2019/10/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にミシェリさんが現れました。
ミシェリ > あまり広くもない裏通りを窮屈そうに走るのは、まるで絵本に出てきそうなカボチャの形を模した馬車。
その中で座席で揺られる魔法使いめいた装束の女は、小窓に肘を置きながら、退屈そうに外を眺めていた。お腹を空かせた子に餌付けでもして一時の遊び相手になってもらおうと考えていたものの、空振り続きだったために溜息の一つも零れてしまう。

「……ん」

暗くなる前に場所を変えようかと考え始めたところ。馬車の進行方向を歩く少女を見つけて、暇そうに垂れてきていた瞼を上げる。後姿だけながら愛らしい雰囲気を感じ取ると、溜息を零したばかりの唇に笑みが浮かんだ。
そんな少女の横につけるよう黒尽くめの御者に一声かけて。

「こんにちは。……どちらまで?
 この辺りは物騒ですし……よろしければ、適当なところまで乗せていきましょうか?」

速度を落とした馬車が少女の横へ並ぶと、小窓を開けて、そこからにこやかに声をかける。

リムリア > そうやってしばらく進んだころ、裏通りには場違いな音が聞こえてくる。
振り返って確認してみると、やっぱりそれは想像どおりのものだったけれど、余りに想像とかけ離れていた。

「え? なんで、カボチャ…?」

そもそもごちゃごちゃとした裏通りに場所が入り込んでくること自体がかなりの無茶。
しかもそれが絵本に出てきそうなカボチャ仕様とくれば、さすがの少女も瞳をごしごしと擦ってしまう。
それでも魔法のそれとは違って消えることはなく。
轢かれてしまう前に道を譲るように脇へとずれた。

「え、えと……この先の、鍛冶屋さんまで……なんですけど。
 注文の品が遅れているとかで催促を……」

通り過ぎるかと思われた馬車は、けれどもすぐ横で止まってしまう。
その窓から顔を出したのは、らしいと言えばらしい帽子を被った女性だった。
とりあえず、貴族かもしれない相手に失礼にならないようにぺこりと頭を下げて。
乗せてくれるということだけれど、素直に従って良いものなのか判断に迷ってしまう。
けれども、この調子だとギルドが忙しくなる時間までには帰れそうにもないのも事実で。

ミシェリ > 並びかけた馬車から少女の顔を眺めて、口元の微笑みを深めていく。後姿から想像した通りの可憐な容姿を、頬杖をついたままで暫し見て楽しんで。

「鍛冶屋…ですか。
 ……でしたら、お昼休みを取っているかもしれない、今くらいが訪ねるのにもよさそうですね」

行き先を聞いて、正面の小窓から外を確認する。行先を御者に伝えているような短い会話を終えた後、改めて少女へ視線を戻す。
控えめながらも上等な素材で飾りが施された扉を開き、手招きをして。

「こちらは特に用もなく、街を眺めていただけですから…どうぞ」

あくまでも親切を装った表情で呼びかけて、手招きをする。少女が乗り込んでくるようなら、馬車は再びゆっくりと走り始める事だろう――。

リムリア > 「え…えっと……その……」

どうしたものかと迷っているうちに、どうやら乗ることが当然といった流れになってしまう。
良く知らない相手のお世話になるのは申し訳ないのだけれど、相手が女性で親切心からの申し出らしければ、無碍に断るのも悪い気がするわけで。

「あの、それじゃあ……お世話になります。」

ぺこり、と再度頭を下げて、そのカボチャの形をした馬車へと一歩足を寄せる。
一体どういう造りになっているんだろう、とまじまじと眺めてしまうけれど、
上等な装飾も付けられているところを見ると、本当に魔法の馬車というわけではなさそうで、安心したような、ほんの少し残念だったような微妙な心持ちで。
少々おっかなびっくりな様子で馬車へと乗り込めば、ゆっくりとそれは動き出すだろうか――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリムリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミシェリさんが去りました。