2020/03/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区の裏路地」にフィルさんが現れました。
フィル > 夜が深まっても賑わう街はそれだけ色々な人々や、色々な商売が集まっているものである。
当然それだけの人や物が集まれば、真っ当な商売だけが行われるわけではなく。
一番幅広い人が集まる平民地区は当然ながら、治安の比較的いいはずの富裕地区ですら、一歩裏に踏み込めばそういった出来事には遭遇しかねないのだ。
治安のいい二つの地区でも絶対に安全でなければ、それは一番治安の悪い貧民地区でなど、輪をかけてであり。
息を切らしながら、時折あたりを見回しては身をひそめる場所を探す少年が走り抜ける、貧民地区の入り組んだ路地裏など最たるものかもしれず。

「はぁっ…まだ、きてる…?」

僅かに血をにじませる、頬の切り傷を手の甲で拭えば、また一つ後ろへと視線を向けて、そんな言葉を零していくようである。
すっかり上がってしまった息を整えようとしても、慌てていればどうしても荒れた吐息は直ぐに整えられることもなく。
カタリと夜風で路地裏に転がったゴミが音を立てれば、それだけでビクリと身を震わせてしまうのだから、緊張ぶりがうかがえるだろうか。
耳をすませばわずかに聞こえる、走り回るような足音に気づけば、積まれた空箱の陰に身を潜めていくことにななったようだ。

「そんなに…金目の物なんてもってないのに…」

貧民地区に配達を頼まれた帰りに、ちょっとしたことからからまれたようである。
何度か貧民地区に足を運んではいるものの、これまで大きなトラブルに巻き込まれたなかったのは、運がよかったのだろう。
裏道を通っての近道で、ガラの悪そうな奴ら数人に金目のものを狙われたといえば、よくありそうなことではあるが。
あまりそういったことに巻き込まれていなければ、逃げの一手を取ることになったのだ。
ローブのフードを目深にかぶりながら、いざとなれば性別含めた別人の姿に化けるか。
何かしら魔物っぽい姿に化けて、脅かしたりしてやりすごそうか、なんて考えを巡らせていくが。

フィル > 「もう大丈夫かな…?」

身構え続けてしばらくすれば、やがて走りまわるような足音は遠ざかり続けることになり。
そのうち完全に人の気配は消えていくことになったようである。
時折夜風が吹き抜ければ、当然風によって揺らされて音を立てる空き瓶などに、ビクリとしてしまっているようだが。
明らかに狙いを定めて走り回ってる人たちが近くにいなくなれば、一安心には違いないのだろう。
フードの中で耳だけは本来の姿に戻し、辺りの音をより聞けるように注意を払えば、少年は物陰からあたりをうかがう様にして身を乗り出していくことになり。

「…できるだけ気を付けて…ですね」

自分に言い聞かせる様に、ぽつりとこぼす言葉すら、響かないほどに静かにである。
入り組んだ路地裏を走り回ってしまったものの、幸い戻るべき方向だけは覚えていたようであり。
足音すら極力響かせないようにしながら、ゆっくりと少年が住処にしている部屋のある。
平民地区を目指して歩きだし始めていくことにしたようだ。
見つかって辺に変化を使って騒ぎを起こさなくて済んだのは、少年にとっても幸いかもしれないが。
一息をちゃんとつけるのは、安全な場所へと戻りきってからであれば、来た時以上の疲労を感じることにはなるだろう。
それでも、その分細心の注意を払えば、無事に帰路へとつけていったか―

ご案内:「王都マグメール 貧民地区の裏路地」からフィルさんが去りました。