2020/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > ――余りしない化粧を施し、いつも結っている髪も下ろして、不慣れなドレスを着こんで歩きづらいピンヒールを履き、賑わう夜の街頭に立つ女。
一見すると客待ちの新人娼婦のよう。落ち着かない様子で目線を漂わせ、時折声を掛けてくる者がいれば首を振ってすげなく距離を取る。
初めて街に出て客を取る娼婦が、金額や相手を慎重に選んでいるようにも見えるが――……。
実際はというと、そんな艶っぽい事情ではなく。近くに人がいなくなると、大きく息を吐き出して姿勢を崩して傍の建物の壁に寄りかかり、
「はぁぁ……寒い、ドレスさっむ。この時期つっら。……くぅ……ヒールが……痛い……娼婦大変過ぎっしょ……日頃お疲れ様っす……ッ」
偽娼婦はつくづく街角で客を取る娼婦たちの苦労が身に染みて分かって靴擦れが出来た右足のヒールを半分脱いで、寒々と肩を抱いた。
普段とは余りにも違う出で立ち。そして娼婦の真似事。何事かというと、ギルドに入った依頼のせい。
最近この界隈で、娼婦に相手をさせておいて支払いを踏み倒していくという、不届きすぎるヤリ逃げ野郎が出たので至急ふん捕まえて欲しいという依頼が出たのだ。
そして、生贄――もとい、囮として一人の女性冒険者が娼婦の振りをして街頭に立ち、目当てのヤリ逃げが引っ掛かれば、もう一人近くで待機させてある冒険者と一緒に捕らえるという、ありふれた作戦で今夜打って出ている。
今は一時人波が途絶えてこちらに注目する人間もいなさそうなので、近くの物陰でこちらの様子を窺いながら控えている筈の、今夜の相棒の姿を探して視線を向かわせ、アイコンタクトを取ろうと。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 派手な格好をした今夜の相棒からのアイコンタクト。
目立たぬように潜んではいるが……それらしい人物は見えないと知れば視線を巡らせ彼女の死角をさぐる。
だが、同じく怪しいものは見当たらない。
今夜はハズレか?
いや、あの場違い感ある服を着た彼女が怪しく見えたのかも知れない。
下地はいいのだが…場末の娼婦にしては出で立ちが少々派手すぎるうえに、服に着られている印象が拭えない。
「…所作に色っぽさがねぇんだよな…」
言っても仕方ないことなので、小声で小さく呟く程度。はなれた位置の彼女には聞こえないだろう。
こちらも異常なしだと小さく首を振ってサインを送る。
今日のところは一旦下がるか?
即席の相棒であっても集中力が切れてきているのはなんとなく遠目からでもわかる。
■ティアフェル > どうしても、色気が足りないので、とにかく盛ってみ?ということで。ギルドであれこれ検討してこうなったのだが――結果大分拗らせてしまった。せめて厚化粧とまではいかないのが救い。
一番最初は厚塗りし過ぎておてもやんになってしまって大爆笑をほしいままにした。
建物の陰に潜んでいる相棒と目配せし合うと、若干安堵し、そしてそこら辺で人通りが戻って来たので急いで壁から背を外し、脱ぎかけていたヒールを履きなおして、髪の乱れがないか手櫛で治して。
こなれてない娼婦です。ど新人です、と云うような娼婦スタイルを演じて、人並みに目線を流していたが。そこへたまたま違づいてきた男性からの言葉に瞬発的に目を剥き。
「は?! なにそれ、やっす! 安すぎっしょ…! いっつもそんなしょっぱいプライスで買っちゃてんの? 価格破壊もいいとこね…?! ないわー。ない」
不慣れな娼婦と見受けて、余程格安で買おうとしたのか、声を掛けて来た男に素っ頓狂な声を出してしまい。妙な注目を浴びだした。
作戦中だということを忘れて台無し状態だ。そして、そのまま男と揉め始めている。
「娼婦のご苦労を考えろ! わたしはともかくさ! 可哀そう! やめたげて!」
何故か娼婦側に立って、男性を叱る。――絶賛悪目立ち中。ターゲットもくそも誰もこなくなること請け合い。
■ブレイド > ギルドの仕事を受けて、今日はじめて会いそのまま仕事とあいなったわけだが…
短い時間でもわかったことは、この女冒険者、そこそこ、いや、だいぶポンコツであるということだ。
冒険者としての腕前がどうこうではない。
そのあり方がポンコツ。ポンのコツ。ギルド設立以来もっともギルドをわかせた女と言われていたのは記憶にも新しい。
なんでこんな依頼を受けてしまったのかと思うまもなく活気が少し出てきたか。
彼女も頑張って娼婦的スタイルを整える。
客らしい男も近づいてきたが怪しいところはみられない。すげなく断るだろうとスルーしていたのだが……
なにを思ったかものすごい剣幕でまくし立て始めた。
なにやってんだ。
「………え、えぇぇ……」
思わず物陰から姿を表してしまう。
これが続けば冒険者がはっているとバレる可能性もある。
なぜなら、叱り方が新人娼婦のそれではない。
娼婦の友達をもった人妻二十代後半女性のそれだ。しかも肝っ玉の太いやつ。
「あー、えーっと、ねーちゃん。これだけ出すからちょっと付き合ってくれよ」
硬貨の詰まった袋を横から差し出し、彼女の言葉を遮り
奥へと引っ張っていこうとする。バレる前に撤収するのがかしこいだろう、ここは。
■ティアフェル > さすがに大っぴらに『この女はヤベエ』みたいな程の噂は広がっていないはずだが――皆さん大人なので――性格難…と控えめにはその耳にも入っていたはずである。このデコボコしたコンビが結成された瞬間、ギルド内では『なんで君も組んじゃったの……』と周りが虚ろな目で見送っていたころだろう。
極めつけが、任務最中にコレである。爆安で買い叩こうとした客に喧嘩売る、という。まあ…時々は見られる光景かもしれないが、今やっては一番いけないことである。
なんなら四十路に脚を突っ込んだ肝っ玉母ちゃんみたいな応酬をおっぱじめちゃったバカと書いてティアフェルと読む女をなるべく速やかに回収しに来た相棒。
本来物陰から出てこない予定の彼が顔を出したもんで、さすがに『あ、マズ…』と当人も気づいて。
「あ、え、あー! ええ! それっくらいなら良くってよ。はい買われたー……じゃない。
お相手するわ」
焦って演技もできなくなった女のせいで、完全にコント状態と化してしまっている泥沼な現場。最初に声を掛けて来た値切り男は「ほんとにそれ……買うの…?」と怪しげな視線を投げかけていた。
「じゃ、行きましょ……」
冷や汗を飛ばしながら、わざとらしく云いながら俄か相棒の腕に腕を絡ませて立ち去ろう。人気のないところまで焦る気持ちを抑えて。
■ブレイド > 本当に何故なのか。かと言って放っておいたら彼女はこの仕事からひいただろうか?
いや、謎のポジティブさで一人でもいけますよへーきへーきとかいい出していたに違いない。
会ったばかりだがなんとなく、本当になんとなくだがそんな情景が思い浮かんだ。
逆クレーマーと化した相棒。
表情から状況を察してくれたか。ここでゴネられたり思わず知り合いであることをバラされた日には
ターゲットの顔を見ることもなく依頼の完全失敗になるだろう。
貧民地区というのはコミュニティーの力が強く情報の伝達もわりと早いものなのだ。
「あ、はは…じゃ、じゃあお願いするぜ。ねーちゃんよ。
オレが娼婦がどういうもんなのか教えてやるからよ」
根切り男には視線を送る。『ここは俺が食い止めるから早く逃げろ!』と。
彼女を少し引きずるように早足で店の中、貸し出されてる部屋に飛び込む。
そして開口一番
「ばかかテメェ!?」
■ティアフェル > ギルドで二人を送り出した時点で『あ…終わった……』と思われていたのは云うまでもない。
いくら、このポンコツをフォローしてくれそうな相手がいたとしても……彼には完全にフォローするには今回の依頼は荷が重すぎたろう。
何せ、基本はこの女が一人で街頭に立つのだから。見てるだけで胃が痛くなる…と他の面子は全員手を引いたというのに、とんだイバラの道に脚を突っ込んだもんである。
そして、フォローするにもどうやっても無理ある中、善戦してくれる相棒の足はこれ以上引っ張るまいと……したが、ポンコツやっぱ駄目でした。口元が引き攣りそうになって俯き加減で、肩を小さく震わせ。
「ま、まあ……(別の意味で)お手柔らかにね……」
新人娼婦の教育を買って出た変わった客、というようなキャラ設定で行くというのか、そんな科白を掛けられて、やっとやっとで言葉を返して、そして不審な目をしていた客だったが――何だか良く分からないような表情をして、去って行った。関わるもんじゃないのは理解できたのだろう。
そして、強制連行される心地で、隔離部屋に収容された瞬間どやされて、びく、と肩を跳ねさせアホ毛を寝かせながら。
「バカはやめてよ、アホまでにしといて……
~~~悪かったわよ~。ごめんって。
だってさあ……いくらなんでもさあぁ…小銭で娼婦買おうなんて間違ってるじゃない……仕事中じゃなきゃ、グーパンだったのよ? でも、一応そこは我慢して――すみませんでした。わたしが全面的に悪うございました」
謝罪に言い訳を織り交ぜていたが、ぐだぐだ続けかけた言葉がそちらを見て途切れさせ、即謝罪を重ねる。なんならすた、とその場で平身低頭の構え。
■ブレイド > 連れ込んだ先。
娼館の部屋なので、まぁ雰囲気や装飾はそれっぽくムーディーなのではあるが
そんなもの関係ないという空気。
誰もが誰も手を引いた理由がよくわかったし、自分たちを見送る受付の引きつった笑顔の意味も理解できた。
誰だこんなイノシシ娘にこの依頼受けるの許可したやつは。
実際客が全く寄り付かなかったことを観るに、ヤバさがなんとなくわかったのだろう。
自分と同じく、初めて見るのに何となく分かるポンコツオーラを感じ取ったのだろう。
さっきの男はむしろ小銭であってもよく買おうと思ったものだ。
「アホでも馬鹿でもどっちでもいいわ!アホが馬鹿の上位だってならそっち選ぶわ!!
ったくお前、お前なー!そりゃそうだが普通に躱しときゃよかったのになにやってんだお前!
あそこでグーパン出してたらオレがお前にグーパンしてたわ!!ったく…はー…今日はここまでだ。
明日もう一回、今度は多少はマシな演技しろよ?」
言いたいことは山ほどあったが、あまり怒鳴ったところで詮無きこと。
気持ちの切り替えは大事だ。色んな意味で。
■ティアフェル > ここがどこかよりも、何をしでかしたのかが重要。
お仕事モードの冒険者二人は、お説教される側とする側でわやわやしていたが。
とにかく自分が悪いのは明白なので詫びたが。そのお詫びも二回もやれば充分と思ったのか。
「ニュアンスの違いにわたしは拘って生きているのよッ。バカって云わないで! アホで!
……えぇー……明日もやんのぉー? もう無理じゃね?
てーかさ、あんたが女装して立った方がまだイケんじゃないの?」
再トライのお言葉に、ベッドの端にどさっと腰かけて、靴擦れの痕が痛々しい踵にヒールを掛けながらボヤいた。ついでに無茶振りをした。
「このかっこだってさあ……色々検討を重ねた結果なのになんか浮いちゃったし。寒いし足痛いし。
あんたが着た方がサマになるんじゃない? 胸はパットでも詰めてさ」
■ブレイド > 何いってんだこいつ。
口には出なかったが表情はそうとしか言えない顔になっていた。
なにを言ってるんだこいつは。理解できない。
「…おう、じゃあアホ。グレーターアホ。アホクイーン。
てめぇなぁ…オレじゃガタイで即バレだわ。
娼婦の衣装ってのは露出があんだろうが。多少ゴリラ感あったとしてもテメーのほうがまだ確率あるっての」
それもあるが、実際女装できない理由は他にもある。
娼婦の格好をするならフードとマントを外さなければならない。そうなってしまえばミレーとばれる。
「すねてんじゃねぇよ。えーっと、なんつったっけ?ティアフェルだっけ?
顔はぎりぎりマシだってのにことごとく言動がサル山のボスなのがわりーんだろうが。
多少は人里に慣れろ」
こちらも立ちっぱなしなのだ。
向こうもそりゃ疲れるだろうが、こちらだって立ってる時間は同じだし
消費する忍耐力はかわらない。
ため息を深くついて同じくベッドに腰掛ける。
■ティアフェル > 顔に何か、言葉が書いてあったが……敢えてスルーして、脱いだヒールを人差し指に引っかけてふらふら揺らしつつ。
「アホアホ云い過ぎ! さじ加減ってもんを覚えなさいよ!
ガタイって……そこまで良くないじゃん? 男にしちゃ小柄だし細っこいし。
ちょい肩幅の広い娼婦でいってみようよ」
いい加減な助言を重ねては、彼の事情など察していないので、やってGOと軽々しくプッシュ。
にへ、と化粧の乗った顔には似合わぬ気の抜けた笑みを投げかけて。
「そーよ。ティアでいーわよ。
うっさいわね! ボス猿に娼婦の役の囮なんて無理ゲー過ぎでしょうよ!
もう、裸になって立ってても無駄なような気がボス猿なりにしてるゴリよ!」
もちろん脱ぐ気などカケラもないが、例えそこまでしたって自分には厳しい役どころってのは今日だけで充分認識した。とうとう語尾がゴリになりながら頭を抱えて嘆き。
「わたしだってゴリラなりに頑張ったのよ~!」
確かにゴリラにしてはよく頑張った。だろう。
■ブレイド > 好き放題言われている。
こちらに落ち度があっただろうか?いや、あったかも知れないが。
目の前のアホの佃煮ほどのミスはなかったはずだ。
「はぁ!?ば…アホか!
見えてねぇだけだ。腹筋とかな顔立ちとかな!
つか、ここで客が来ちまったらお前どうすんだよ。メスとしてのプライド持てよ!」
一応馬鹿と言わない配慮。偉い。
だというのに、彼女は楽しそうに笑う。
結果はどうあれ仕事が一段落ついたので気が抜けてるのだろう。
「そうだな。ゴリラが馬子になる程度には頑張っただろうが…
いや、もう言っても仕方ねぇ…終わったことだしな。
じゃあもうこうなったらあれだ。
プロに手伝ってもらうか…立ってるもんは依頼人でも使えだ」
ゴリ語尾になる程度には自分が女であることを捨てているのはよくわかった。
冒険者としては正しい姿勢なのかも知れないが…見た目はいいのにもったいない話だ。
どっと疲れた。フードをかぶったままにベッドに寝転がる。
女装の線は諦めてくれるだろう。
■ティアフェル > 161㎝46㎏という、女子か、みたいな体型の18歳男子に何をどう否定されても説得力がないもんで。
はあん、と横に首を倒して見やり。
「顔なんて化粧でどーにでもなるし、腹筋なんて体型カバーのドレスで誤魔化せるっしょ。
声くらいじゃない? ネックは。
メスのプライドォ~? それっておいしいの?」
すっとボケてへらへらして、ついでに左足のヒールも脱いで足首を回した。
「ゴリラにしてはカワイイ方よ。多分。
えー? 女装しないのぉ? お姉ちゃんが可愛くしたげるのにー。ざーんねーん」
っけっけっけ。と嫌な笑いを立てて依頼人の娼婦を借り出すという現実的な案につまらなさそうな顔をして肩を竦め。
室内でもフードを脱がない様子を見下ろして。
「っま……それぞれ人には事情があるもんね……」
ぽつり、と視線を外しながら座った膝に頬杖をつき呟いた。
■ブレイド > 彼女の言いたいことはわかる。
男にしては小柄だし、軽戦士として動きを重視するため体を絞っているのだ。
多少の工夫でカバーは可能だろう。それでも嫌そうな表情。
「声ださねぇと客も引けねぇだろ。
なしだ、なし。
っつか、ギルドで厄ネタ扱いされてたのがよくわかったぜ…」
このやろう、ポンコツな上にいい性格してやがる。
「へいへい、そうだな。サル山に置いとくにゃもったいねーな。
……ま、そういうこった。オレにも事情はあるし…
なにより女装なんてなごめんだ。お前に任せるとアレになっちまうだろ。白塗りのバカ王子みたいによ」
軽口に軽口を返す。だが、なにか察したのか急にテンションが落ち着いたように呟くティア。
グレーターアホとはいったものの、勘はそんなに悪くはないようだ。
■ティアフェル > 見た所自分より軽そうな感じに、嫌な顔を一瞬見せる。
ちゃんとメシ食えや、と云いたくなるのを抑えて。
「口が聴けない娼婦だっているじゃない。なんとかなるなる。
わたし口パクしよっか?
……さっきから大人しく聴いてりゃエラそーに。
そーいうあんたはさぞかし優秀でミスもしない完ぺき人間なんでしょーね?
ちょっとでもしくじってみろ、爆笑してやるから」
上顎を持ち上げるような角度で目線だけ見下ろし形でイイ性格のポンコツは嫌味を切り返した。
「まー。進んで女装したいようなら……こんな職業選んでないわよねえ。
ブレイドは姉とかいないっしょ?」
弟とは、大抵姉に一度は女の子の服を着させられる可哀そうな生き物である。
頑なに女装を嫌がる真っ当な感覚の彼に勝手に憶測してぴ、と指先を向けた。
■ブレイド > 視線を向けてれば相手もなんか味のある表情を見せている。
何だこいつ。
「なんねーよ。娼婦側に合図してもらって二人で抑える。
こっちのほうが確実だ。あるもんは使わなきゃもったいねぇ。別に娼婦殺して回ってるとかそういうやつじゃねぇんだ。
ひとついっとくが……優秀でもねーしミスもするがな、次があるなら改善もするし反省だってすんだよ。
ミスって開き直ってりゃ、いっしょに下手掴まされた方は腹だってたつっての」
嫌味を返してくる相棒には、少しだけ声の調子を落ち着けて。
こんなんだから厄ネタ扱いなんだぞと。
ノープランであれば偉そうにといわれてもしかたないので新たなプランもそえて。
「たりめーだ。女装癖ってのもあるらしいがオレにはわかんねぇ…
っつか、なんだよ急に。たしかにいねえけどよ」
確かに姉はいない。
だが、何故そこに思い至り、何故それがわかったのかがわからず、驚いた様子で指先を見つめ。
■ティアフェル > っち、と黙って顔を反らして舌打ちした、口に出したらなんだかやるせないような話題でしかなかったからだ。
「まーね。でも、依頼人本人には囮役は無理っしょ。としたら、当てもなく出てくるかどーかも分かんない奴を探させなきゃなんないってことでしょ?
ヤツもその娼婦の代金踏み倒してんのよ? 向こうも恨み買ってる相手の顔くらい覚えててさすかに街頭に立ってても避けるだろうし。むしろ見かけたら逃げるようにしてる筈。
そもそも依頼人本人も探すほど手間暇割けないからこっちに回してるのもあるしね。
――どーせ、わたしご立派なブレイドさんと違って? 直情型ですけどね?」
依頼人をかり出してくるのは少し難しいのではないかと小首を傾げた。
皮肉は忘れないが。
「んー。わたし個人の見解としては……5人いたら1人くらいは女装に目覚めるものなのよね。
君はその目覚めない内の4人に入ったか。
やっぱそーか。良かったねー。姉がいなくってさ。いたら地獄だったかもよ」
何故いきなり家族構成に突っ込んだのか詳しい話はしないままけらけらと笑って。