2020/07/09 のログ
ティアフェル > 「知らんよ……。わたしゃご無沙汰じゃなかったことがないよ……。
 オヤジギャグ禁止」

 軽く下ネタ云い回しにむ、と眉根を寄せて、ぴし、と人差し指とアホ毛を立てて注意して。
 刺されてもお気の毒に思えないかも知れないなと感じた。

「セインさんにそー云われてもねえ。
 まあ、今さら僻んだりしないけどさ」

 人は人自分は自分。ハイスペックな連中のことは対岸のこととして捉えて置けばよいと結論したが自然、肩は竦めてしまった。

「そのリアルが怖いんじゃん…もうちょっとデフォルメすればいーのにねえ。こんなんプレゼントされたら子ども泣くよ。
 あと一つ用途が抜けてるよ。小さい子どもの友達になるようなかわいい玩具。
 ――んで、これはその用途のどれに当てはまる奴だと思う?」

 棚の上に座らせた人形に顔を向けてついでのように問うては、じゃあ出来ないこと欄にひと項目追加じゃん、と退魔系については突っ込んで。

「意外すぎる……猫のぬいぐるみが好きだという顔を全くしていない……」

 まさかの同意が返ってきて、じろじろしげしげと日記を手にそちらを覗うように見やって。そして、これを開くかどうか訊かれてはさすがに逡巡して、アホ毛を撓らせつつ小首を捻り。

「放置されてる時点でもう諦めてると思わない…?
 廃屋に置き捨てられた日記……ちょっと興味あるなあ。
 ちょっとだけ…ちょっとだけなら……」

 自分なら読まれて困る日記なら持ち出すか廃棄するかどうかする。置き去りになっているのだから、と持論を展開して。
 ぴら、と少しだけ開いてみると……

「うわ…汚い字……解読が困難な小さくて読みにくい字だな……」

 罫線も引かれていなくて余計読みづらい。だけどたまたま開いたページには、振った相手に対する恨み言と殺意めいたことまで乗っていて。思わず女性に刺されそうな隣の人を見た。

セイン=ディバン > 「モテそうなのにな、ティアフェルちゃん」

不思議なこった、と言いつつ。
注意されれば、へいへい、と力のない返事。

「大丈夫。
 オレも、オレより強いやつに対してはそんな感じ」

最終的には、自前の武器でなんとかするしかない。
そうやって、今まで生きてきたので。
いまさらそのスタイルは変えられないのである。

「リアルに作る側は、リアルに作る意味があると思ってるから。
 怖い、なんてことは思わないわけだな。
 ……少なくとも、これがプレゼントって線はねぇな。
 自動人形にしちゃあ、駆動系統が普通の人形だし。
 ま、儀式用か、尖った趣味用かの二択だろ」

なんにせよ、きっとろくなもんじゃないぞ、と言いつつ。
男は、すっかり短くなった細巻きを足で踏み消す。

「はぁ? いいだろうがよ。
 顔と猫のぬいぐるみが好きなのと。
 なにか因果関係があるか?」

相手の指摘に、男がちょっと強い口調で言う。
どうやら、本気で猫のぬいぐるみが好きなようである。

「オレはまぁ、別にどっちでもいいと思うけど。
 最悪、何らかの呪いが発動したら。
 教会には連れて行ってやるよ」

どうぞどうぞ、と言いつつ。
男も、相手の頭越しに日記を覗き込むが。
その内容を理解すれば、相手の顔を覗き込み。
視線は、人形の方へ。

「……何かが。繋がっちゃったかな?」

凄まじい恨み言の書いてある日記と、朽ちた人形。
どうしても、関連性について考えてしまう男。

ティアフェル > 「そりゃぁどーも……」

 空笑いをして慰め染みた声に頬を掻き。
 そんなもんかなあ、と自分より強い相手の話をする声に首を捻っていた。
 隣の芝生は青いってことかしら、と微妙な解釈をしつつ。

「まあ……ある種の定番だから、これがいいって世間の評価なのかもだけど……。
 尖った趣味て」

 表現よ、と若干脱力しつつ。散々な仕打ちを受けた上で、碌なもんじゃないと一刀両断された棚の上の人形を見やり。
 心があったら絶対呪われてるなーと微苦笑した。

「じゃあお礼がてら、猫のマスコットでも作って差し上げるよ。
 持ち歩けるように小さく作るから連れて歩いて主張して」

 半ば嫌がらせであった。別に構いはしないが、顔に似合わずなのは客観的事実だろうと。真顔。

「……わあ。アフターケア痛み入る……、その際にはぜひ腕利きのエクソシストの手にゆだねてあげてください……」

 どっちでもいいという返答と万が一の際には教会送りにしてくるるとの後押しに日記を紐解くと何だか文面こええ。
 少々引き攣りながらそちらを見ると。

「刺されて死ぬ可能性のある人の見解はそうなりましたか……。
 呪うならこのリア充にしてくださいッ!」

 見たのは自分の癖に、日記も人形も関連を仄めかされれば一気に呪いのアイテムに思えて来て、速やかに保身に走った。

「この人は女性に恨みを買って刺されるような人なんです!
 そしてわたしは違います! 至って清らかな乙女ですので見逃してください!!」

 天に向かってあてどなく主張するコイツが一番刺されてしまえばいい。

セイン=ディバン > 「案外、男どものアプローチに気づいてなくって。
 キミが無意識な内にフっちゃってるんじゃないのか」

ありえそうな可能性について語りつつ。
男は、くぁ、とあくびをする。
少なくとも、この少女について。
男は、明るいし、元気だし。モテても不思議ではない、と思っているのだが。

「そのあたりは、どうだろうな?
 ん? 尖った趣味は、尖った趣味だよ」

多くは語らぬ男。あまり、少女相手にする話でもない、と判断してのことだ。

「……ふむ。
 黒猫で頼む」

相手の思わぬ一言に、少し考え込むしぐさを見せた後。
男は、真剣な表情で、注文する。
どうやら、うれしいらしい。

「知り合いにそういうのいないから。
 まぁ、腕の良い人間を探すとしよう」

教会に知り合いはあんまり居ないのだよなぁ、と。
なんとも頼りない言葉。

「おぉ、おま、なんっつーことを。
 命の恩人、かつ、泳ぎの先生に対してソレはないだろ」

凄まじい速度の保身に、さすがの男も少し驚いた。
そのまま、相手の手から日記を奪いとると、中身をぱらぱらと確認。

「……肝心なことは、字の小ささのせいで分からんが。
 ま、呪いのアイテムってことはないんじゃあないか?
 もしもそうなら。キミがここに入った瞬間。
 とっくに襲われてるだろうさ」

気味が悪いのは確かだがな、と言いつつ。
男は、ん~ん~ん~、と考え込む様子を続ける。
いくらある程度の文字解読能力があっても。
小さい、だの。汚い、だのの文字は解読できない。

「清らかって事は、ティアフェルちゃんは処女か」

日記を読みつつ、そんな失礼なことを口走る男であった。

ティアフェル > 「ああ、きっとそれよ、間違いない。
 絶対そう。よぅし、今後は意識的にフって悪女路線をひた走ろう」

 そんな可能性なかろうが。せっかく仰っていただいているからには図に乗り悪乗りし、そんな結論を下しては、くわ、と無駄に目を見開いた。
 
「だってビスクドールって云ったら大体こんな顔じゃん? 夜中に寝ぼけて見ると子ども号泣、みたいな。
 一体どんな角度で尖ってるてのよ?」

 言葉を濁すもので無神経に突っ込んでいく女。だから非モテに違いない。

「ようし、受け取るからには黒猫ちゃんをポッケの隙間から顔を出させてあげてね。せめて丸一日はぬいぐるみ好きを主張して生きてね」

 いやな振りとともに請け負った。手芸は割と好きなので、無駄にファンシーかつラブリー路線で作ってやると決意。

「よろしく頼むよ…?
 わたしの呪殺がかかってるんだからね…?」

 若干不安な返答に向けて大仰に念を押した。
 その上で、目の前の相手を呪いの生贄の前に差し出すような真似をしくさった。

「それはそれ! これはこれ!
 わたしは我が身がかわいいのだー!」

 多大なる恩人様に対してきっぱりと分けて考えるという身勝手な思考を露わにして。そして日記を奪われて、ちょっとほっとしながら。読みづらい字を見て唸る彼からでた推論に肯いて。

「そ、そーだよね! ただの日記だよねー!
 振られた腹癒せに相手を呪うっていうネガティブさが満載されてはいるけど、ただの文字の羅列に過ぎないよねー!」
 
 うんうんうん、とことさら強く首を縦にしてその推論を全肯定し、そして余計な一言に、っち、拾いやがった。と自分の発言を掘り返えされて舌打ちしつつ。

「セクハラ禁止」

 べえと舌を出した。

セイン=ディバン > 「自覚症状アリかよ。
 でもまぁ、キミが本気になるような相手がいなけりゃ。
 ムリに男を知る必要もないだろうしな」

一時の感情やらなんやらで深い関係になると。
痛い目を見ることもあったりするので。

「そうか? オレはあんまり良く知らんからな。
 ……いや、だから。まぁ、キミにはまだ早い」

説明した場合、また怒られそうなので。
なんとかごまかそうとする男であった。

「もちろん。もらったなら、大事にするぞ」

相手の言葉を、本当にまっすぐに受け止める男。
もしも本当に作られたのなら、喜んで身につけることだろう。

「任せておけって。
 後輩ちゃんを見捨てるようなマネはしねぇからよ」

そこのところは本気の男。
普段は軽薄でも、気に入った相手を見捨てることはしないのだ。

「冒険者向きな性格してるよ。キミ……」

いっそ気持ちいいまでの言葉に、男は呆れを隠そうともしない。

「だとは思うんだけどな。
 もしかすると、恨みが強ければ。
 何らかの呪いになっててもおかしくないかもな」

ただ、その場合。呪われる対象は、日記に書いてある相手なのだろうが。
それ以上のことは、調査してみないと分からないかもしれない。

「そりゃ申し訳ない」

そう言って、男は日記を打ち捨て。

「ま、探索するのもいいが。
 あんまり良い雰囲気の場所じゃない。
 おとなしくしておいたほうがいいかもしれないぜ?」

好奇心の塊である相手にそうアドバイスしつつ。
男は、二本目の細巻きを咥える。

ティアフェル > 「いや、知らんけど。そう信じておいた方が精神衛生上いいと思う。
 ッハハ。大人な意見をどーもー」

 いっそもうちょっと色々雑になった方が楽なのかも知らん、と顎に手を当てて真顔になり。

「だったと思うよ。さすがに割れてたりはしないもんだけど。
 なーにー? バカにしないで!」

 売り言葉買い言葉的に食って掛かり。勝手にぷんぷんする面倒な女が一人。

「驚くほどピュアなご意見……。
 っく、汚いのはわたしか…!」

 そんな真っ直ぐに受け止められて自分の考えがどす黒い気がしてきて――事実だが――くう、と歯噛みして。

「優し気だなあ! わたしときたら我が身かわいさにそんな先輩を呪いの前に速攻で差し出そうとしたというのに…!」

 見捨てられるべき後輩ちゃんは、少々我が身を振り返って胸が痛かった。さすがにゴメンナサイ、と顔の前で両手を合わせた。冒険者の前に人の子であったことを思い出したらしい。

「人の念の恐ろしさよ……。
 どうかどうか、この日記の後新たな出会いで幸せに暮らしており、この日記はただの黒歴史でありますように」

 一時の世迷言であることを祈って両手を組み合わせた。やっぱり人の日記なんか見るもんじゃないなーとつくづく実感して。
 それから探索は程々にとアドバイスにこっくりと首を縦にし。

「ほんとーね。この日記の書いた人の物が色々あるなら……なんか見るんじゃなかったみたいなものがゴロゴロありそ」

 暇に飽かせて探索するには良くない場所だ。ふう、と小さく息づくとふと、廃屋に忍び込む雨音が弱くなっていることに気づいて。

「お。そろそろ雨も上がる…かな? ようし、気晴らしにこのまま呑み行こーよ!」

 気鬱を払拭するには一番の方法とばかりに主張して小部屋を出ると廊下の窓から外を確認し
、能天気に云いだして、に、と笑いかけた。

セイン=ディバン > 「精神衛生上、ね。
 まぁ、そういうのって、焦ってどうこうするもんでもねーしなぁ」

むしろ、焦って経験しようとすると。
大体ロクでもない目に遭うことではある。

「ふぅむ。そんなもんか。
 別にバカにはしてないっつー……。
 ま、また今度教えてやるよ」

いくら怒られようと、説明するわけにはいかないことがある。
なので、とりあえずは、今度の機会に、などといっておくにとどめておいた。

「ん? どうした?」

なんだか一人もだえている相手に、男は首をかしげる。
この男にしては珍しいまっすぐさであった。

「そりゃあまぁ、な?
 後輩を犠牲に、とかしたら。
 冒険者やっていけないからな」

そういう噂はすぐに広まるものだ。
だからこそ、男はそういうのをヨシとしないし。
何より、女を犠牲に、というのは男の流儀に反する。

「さぁて、どうでしょう。
 こういったことを書き残すタイプは、どこまでいってもモテないと思うよ」

せっかく相手が前向きに考えているのに。
水をさす男。実際のところがどうなのかは。
まぁ、不明、というところである。

「それに、こういう廃屋だと、金目の物はもう持ち出されてるだろうしな」

そういう意味でも、探索の旨みはない、と言いつつ。
男は、相手の言葉に笑みを浮かべ。

「いいね。よっしゃ。
 せっかくだ、今日はオレが奢ってやろう」

じめじめ気分を吹き飛ばすには、相手の提案は魅力的であった。
男は、満面の笑みで相手に奢りを宣言すると。
廃屋をとっとと出て行く。

ティアフェル > 「よーし。もうこの話題、良そう。
 正直いたたまれん……」

 妙に引っ張ってしまった。わたしのせい。
 しかしもう充分であろう……遠い目で察した。

「もー。誤魔化してからに……。
 今度ね? 今度、憶えててやるからね!」

 誤魔化されてやらない鬱陶しい気概を見せて拳を握り。

「いいぇえ……心を込めてひと針ひと針縫います……」

 ピュアい反応には心を入れ替えるしかなかった。腹黒いわたしとさよならしよう…とできない決意を胸に、小さく首を振った。

「あ、刺さる……そんな「オレ別に普通の事してるだけだし」って対応が刺さる……。
 すみませんでした。今度は自ら生贄になるような、そんな人になれるよう精進しようと存じます……」

 少し大仰でちょっと無理な信念を抱きつつ、そんな人を犠牲にしようとした数分前の自分死ね、と頭を抱えた。

「あー! 云っちゃだめー! それは云わんといてー!! モテ男が非モテに云っちゃだめー! ガチの呪いくるって!」

 もっともな科白だが、今云われると時を経て非モテの呪いが降りかかりそうで恐ろしい。ぶんぶんと首を振ってナシナシッ、嘘だからー!と虚空に向かって上書きする。

「まあ、お金になるようなものは期待してなかったけど……暇つぶしになるようなものがあればと思っただけなものの……暇以外の何かがツブれた気がする……」

 面子とか。プライド的なものとか。はー。と嘆息してはそんな気分を晴らすべく。呑みの誘いに乗ってもらって、満足げな笑みを浮かべて。

「うっし、行こ行こ、ちょっとくらいの雨ならダッシュで回避よ。
 いやー、そんな感じでいつもごちそうになってちゃ悪いわよ……。
 縫いぐるみマジでがんばるわ」

 そんなもんでお礼になるかどうかはともかく。どうも金品ではお礼できそうもないのでそんな手しかない。
 何はともあれ、酒だ酒だ、と入って来た時とは裏腹に威勢よい声で楽し気な足取りで壊れた人形と恨み節満載な日記が放置された縁起の悪い廃屋を出ては、酒場に向かうのだった――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からセイン=ディバンさんが去りました。