2019/07/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にフラニエータさんが現れました。
■フラニエータ > 貧民地区のとある酒場にて。
他の客はおらず、お世辞にも繁盛しているとは言えないこの店で、
女はいつものようにカウンター席の一番端に陣取り、頬杖を付き、
交差させた脚をこれ見よがしに斜めに投げ出してスパークリングワインを飲んでいた。
「…コレが無ければこんな店、来ないのにね…?フフ…」
スパークリングワインをグラスで提供してくれる店は多くは無い。炭酸が抜けてしまうからだ。
それを目的にしている女は、何度かこの店に足を運んでいる。
店主に向かって嫌味とも取れる言葉を吐き、グラスを揺らす女に対して、店主が無言なのはその所為もあるのだろう。
尤も女を歓迎しているかは別の話である。
男女構わず口説き、どこかへと連れ去る女はある意味、営業妨害でもあるのだから。
■フラニエータ > 他に客が居ない所為もあるのか、女はいつもよりも大人しい。
扇情的な仕草も、眼差しも向ける相手が店主しかいないのだから、飲む以外の事が無いのである。
傍目、退屈そうにも見えるのだが、その状況に不機嫌な訳でもなかった。
寧ろ対外的な全てのものを脱ぎ去る事が出来る貴重な時間。
だから女は誰に見せるわけでもない小さな笑顔を浮かべて、グラスを傾けているのだ。
「…アレ、ある?、あったら頂戴な…」
店主にそう告げれば、無言でカウンターの上に運ばれる皿。その上には赤い干し棗。
女はその内の一つを摘み、口へと運ぶ。
「――…フフ…おいし…」
どうやら女の舌を満足させたのだろう、満面の笑みを浮かべながら呟いた。
恐らく誰も見た事の無い女の微笑み。それが今、店主にのみ、向けられていた。
■フラニエータ > 数杯の酒を飲み終る頃には種だけを乗せた皿と少量残ったワイン。
女はそれを一気に飲み干すと、ゆっくりと席を立って巻スカートを整える。
「さぁて…ご馳走様…また来るわ…」
カウンターの上に乱雑に置かれた小銭、そして空になったグラス、皿。
それらを残して女は貧民地区の闇へと身を沈めていく。
女にとっての今日はこれから始まる。今宵は誰を標的にするのか、そしてその標的がどうなるのか…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からフラニエータさんが去りました。