2020/05/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区のどこか」にタマモさんが現れました。
■タマモ > ここは王都マグメール、貧民地区にある裏通りの一つだ。
まぁ、裏通りと言っても、少し駆け抜ければ大通りに出られる、そんな感じか。
そんな場所から、何人かの叫び声が響き渡る。
同時に、その裏通りから、大通りへと現れる男達。
明らかな恐怖の表情を浮かべる男達だが、なぜか全員が下着姿。
そんな連中が出て来れば、当然、場所が場所であろうと、注目は受けてしまう訳で。
が、それも気にする余裕はないのだろう、各々、そんな視線の中、逃げ去って行ってしまった。
そうなれば、周囲の者達が次に考えるのは、あの奥の裏通りで何があったのか、だろう。
しかし、そこへと足を踏み込む程、好奇心に駆られる者達は居ないようだった。
少なくとも、今、ここを行き交う者達の中には。
「何じゃ、しけた者達じゃのぅ。
これでは、大したものも買えやせん。
………あ、いや、だから追い剝ぎ紛いな事をしておったのか」
そんな裏通りの奥、そこには、一人の少女が居た。
異国風と言える着物を着付ける、狐の耳と、複数の尾を持つ少女だ。
その手には、少女の物とは思えない、何枚かの衣類がごちゃっと持たれていた。
後は、幾つかの財布らしき袋。
その様子から、ここで何があったのか、分かる者には分かるものだろう。
ただし、今回は一方的に、こちらが追い剝ぎをしたのではない。
今はもう居ないが、襲われていたのは、別の者だったのだ。
もっとも、この光景を見た誰かが、それを想像するかどうか。
すでに、その襲われていた者は、逃げてしまっているのだから。
■タマモ > そう、この少女は気紛れだ。
こうして人助けっぽい事をすれば、純粋に追い剝ぎを行う事もある。
かと思えば、相手を問わず、場所も問わず弄び、凌辱の限りを尽くす事も。
もっとも、己がその逆で、される側の立場の時もあるのだが…
気が付けば、少女は金色の悪魔と呼ばれるようになっていた。
良い意味では、悪漢等の連中から。
悪い意味では、一般人から冒険者等と言った者達から。
一部からは、捕らえれば賞金が出されると言う、賞金首扱いもされているらしい。
ちなみに、その行動範囲はかなり広い。
そんな話は、この王都から、シェンヤン、ティルヒア、そして魔族の国にまで及ぶ。
まぁ、そこまで各国を巡り、それを調べる者達も居ないだろうから、その事実を知る者は多くはないだろうが。
そんな少女が、今は何をしているのか?
別に、大した事はしていない。
いつものように、貧民地区を、適当に巡っていたのだ。
「むむむ…中身も、大して入っておらんか…
この服も、どうせ二束三文じゃろうかのぅ…?」
もそもそと、手にした財布の口を開け、中身の確認。
うん、ほぼ袋の重みか感じなかったのだ、入っていたのは端金だった。
衣類も、ところどころ擦り切れたり汚れたり、まともに売れるか分かったものじゃない。
はふん、軽く溜息を吐きつつも、ごそり、と取り出した風呂敷包みに、ちゃっかりと入れておくのであった。
■タマモ > その風呂敷包みは、ごそり、と元に戻し、何事も無かったかのように。
改めて、己の立つ裏通り、行く先と、来た道を交互に見遣る。
先は、先程の男達が逃げた大通り。
後は、己がここまで歩いて来た、裏通りの奥、入り組んだ通りだ。
入り組んだ、とは言っても、通り慣れた者には、そうは見えないのだろう。
時折、近道にしているのか、誰かが通っているからだ。
まぁ、逃げて行った者が、それに入るのだろう。
正直、危険なのを分かって近道をしているのだから、自業自得とも言えないが。
………うん、己もそれを狙う者の一人の時があるのだから、それは良しとしておこうか。
「さて、いつもの事じゃが…どうしたものか…
何か、面白いものでも、と思うたのじゃがな」
ぽつりと呟き、軽く考える仕草。
本当は、気分的に軽く遊びたかったのだが、あんな場面を見てしまったのだから、今回は仕方なし。
この後は改めて、そうした相手でも探そうと、くるりと踵を返す。
そのまま、奥へと向かい、歩き始めるのだ。
■タマモ > ぴくん、少女の耳が揺れる。
ふと足を止めれば、その視線が軽く横に向く。
まだ続く裏通りは、先の道と、左右にある建物の壁。
少女の視線は、その壁に向けられていた。
一見、特に変わったところのない、普通の壁だ。
しかし、良く見れば、その隙間に存在する、小さな子蜘蛛に気付くだろう。
力を持ったもの、ではない、どこにでも普通に居る子蜘蛛だ。
「………む…もう少し、先と思っておったんじゃが…
もう見付かったのか、相変わらず、仕事が早いのぅ。
仕方無い、戻れと言うならば、戻るしかないじゃろう」
そんな呟きを、誰に言うでもなく零す。
ぽりぽりと頬を掻き、その視線を上に向け…
とん、と床を蹴れば、少女の身はふわりと宙を舞う。
その勢いは、屋根の上まで衰える事はなく。
くるりと上空で回転をすれば、その勢いで屋根の上に、音も無く着地をして。
「次は、何をさせられるのやら…
主は、妾のはずなんじゃがのぅ…この扱いは一体…」
はふー、と長い息を吐けば、視線を富裕地区の方角へ。
再び、屋根の上をたん、と蹴れば、その場から姿は掻き消えた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区のどこか」からタマモさんが去りました。