2020/03/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「うぅぅ……、なんでよ~、やめてよ~、返してよ~」

 ゴロツキ相手には強気で勝気、足も手も出まくるような。ヒーラーにあるまじきやんちゃな性分だったが――、今、一頭の犬に対して非常に弱気な声を出して眉やアホ毛をへたりと撓らせて訴えていた。

 ――そこはとある人気のない路地の一角。遠耳に酒場の喧噪だの娼館からの悩ましい客引きだのが響いてくる。
 対面しているのは、大型で赤っ茶けた毛並みの野良犬。口にはなにかを咥えて、頭のいい犬なのか、力づくで持ち主が取り返せないことを見抜いて嘲笑うように時折尻尾を揺らしどこか小馬鹿にしたような視線をくれていた。

「もぉぉ~……そんなの食べられないでしょ、あんたになんの価値があるのよ……そこに置いてってくれたらハムとか持ってくるから、ね? ねぇぇぇぇー……」

 凶悪なモンスター相手でも怯まない癖に、犬には心底弱くて困り果てた声で交渉を試みるが、恐る恐る一歩近づくと、ダッシュして距離を開けられたり、「ワン!」と大きく吠えて威嚇してくる。
 一声吠えられただけでビクっと怯えて立ち竦むのを見て、ワン公面白がっている……そんな風に思えてならない。被害妄想でなければ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にグラントさんが現れました。
グラント > 金があり後腐れのない楽しみをするのなら貧民地区に来るのが一番。
それなりに行きつけな店に行く近道にと路地を抜けていたのだが途中で何かが見えた気がして足を止めてのUターン。
気のせいならそれでよく、もし誰かが襲われているのであれば助けてもという考えもあり。
そしてその何か見えたと思う路地を覗き込み…。

「…ティアちゃん?一体こんな場所で何をしてるん?」

見えた後ろ姿はこの間に共に仕事をしたヒーラーの少女。
何かと対峙しているように見えるが角度的に自分からは見えず。
全く知らないなら状況次第では放置だが仮にも背を預けた事のある少女。
放っておくという気にはならずに声をかけて近づいて行って…。

ティアフェル >  暴漢やらモンスターやらには問答無用で鉄拳制裁で済ますのだが……犬一匹には敵わない。絶対無理。近づくのも怖い。
 そして、犬はニンゲンから盗ったものをやすやすと返してやる気はないようで、一体どうしたら……半ば泣きが入りながら途方に暮れていると。

「え? あっ…! グラントさんんんー!
 めっちゃいいところに! 助けて―ぇ、犬が、犬がぁぁ…っ」

 知った声に振り向くと、見知った顔を見て安心したのか、大層情けない声を顔を向けながら、対面している野良犬を指差して、犬犬と訴えかけた。

「犬って大丈夫? 平気? 怖いとかない? そして時間ある?
 ぜひ何とかしていただけると、わたしはもう明日からグラント神と崇める覚悟もできている」

 かなり大仰な表現でこっちこっち、と路地に手招いて。
 対する犬は、「っちめんどくせえな」と云わんばかりに軽く半歩引いてこちらを窺っていた。

グラント > 「そうだよ、おじさんよ。
良い所って変なのに絡まれでも……犬?」

振り返った少女に軽く手を揺らして軽く挨拶。
仕事の時には見られなかった情けない声と顔、何事かと思うと犬と聞き覗き込めば野良犬がそこに居て。

「犬は得意だけどねえ。時間はまあ……あるよ。
それはつまり……あの咥えてるのを取り合えして追い払えばいいのかな?
ははは、そんな事を簡単に言ったら…おじさん、ティアちゃんをお持ち帰りしちゃうよ」

通りの抜けた先の酒場や娼館の並ぶ通りに遊びに行くだけだったので時間がありあまり。
それに情けない顔で助けを求める少女をほっとくことも出来ずに招かれるままに路地にと入り。
まあ任せないと笑みを見せて少女の頭を軽く撫でようと手を伸ばしてから入れ替わる様に犬と対峙し。

「ほれ、わんこ。おじさんにそれをくれるかい?そしたらこれをやるぞ?」

視線を合わせるように身を屈め、懐から取り出した干し肉を犬の前に見せて揺らし。
少しでも隙を見せれば咥えている物を一気に掻っ攫えるように開き手を意識し、犬と咥えている物に交互に視線を向ける。

ティアフェル >  地獄に仏、とばかりに彼の顔を縋るように見た。今にも拝みだしそうな勢いで。

「暴漢なら殴ればいい話なんですけど、犬ですよ。もうどうしたら」

 手も足もでない、と口惜し気に唇を噛み締めて俯き。犬めが、と犬を忌々し気に見やり、「ウルル…」と低く凄まれて「ごめんなさい!」と即謝罪していた。犬には限りなくヘタレ。

「そう、そうなの!
 ああ、もうー何でもいいからお願いしますよ!?」

 彼の確認するような声に何度もこくこくと首肯して見せ、そして、彼の科白を半ばほどながして、とにかくお願いしますと焦ったように返答した。
 笑みと頭を撫でる手にほ、と安堵の心地を覚えて。「グラント様…!」と両手を組み合わせて早くも祈りの構えに入った。

 そして、祈るように見守る中で。うまいこと干し肉なんかを持っていたので、野良犬としては食べられないガラクタにすぎない代物よりもおいしい肉に興味があるもので、ふん…と鼻をひく付かせて、警戒しながらも肉に鼻先を寄せ、咥えたものを吐き出してそちらに齧りつこうと口を開けて狙った。

グラント > 「それはそれで間違ってはないけど感心しないよ?でも暴漢より犬がねえ」

ゴブリンを平然と殴り倒すのに犬が苦手と可愛いと言っていいのかおかしくない?と突っ込むか悩むところ。
しかしながら唇を噛み締め忌々し気に野良犬を見ては凄まれて謝る姿は何故か可愛く微笑ましく見えるおじさんで。

「はいはい、それじゃ取り戻しちゃうよ。
そういう事簡単に言わない方が良いと思うんだけどねえ」

これは絶対に聞いていないなと判る焦った返答に後で言うのはただかと考え。
軽く撫でただけで祈りの構えに入られると流石に困った顔で頬を掻く。

「お前もそれよりこっちがいいだろ?ほれ、交換だ」

おやつ的に持っていた干し肉であるが野良犬には効果があった様子。
興味を見せた事に鼻の前で揺らして見せれば鼻が寄せられ揺らすのを止め。
咥えていた物を吐き出し口を開けるとその中に押し肉を押し込み、素早く咥えていた物を拾い上げ。

「ほれ、飯はやったんだ。さっさと帰るんだよ」

次には野良犬の目の前で大きな音を手を叩き、脅かして追い払い少女を安心させようとする。

ティアフェル > 「じゃあ何よ、好きにさせろっていうの? 絶対カチ割る一択っしょ。
 犬は無理、絶対無理。生涯無理!」

 感心してもらわなくって結構です、と少々むくれてそっぽを向く特攻型の犬ヘタレ。

「よーろーしーくーお願いしますー!
 んぇ? 何だっけ?」

 夢中で肯いて何を肯定してしまったのか軽く忘れた。
 しかし、今は急場をしのぐことに頭いっぱい。
 そして、上手に肉を引換えに犬の気を反らして取り戻してくれる様子に目を輝かせ。

「やばい! えらい! 出来る男…!」
 手放しで大誉め。
 犬に対処してくれるというだけで株が爆上げでした。

 犬はばく、と口の中に押し込まれた干し肉を噛み締めて、咀嚼してすぐに胃に収めてしまうと、咥えていたものも取り上げられて、大きく手を鳴らされると、ビク、と身体を揺らして、頭がいいだけあって分が悪いと感じ取ったのか「くぅ…」と弱声を出して背を向け、その場から立ち去って行った。

 そして、取り戻してもらったのは犬の唾液が付着した、赤みがかった橙色の石の嵌った銀のペンダント。鎖が切れてしまっていた。

 犬がいなくなって、胸を撫で下ろしながら、そちらに近づき。

「ありがとぉぉ…、本当に助かった! 取り敢えず拝んで置こう。犬除けのご利益があるかも知れない」

 顔をくしゃりと安堵に崩し、手を組み合わせて拝み始めた。

グラント > 「そんな事は言わないから安心していいよ。
遠慮なくカチ割っちゃいなさい、おじさんがその場にいたら殲滅しちゃうけどねえ。
犬だけはなんだねえ」

暴漢も野良犬も似たようなものだと思うのは苦手じゃないゆえの考えか。

「おじさんがティアちゃんをお持ち帰りしていいって言ってたでしょ?」

勿論当てにはしていないがそれでしょうと突っ込み。
この子、切羽詰まると普通に危ないんじゃないかと心配をしてしまう。
干し肉を押し込んだとはいえ、取り返したものを奪いに来る可能性はある警戒は解かず。

「これでもおじさんは出来る人よ。この前に見たよね?」

野良犬の相手程度でここまで褒められると流石に恥ずかしくて照れてしまい。

余程に飢えていたのか直ぐに干し肉を食べてしまった野良犬が飛び掛かってくる前に脅しの一音。
少女を相手に駆け引き?をしていただけに頭も悪くはない様子で去っていく野良犬を見送り。

「この程度ならいつでも頼ってくれていいんだよ。おじさん拝んでもご利益はないんだけどね」

そして取り返した物、犬の唾液に濡れているが鎖の切れたペンダント。
嵌まっている石と銀素材にそれなりに高いものに見えて。

「今度は取られるんじゃないよ。それと…ちゃんと話を聞いて返事をするようにねえ」

ペンダントの犬の唾液を軽く拭い、少女へと手渡しながらそんな事を告げて。

ティアフェル > 「じゃあ、感心してくれていいじゃないー。
 これからもドンドンカチ割っていくけどさ。
 ……駄目なものは駄目」

 人間苦手なものはある。理屈ではなく駄目なものは駄目なのだ。
 情けないがしょうがない。口惜しく唇を噛んだ。

「………そんな話でしたっけ……?」

 やはり聞いていなかった。
 そんなこと云ったか?と首を傾げつつ、冷や汗を滲ませ。
 去りつつも時折振り返り、警戒している気配に諦めた様に通りの向こうに犬影は消えていき。

「ほんとね! いーやあ、できる人が通りかかってくれてラッキーだったわあ。
 ヨッ、敏腕ランサー!」

 ガンガン讃えて行きます。軽く拍手しつつ感謝感謝で両手を組み合わせて見上げ。

「きゃあぁ、マジかー、超助かる!超嬉しいー! いやいや、拝みたい気持ちなのですよ。ぜひ拝ませてください」

 ありがたやありがたや、とご神体でも前にしているような勢いで拝んだ。取り返してくれたペンダントを受け取りながらほっとしたように両手で握り締め。

「ああ、良かったぁ……。本当に助かった。どうもありがとう。
 あ。えーと、お礼になんか……奢る?」

 犬に本気で襲われてるところを助けられたら、勢いで本当に何でも許してしまいそうな犬恐怖症は深々と頭を下げ。適当な返事をしてしまったことを気まずそうに頬をかきつつ誤魔化すように苦笑して。

グラント > 「それじゃ感心しておく事にするよ。
ジャンジャンやってくといいよ。
おじさんも苦手があるからねえ…」

唇を噛み告げる少女に仕方ないねと頷き同意を見せ。

「おじさんちゃんと言ったよ……
後、そういう事簡単に言わない方が良いと思うともねえ…。
これからは慌ててもちゃんと話を聞かないとお持ち帰りされちゃうよ?」

首を傾げる少女、よく見れば汗も見え仕方がないと息を吐き。
まだ振り返り名残惜しそうにしている野良犬が見えなくなれば警戒を解き。

「そんなお世辞を言ってもおじさんが照れるだけだからねえ?」

ここまで讃えられ拍手までされてしまうと年甲斐も照れる。
完全に困ったような顔になってしまい。

「野良犬の相手でも暴漢でもゴブリンでも何でも来なさい。
ティアちゃんがそうしたいのなら止めれないけど…おじさんもこうするよ?」

まるで神像でも拝むように拝まれると自分はこうすると少女の頭をまた撫でようとし。
ペンダントを握りしめる姿に大事なものだったのだなと判り。

「おじさんのお節介だから気にしなくてもいいんだよ。
走してくれたら嬉しいけど…この辺はティアちゃんには危ない店しかないと思うからねえ」

元々冗談だったのでお持ち帰りは忘れる事にし、奢って貰るのは助かるがこの辺りは危険。
どうしたものかと考えて……。

ティアフェル > 「うん、今後ともレッツぶちのめしで。
 グラントさんは何が苦手なの?」

 自分の苦手が露見してしまったもので、代わりに彼の苦手も知っておきたい。興味深そうに尋ねて。

「あっはは、そうでしたっけぇー。
 ごめんごめん。
 そうーねぇ。別にいいよ。
 持って帰られたところで喋る、呑む、食う、帰る。というまさかのド健全な展開をお見せしてしまう模様ですが」

 胸を張って宣言した。男女が同じ場所にいたって別に何もしない展開という奇跡の状況を作りし伝説のゴリラ。
 犬さえいなくなれば強気である。

「照れるがいい、存分にいい歳して照れたまえ」

 そういう様子を見るのは嫌いじゃない。ちょっとかわいい。
 何故かやってる方が威張り気味で大きく肯いてテレを強要。

「頼れる、頼れ過ぎる。
 困った時はダメもとで声を大にして呼んでみたい。
 神の名を」
 
 犬に脅かされてたところを助けてもらっただけであっさりと神に格上げして真顔でおかしな科白を口走っては、頭を撫でられて少々くすぐったげに笑い。
 取り戻してもらったペンダントは大事そうにウェストバッグに仕舞い込み。

「何て素晴らしいお節介……おせっかいは世界を救う。犬からティアを救う……。
 じゃあ移動する? やっぱり酒がいいかな? グラントさんの好きなとこでいーよ」

 この地区を離れてもいい。時間的に余裕があるならばと窺い見て尋ね。 

グラント > 「おじさんの苦手かい?それは秘密だねえ」

興味深そうな少女にそれは秘密と緩い笑みを浮かべて隠し。

「おじさんは気にしないけど本気にする人が居るから気を付けないと駄目だよ?
おじさんはそのつもりだったんだけどねえ、若い子と飲んで話すのってすきだしねえ。
一体何を考えたのかな?」

流石に同意がなければ手を出しませんと言い切る中年。
何を考えたのかと逆に少女を揶揄ってみたりとして。

「おじさんを揶揄って苛めるのは感心しないよ!」

さっきまで愛でるように見ていた少女にそう言われて慌て。
空気を変えようと少しだけお道化て見せて。

「おじさんから言うと…大声は変なのも呼び寄せるから逃げて欲しいんだけどねえ」

そんなに簡単に神様にしちゃっていいの?と神様そんなに軽くないでしょうと少しの呆れ顔で愛でるように頭を撫でて。
そしてペンダントをしまい込むのを見れば、今度は落とさないようにと。

「流石に規模が誓いすぎないかねえ?でもティアちゃんの危機ぐらいは救って見せるよ。
んー……じゃ、安全なところで一杯奢って貰おうかねえ」

そう言えば少女の護衛を兼ねて来た道を戻り平民地区へと向かい。
あちらの行きつけの酒場で少女に酒をご馳走になり楽しい時間を過ごしたとか…。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からグラントさんが去りました。
ティアフェル > 「えー。教えてよー、ケチー」

 不服気に唇を尖らせたが。

「はぁい、気をつけまーす。
 うん、ニュアンスが怪しかったのと、ほんとにいいのか確認入ったもので後ろ暗い意味だと思ったよ?
 とーぜんでしょ、こっちは嫁入り前なんですからね」

 警戒してナンボです、と至って真面目にお答えしたし、それならお持ち帰りで別にいんじゃね?と首を傾げ。

 照れろと強要すると少し慌てた様子におかしげに肩を揺らして「おもしろーい」とイジメヤメナイ。

「もー……じゃあ心で念じておくよ」

 仕方ない…と軽く首を振ってそう云うと簡単に神にしたからには、明日には簡単に降格しているかも知れない。そんな杜撰さだったが、地区を移動して店に入ることになり、犬から助けてもらったお礼ということでお酒をごちそうさせてもらい、感謝しつつ夜が更け切った辺りで「またねー」と手を振りさよならをした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からティアフェルさんが去りました。