2019/07/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリタさんが現れました。
リタ > ここは貧民区に存在するバー、名前はマスカレード。カウンター席は6、テーブル席は1という、大層こぢんまりとした店だ。
料理の味はそこそこ、酒の質もそこそこ、お勧めはシェパーズパイ、ポテトサラダと一般大衆向け。

客も既におらず、店員は一人、カウンター席に座りながら本日の食事を摂っていた。
勿論売れ残りのパイとサラダである。
もう客が来ないと思っているのか、料理の傍らにはビールの入ったグラスが置かれていた。
今、最後の一欠のパイ、それがフォークで刺され、店員の口へと運ばれた。

「…――ぷはぁ!…はい、今日もお疲れ様でした。…げふぅ。」

パイをビールと共に胃へと流し込めば、大きくゲップをする店員。
お下品な自分に少々恥ずかしくなったのだろう、、誰も居ない店内であるのに辺りを見渡し、照れくさそうに手を口に翳した。
一人の時なんてこんなものである。激しくおっさん化が進むのも仕方ないであろう。

リタ > 唐突であるが、この店のメニューのジャガイモ率は高い。
安く、腹に溜まり、保存も難しくなく、調理次第食事にも酒の肴にもなる万能食材。
だから今日のメニューも芋々しい。
しかし毎日ジャガイモ中心の料理を提供する訳にもいかない。
当然客はそんな店を望んではいない。三日続けばきっと、常連客が文句を垂れて来るのは間違いない。
大手を振ってジャガイモを提供させるためには、看板をバーから芋専門店に変えなければならないだろう。
流石にそれは少々憚られる。

「あーもう、ジャガイモ専門店にしちゃおうかな。うん。」

少しも憚られず思考がだだ漏れになっているのはきっと、日頃ストレスを溜め込んだ体に酒が入ったからであろう。
店員はグラスにビールを注ぎながらご機嫌そうにジャガイモソングを歌っている。

リタ > 認知度が非常に高い一般的な童謡。その歌詞の殆どがジャガイモという単語で埋め尽くされた歌。
そんな歌を歌いながらビールを飲む店員。
今更ながら店を閉めていないのに気づいたのか、ビールのグラスを指で軽く突くとカウンター席から立ち上がり、店の扉へと足を進めた。
何の気なしに扉を開けば、生ぬるい風に乗った虫の声が店員の耳に入ってきた。
アルコールで火照った頬に当たる風が気持ちいい。

「ふぅ……明日も暑くなるのかなぁ…んー、明日は冷たいものにするか…冷たいもの…冷たいもの…
――ヴィシソワーズ?なんて。アハハ。」

ジャガイモから離れる気のない思考に対して自虐の乾いた笑いを夜空に吐き出す店員。
そのまま夜空を見上げれば、瞬く星々がジャガイモを象っているかのように見えた。

リタ > 「…よっし。」

たった今作り出したジャガイモ座を暫し眺めていた店員は、
その別れを惜しむかのようにジャガイモ座にバイバイと手を振り大きく息を吐いた。
店内に戻る足で閉店が告げられるプレートをドアにぶら下げながら扉を潜る。
鍵がかけられるも店の明かりは点いたまま。これから店員は明日の準備、軽い仕込を始めるのだろう。

明日のメニューが決まったのだろうか、もしかしてジャガイモのメニューなのだろうか。
それが判るのは明日、この店に足を運んで下さるお客様だけである。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリタさんが去りました。