2020/08/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエリナさんが現れました。
■エリナ > 貧民地区。
饐えた臭いと言ってもそれらが何を素にしたものなのかは最早判別もできない程混然とし、それ故にこのマグ・メールの在り方たる秩序の皮を被った混沌とした国の本質を表すようなこの区域。
酒。血。吐瀉物。体液。薬物。暴力。恐怖等々。
そんな場所に似つかわしくない、自身の華奢な体躯に合わせた装飾過多な服に身を包んで貴族や王族の社交界から誤って転がり込んだかの如き華やかな雰囲気を纏い、上品な仕草で闊歩する少女の姿。正しくは少女の姿を模った人形。
腕には木造のバスケットに中身を隠し、外気から保護する花柄の布を被せて提げている。
外見からは人形と判別するのは困難であり、護衛もなければ世間知らずで此処が怖い場所であると理解していないお嬢様かもしくは場所柄高級娼婦か何かと誤解を招きかねない。
娼婦、という点では実際女性相手という前置きはあるがやっていることは間違っていない。
本人としてはあくまで誰にも吐露できない秘密、欲の相談を受け、発散ないし解消し幸福な日々を送る手伝いをしているという認識だがそんなこと他人からすれば違い等あってなきものか。
そうしているうちに横合いからぬっ、と伸びてくる手。
あら?と間抜けた声をあげて碧玉の如き造り物の眼を丸くしながら路地裏へ引きずり込まれる矮躯。
薄汚れた身なりと下卑た笑みを浮かべる男は貧民地区で珍しくもない浮浪者か良くても盗賊なり強盗なりそういった類の犯罪者か。
壁に押し付けてからナイフ片手に白く柔らかな曲線を描く自身の頬に押し当てながら典型的な脅し文句、所謂怪我をしたくなければ大人しくしな、と脅迫された人形は恐怖の色はなく、何とか穏便に済ませようと興奮し手が震えてうっかり頬に傷をつけてしまいそうな様子の暴漢に落ち着いてもらうべくこれから予定があるということ、自分は人形で女性相手が主であるということ、商品(じぶん)に傷をつけられると修理をしないといけないから困る、などとずれた返答を。
「――はぁ……商品(わたし)は一応女性の方向けを謳い文句としているのに、何度説明してくれても理解してくださらないのね?」
強姦魔はそれを逃げる為の口実としてしか認識していないらしく全く話が通じなければ、ううん、と悩まし気に眉根を寄せ溜息を吐き。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に小藍さんが現れました。
■小藍 > 帝国から、ここ王都マグメールへとやってから数日。
王宮内のことは朧気ながらに把握ができたとしたら、次の城下の情報を仕入れる必要がある。
そう考えて足を運んだのは、煌びやかな王都にあって、陰に隠れた一画
貴族ならば当然、平民であっても自ら早々足を踏み入れたいと考える場所ではないだろう。
それが他国からの上流階級ともなればなおのこと。
けれども、こういった場所にこそ、規制の為されていない情報というものがあるわけで。
さすがにシェンヤン風のドレスでは目立つと思ったのか、
王城に仕えるメイドから質素なワンピースを借りて闇に沈んだかのような路地裏を歩く。
そこに立ち込める饐えたような臭いは、多少の違いはあれど、国が違ったところで大差はない。
酔っ払いに絡まれないように、目を合わさないようにしながら、通りの先へと進んでいくと、
視界の隅に自分と変わらない小柄な少女が不意に路地裏へと引き込まれたのが見えてしまい。
「―――しばらくお休みになっていてくださいね。」
どこでも、ゴロツキのやることは変わり映えはしないのだろう。
かと言って正面からゴロツキ相手にどうにか出来るほど、少女に戦闘の心得があるわけでもなく。
懐から取り出した小瓶の蓋を開けると、手にした扇を軽く扇ぐ。
香る匂いは酒精のそれ。
男の鼻先にそれが擽ったかと思えば、急に呂律の回らなくなった男の身体を支えるようにして、
どこか湿気たその地面へと寝かしつけ。
「もしかして、余計な手出しでしたでしょうか?
個人的に、あまり見ていたくない光景でしたので、思わず手を出してしまったのですけれど……」
パチン、と軽い音を響かせて扇を畳むと、襲われていた少女の方へと向き直り。
■エリナ > 「そう。では、そこまで仰るならば……――?」
碧玉が妖しい光沢を帯びる。人形、作り物と呼ぶにはあまりにも生々しい性を知る者特有の、外見の幼さに反した蠱惑。
そっと強姦魔の頬にするりとしなやかな白魚の指を這わせ、掌で優しく、柔らかく撫で、やっとその気になったかとナイフは手放さないが注意散漫にさせ、気を緩ませて。
しかし不意を突いて逃げる隙を作ろうかと思った矢先、自分が何かする前に目の前の男の体はぐらりと揺らぎ、倒れる直前に通りから現れた小柄な自分と殆ど同じ背丈の少女が頭を打ち付けないように配慮したか咄嗟に支え、正直横にはなりたくない薄闇のおかげでよく見えないのだが見えないままに越したことがない何かで湿った地面に横たえられるのを傍観して。
「――ふふ。いいえ、そんなことはないわ。助けてくださって有難う御座います、お嬢様。もう少しで私、きっと恐ろしい目に遭っていたもの。だから、余計なお世話だなんて。……命の恩人さん、お名前を伺ってもよろしいかしら?私はエリナ、平民地区で花屋を営んでいる、只のエリナよ。」
何故男が倒れたのか、自身に影響が及ばなかったのは果たして何が原因か。
酒精。男が急激に酔いが回ったかの如く倒れたのに反し、呼吸の真似事はできるが実質それを必要としない人形は助けてくれた小さなナイト、と呼ぶには些か愛らしい容姿の恩人へと壁から背を離して向き直り、無理矢理壁に押し付けられたせいで汚れた服の埃を軽く払ってからつい、と半歩片足を下げてスカートの裾を摘んで背を前へ傾け瀟洒に淀みなく矢張りこの薄汚れ場所に似つかわしくない作法で挨拶を。
似つかわしくないというならば相手もまた。
服装こそシンプルな黒のワンピースであるが、纏う空気や凛とした声音、染み一つなく穢れと無縁のように映る彼女は貧民地区に縁があるような身分には見えない。
今小気味良い音を立てて閉じられた扇にしても相当に質が良い品のように見受けられる。
とはいえ、詮索はしない。仮にも助けてくれた者の素性や目的を好奇心から勘繰るのは決して礼儀正しいとはいえないし利口でもない。
無論、彼女が困っていたり助けが必要なら協力はするであろうが。
だから、尋ねるのは最低限、名前だけ。
助けてくれた相手をいつまでもお嬢様、相手の雰囲気や小柄な体躯からとりあえずそう呼んでいるがいつまでもそのように呼ぶのも無礼だろうと先に自分から名乗って。
助けられる直前の嫣然とした少女の外見に反した表情は薄闇が見せた錯覚であったかの如く、無垢で朗らかな人懐っこい微笑を浮かべて相手が名乗る事すら伏せねばならず言い淀むようなら無理には追求せず小首を傾げて答えを待って。
■小藍 > ぐーすかといびきをかいている男をそのままに少女の方へと視線を向ける。
襲われていたにしては、ずいぶんと落ち着いているから、もしかすると余計な手出しだったのかもしれない。
知り合いだとも思いはしなかったけれど、万が一ということもある。
けれども、そんな懸念も少女からの返答があれば、露と消え。
「それなら良かったです。
どうして、こんなところに…? というのは訊いても構いませんか?
―――名前、そうですね。シャオランとお呼びください、エリナさん。」
花屋と名乗る少女からなら、この街の事情も詳しく知れるだろう。
偽名を名乗るということも考えは下のだけれど、少女相手に嘘を吐くというのも如何なものかと思い直し。
とりあえず当たり障りのなさそうな範囲で、本名を口にする。
仮にそこから自身の素性が知れたとしても、仕えている主に迷惑が掛かるわけでもない。
ともあれ、少女がこんな裏路地に用事があるのでなければ、表通りにまでくらいならば護衛の役回りはこなそうか。
か弱そうな少女が二人連れ立って歩いているだけで、格好の餌だと思われてしまうかもしれない。
仮にそうだとしても、少女をひとりで此処に放置するよりは、幾分もマシなはずで。
■エリナ > 「シャオラン、綺麗な響き。北のシェンヤンの方なのかしら?私、向こうには未だ仕事で出向く機会も無いからお客様達から伝え聞く話しか知らないのだけれど、貴方のような方がいるのだからきっと素敵なところなのでしょうねっ。――あら、いけない。私ったら危うく用事を忘れるところだったわ。私、この貧民地区にある酒場のご主人からお花を届けるお仕事と、仕事柄色々な人から相談されるご主人が、どうしても独りでは寂しくて慰めて欲しいけど男性は怖いって困っているお客様がいるから会わせたいというお仕事の依頼を請けていたの。お花は……嗚呼、良かった、無事みたい。」
男は完全に酔い潰れてしまったようでいびきをかいて夢の世界で良い思いをしているらしい。
現実では薄汚い地面に寝転がる不衛生極まりない無防備な姿を晒しているのだが、先程乱暴されかけた身としては同情する気にはなれなかった。
相手が名前を教えてくれればぱぁ、と胸の高さで両手の指先と指先を触れあわせながら華の如き笑顔になり、異国の響きに知識としては知っているが実際に赴く機会に恵まれず旅行に出かけるということもしない為知っているけれど遠い国の扱いであったシェンヤン帝国の出身かと見当をつけて。
ただし、相手の名前からは主の存在にまでは辿り着くはなく、シェンヤンの方は不思議な術を使うのね、と改めて瞬く間に昏睡させてのけた手腕を讃え。
それからこの貧民地区に居る理由を問われ、はっ、と襲われ掛けて忘れていたが無理矢理連れ込まれた際に地面に落としてしまっていたバスケットを拾い上げ、布を取り中身の酒場に飾る為の薄紫の花や白に近い桃色の花等々幾つかの種類の花々の状態を確認。
幸い、折れたり傷ついたりという事はなかったらしくほ、っと薄い胸を撫で下ろし安堵して。
ふと、相手と見比べてから暫し逡巡。一輪の花を選んで取り出し、
「シャオランはお花は好きかしら?助けてくれたお礼に良かったら。生憎今はお金の持ち合わせはあんまりないからお花ぐらいしか無くて。」
青と白の垂れさがった花びらに黄色の斑紋がある、相手の素性を察したわけでないが水辺に生息する花を一輪選んでは一歩相手に近づき胸元へと差し出しながら人形は薄く化粧を施した微笑む顔を寄せて。
他意は無いが、花屋を隠れ蓑に行っている仕事柄自然と距離感が近くなってしまう人形は相手が邪魔になるからと拒まないなら贈る事にしよう。
華奢な少女が二人、このような酔漢一人ならともかく他にも悪党がごまんといる貧民地区の路地裏にわざわざ留まり続けるのはそういう願望があるならともかくそうでないなら表に出るべきであり、自然と相手と共に表通り迄何もないならば戻る事に。
■小藍 > 少し不躾かしらと思った質問に対して、けれども少女からは訝し気な視線を貰うこともなく。
逆に少しテンションの高めな様子で、可愛らしい笑みを向けてくれた。
「ふふ、ありがとうございます。
エリナさんも可愛らしいですよ?」
名前の響きを褒められると、小さく微笑みを返す。
お礼を述べるにあわせて、少女のその可愛らしい笑みを誉め言葉を付け加え。
「私は田舎の出身なので……こちらはこちらで素敵なところがあるのでしょう?
この街に着いてまだ日が浅いものだから、よろしければ色々教えていただけませんか?」
そんなやり取りをしていると、やや慌てたようにして転がっていたバスケットを拾い上げる少女。
中身が心配で、少し覗き込んでしまったけれど、どうやら中身は色とりどりの花のよう。
少女が胸を撫で下ろす様子から、傷んでしまってはいなかったらしいことに、こちらまでほっとして。
「花屋さんと仰ってましたものね。無事だったようで何よりです。
このあたりに、花を飾っていただけるような酒場が…?」
お世辞にも、花を飾るような洒落た店があるような区画には見えないだけに、
相手の言葉を疑うわけではないけれど、不思議そうな表情を浮かべてしまう。
けれども、それはまだ花屋の仕事としては、理解のできる範疇で。
むしろ付け加えられたもうひとつの仕事の方については、どういうものなのかさっぱり。
「お近くなのでしたら、お付き合いしますよ。
そんなつもりで助けたわけじゃないので、気を遣っていただくなくても……」
御礼と言って差し出された、本来は売り物であるはずの花。
申し訳なさそうに苦笑しながらも、胸元に差し出されれば、断るのも悪いかと受け取ることに。
青と白の色合いは、涼し気な雰囲気を醸し出しており。
この季節に部屋に飾って愛でるには、ちょうどいいものだろう。
礼を述べて、いただいたばかりの花を胸へと刺し。
「この花は、こちらの言葉では、何と呼ぶのでしょう?
この街のお店はまだ詳しくないので、エリナさんのお店にはお世話になりそうですね。」
当たり障りのない会話を続けながら、表通りの方へと連れ立って。
眠りこけたままの男は、当然、そのまま放置。この季節であれば風邪をひくということはないだろう。
それでも、ちらりと一瞥だけを投げかけて、無事を確認するあたり、お人好しの気質が透けて見えることで。
「そういえば、男性が怖いというお客様がいらっしゃるという話でしたけれども…?」
どうしてそんな相談が少女の元に転がり込んでくるのかは分からないにしても、
こんなことが頻繁にあるのであれば、そういったトラウマを抱える女性が増えても仕方がない。
治安のほどを確認する旨も含めて、少女のもうひとつの用事について水を向けてみる。
■小藍 > 表通りにまで出れば、少女の用事に付き合って。
そうしてから、少女の家であるお店まで送っていくことになり―――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から小藍さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエリナさんが現れました。
■エリナ > 仕事について問われた人形は、人によっては理解が及ばないという者もいる事とシェンヤンとマグ・メールの性についての認識の相違があるかもしれないから答えるべきかどうか悩みはしたがもし彼女がそういった不満や苦悩を抱えている、抱える事になった時の為に直接的な表現ではなく婉曲に自身のもう一つの仕事について答えよう。
花言葉は友情、親愛。けれども、願望があるならば、感謝からくる親愛の情はそのままに彼女とも一時を共にすることに躊躇がない人形だが、果たして相手はそういった願望があるのか否か。いずれにせよ、まずは先に仕事を済ませてからだ。
小さな頼れる彼女の護衛のおかげで道中再び連れこまれる事もなく、貧民地区の目立たぬ場所にある他に比べたら程度の話であるが所謂外装内装共にレトロ、モダンな雰囲気のある酒場へ到着。蝶番を軋ませ扉を開けた先で経歴不詳だがこの貧民地区の悪漢達が迂闊に暴れる事を躊躇わせる手練れであり仕事柄情報通でもある店主、そして件のお客様らしき女性客がカウンター越しに向かい合う光景を目にし、隣の彼女へ時間があるなら一杯如何?と尋ねてから店主へ花を届け、本命の女性客の隣へ腰掛けて彼女の抱えているものを聴きだす事になるであろう。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエリナさんが去りました。