2019/08/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 貧民街の夜。
余程賑わっている区画でなければ治安はお察しの通りだし、繁華街であってもトラブルには事欠かない。
そのような場、そのような時に、供回りも付けず、フラフラと遊び歩く小さなシルエットが一つ。
厳密に言えば、何処ぞの荒くれ者集団の頭目とやらに、求められていた帝国産の酒を納入した後。
夏季の高温は品質保持の大敵で、温度と湿度を管理をできるよう魔術的な処置までした代物だから、金額は言わずもがな。
それでもポンと現金払いで事が済むのだから、貧民地区といっても、金がある所にはあるらしい。

「ま、踏み倒そうとしたら、物理的に踏み倒してやるだけじゃが。」

そのような剣呑極まりない呟きは、こじんまりとした背丈に見合う子供じみた声音で。
商いが終わったら草々に退散する予定だったのだが、上機嫌な買い手によって、何か意匠の良く分からない宴会に引き摺り込まれている。
頭目と縁があるらしい酒場を丸々借り切っての乱痴気騒ぎ。
呑めや歌えや喰えやと、人間の本能丸出しで、気品の”き”の字も見当たらぬ。
王城等での宴に比べれば気楽なものではあるけれど。

ホウセン > よく分からぬ宴の、良く分からぬ飲み物食い物。
小さな手が両手で抱えている酒盃の中身は、幾つかの安酒に、果汁などを加えたものらしかった。
手を加える事で、元々の味と価値を幾倍かに引き上げる努力は嫌いではない。
が、どうしてこんな量なのか。
エールでも注ぐようなジョッキに並々と注いでいるのは、どうにもバランスが悪かろう。
呑むのが遅くなれば温くなるし、そうならぬ内に空にせよという意図だとでもいうのか。

「いや、特に不手際があった訳ではない故、気にせんで構わぬが…
 暑ぅないのか?」

そしてこのポディションが、良いのか悪いのか。
どうやら頭目の客人扱いとされているようで、一応の礼を保って遇されていた筈だった。
それが、時間の経過に比例した参加者達の血中アルコール濃度の上昇に伴い、扱いがフランクに。
雑に扱われているのではないけれど、端的に言うなら愛玩動物扱いだ。
今も三人掛けのソファ…ではなく、腰掛けるお歴々の膝の上が、定位置。
リレーのバトンのように、一定時間で隣へ譲られる身の上。
抵抗するのも抗議するのも今一格好が付かぬから、されるがままになっているのだけれど。

ホウセン > 何かしら、よからぬ行為にシフトする気配があったなら、面食いの妖仙が黙ってはいないのだろうが。
幸か不幸か、否、概ね不幸なことに、本当に愛玩動物扱いだから性質が悪い。
噛み付くに噛み付けぬ、真綿で首を絞められているような選択肢の少なさに、小さく嘆息した。
周囲では、酒精で理性の箍が緩んだ者同士が、酒場の端で彼是と始めているのに。
貧民地区の娼館にでも繰り出そうかという予定は、斯様な具合で宙ぶらりん。

「何ぞ、知った顔でもあれば、そやつに押し付けて退散もできようが。」

等とつぶやき、酒盃をぐいっと飲み干す。
子供に酒を提供することは咎められぬのに、妙に良識的なお歴々のアンバランスさに、多少辟易しているらしい。
近くを通り掛かった給仕と思しき女に、次の一杯を持って来るよう告げる。
黒い瞳を店内に向けると、机を並べた通常営業では店に入りきらぬ人数のようで、もしかしたら臨時に人を雇い入れているのかも知れぬ。
今一度、空から垂れる蜘蛛の糸を探す心地で、視線を走らせる。

ホウセン > 生憎、見知った顔は見出せず。
精神衛生上、きっと、”顔繋ぎ”の為に必要な時間なのだと自分に言い訳をするだろうが。
その後、何かの弾みで遁走できたかも知れぬが、それはまだ分からぬ事で――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からホウセンさんが去りました。