、とばかりに。女はため息を吐き。

「じゃあまぁ、近くの店で食事にしましょう。
 お腹、空いているんでしょう?
 好きなだけ食べなさいな」

そう言って、相手に笑顔を返しつつ。
女は、近くの酒場へと入っていく。
目立たないように、と隅の席を確保すれば。
女は、相手に好きなように注文しろ、とばかりの構え。

リズ・リナ > 「じゃあ今日からリズの仕事は『お付きの人』だねぇ」

がんばると、と片手小さく上げて拳作って応える。

「ドリーちゃんの言うことたまに難しいけど、なんとなくわかるよ。
 でも、言ってること全部わかるようにもっと本を読むね」

尽くす、という言葉の本来の意味もあやふやなれど、その言葉が相応しいのだろうという知識と直感はあった。

そうして着替えた姿は庶民的な店の敷居を跨いでも疎まれない程にはまっとうであった。
相手を追って席へと着けば、出されたお水をごくごくと飲む。それで人心地つけば注文に悩む。

「急にお肉とか食べたらおなかがびっくりするかなー。
 何にすればいいだろう……」

先程果物を貰うまでは碌に食事をしなかったせいで躊躇を見せる。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「そういうことになりますわね。
 当然。仕事をするんですから。お給金も支払いますわよ」

相手の気合を入れる姿に、女はほほ笑みつつも。
そこはしっかりとしますので、と。商人としての矜持も見せる。

「あぁ、それはいいですわね。
 知識と知恵があれば、将来の選択も広がりますし……」

相手のことは良くは理解していないが。
もっとしっかりとした教育を受けさせてもいいのかもしれない。
そう考える女は、頭の中でどういった教育を受けさせるかも考えていく。

「焦らずとも、食事は逃げませんわ。
 落ち着いて。好きなものを注文して。
 好きなように食べなさい」

優しくほほ笑んだまま、相手の頭を撫でる女。
どうやら、撫でるのを気に入ったらしい。
ちなみに、女はサラダとワインを頼む。
そこまでがっつりでなくてもいい気分らしい。

リズ・リナ > 「じゃあそのお金で本が買える。
 うわぁ、楽しみー」

無論、遊びではないのでそれなりの振舞を身に着けて相手に恥をかかせぬようでなければならない。
諸々込めて楽しみだと笑みを濃くする。

「一応ね、結構字が読めるんだよ。
 だから一課に拾って貰え──…って、今は地下だからこの話は不味いってこと?」

声を潜めて周囲を見渡す。
そうしながら、他のテーブルやカウンターの料理を見て。

「牛乳とたまごサンドとフライドチキン!」

子供じみた勢いで注文し。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「学習のための本はこちらで用意しますわ。
 お給金はまぁ、他の形で、自分の為に使いなさいな」

少なくとも、やる気は十分の様子。
これなら、案外早く成長するかもしれない、と。
女はそう期待していく。

「そいつは重畳ですわね。
 文字が読めるなら、学びもスムーズでしょうし……。
 ……えぇ、その話は、あまりしないほうがいいですわね」

相手が声を潜めれば、女は少し真剣な表情で頷く。
だが、すぐさま注文されたものを聞けば。

「……えぇ、いいですわよ」

その子供らしい注文にまたほほ笑んでしまう。
ほどなくすれば、テーブルには二人が注文したものが届くだろう。
女は、ワインを味わいつつ、サラダを食していく。
貧民地区の店なので、高級な料理でもないが。
まぁ、味は悪くなかった。

リズ・リナ > 「なんかねー 絵がいっぱいの変な本もたまに買いたい」

正式な名称は知らない、たまに拾う印刷も紙質も悪いようなやつだ。
知ってる? と小首を傾げてにやっと笑う。

「計算もね、少しだけ、
 ──ドリーちゃんもしかして追いかけられたりしてないよね?」

声潜めたまま、真剣な表情の顔を寄せて問いかける。
その返答如何によっては周囲への警戒を強めるだろうか。

2人分の料理が届けばおっかなびっくり、まずは牛乳を胃の腑へ落とし込む。
それからたまごサンドへ手を伸ばし、時間をかけて食べてら慎重に油物へと進む。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「絵がいっぱい? 変な本?
 ……絵本、ってことですの?」

う~ん? と首をかしげる女。
ただ、絵本なら、変な本、というのが気になる。
少女の見た絵本が、変なストーリーのものだったのか? と。
むむぅ、と考え込む姿勢。

「大丈夫ですわよ。
 一応、立ち回りには気をつけていたつもりですし」

少なくとも、女は誰かに追跡されたりはしていない……はずだった。
もしかしたら、女の悪行を調べている人間もいるかもしれないが。
それも最早、過去の話となった。雲隠れした悪の組織について。
いつまでも調べ続ける人間もいないであろう。

相手の食事姿を見ながら、女は一度口元をぬぐい。

「今日は、どこかの宿に泊まるとしましょう。
 住処については、また追々考える、ということで」

相手に言い聞かせるように言った言葉ではあるが。
それは、女自身が、予定を確認するようなものでもあった。

リズ・リナ > 「今度見つけたら見せてあげるね」

ポンチ絵の並んだ風刺新聞とか、カストリ雑誌の類があるとするなら恐らくはそれのことだろう。
共用と身分のない者のみの文化はひっそりと貧民街で流通しているのかもしれない。
悪戯っぽく笑ってそんな約束を交わし。

「でも少しでもおかしいことがあったら教えてね。
 リズ、お仕事がんばるから」

相手を見ながらコクッと頷けば食事に集中する。
何日かぶりの人間らしい食事にありつけば、満足。
注文したものはだいたい平らげて、お水にごくごくと喉を鳴らす。

「宿?
 すごい! 行く行く!!」

久々にベッドで眠れるというなら反対意見などあるはずもなく、勢い込んで首を縦に振る。
今夜はどこまでも相手と一緒。
否、本人の感覚としては今夜からは──だろうか。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「えぇ、楽しみにしてますわ」

少女の言う本が、そういったものだとは知らず。
女は、笑顔で頷く。もしも少女が本当に持ってきたのなら。
……相当面白い反応をするのは、想像に難しくないだろう。

「わかってますわ。
 ただ、あまり無茶はしないように」

気合十分なのはいいが、無茶をされても困る、と。
女は、そこはしっかりと念を押しておく。

「別に、この辺りの宿なら凄くもないでしょうに。
 さ、行きますわよリズ。
 まずは宿で、体を綺麗にしてあげますわ」

相手が食事を終えたのを見れば、女は会計を済ませ、店を後にする。
そのまま、近くの宿に向かい、部屋を取り。
相手と一緒に、一晩の寝床へとたどり着くことだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地迷路」からリズ・リナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地迷路」からヴァレリー=D=ツインテイルさんが去りました。