2019/06/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリタさんが現れました。
リタ > ここは貧民区に存在するバー、名前はマスカレード。カウンター席は6、テーブル席は1という、大層こぢんまりとした店だ。
料理の味はそこそこ、酒の質もそこそこ、お勧めは多分…白身魚のマリネ、サモサと一般大衆向け。


こんな朝から店員は調理の真っ最中である。
朝一番に市場に行き、戻ってきて、そして今晩の為に仕込みをして寝る。これが店員の一日。
店の扉が開いているのは換気の為なのだろう。
昨晩の酒の香りや湿気が朝日に誘われるように店の外へと逃げていく。

「…ふぅ、こんなもんかな…――ん、なかなか。」

挽肉と葱を油で炒め、香辛料を効かせたもの。ほんの少し湯掻いた根菜を入れて別の食感を加え…
店員はビール瓶を片手にそれを味見している。俗に言うラッパ飲みである。
凄くおっさん臭いが、店は閉まっているんだから何をしたっていいだろう精神らしい。
店員はその炒め物の熱を取りながら、保冷庫から粉を練ったものを取り出した。
同じ位の大きさに千切り、棒で伸ばして皮を作っていく。

「…もう朝になってるし…早いよ、もうちょっと寝てなよ…少し位寝坊しても誰も怒らないから…」

さんさんと輝く朝日さんに語りかける店員。ほぼ毎日同じような事を言われる朝日さんもたまったものでは無い。

リタ > 同じような大きさの皮を作るのが面倒臭くなってきた店員。
丸が徐々に楕円になったり、四角くなったり…あまつさえ星型になっているものさえある。

「食べ物で遊んではいけません。後でちゃんと美味しく頂きます。うん。」

そんな事を宣う店員の手元、その顔には串で“BINGO”と書かれており、スマイルマークまで描かれている。
明け方のテンションはこんなものである。

リタ > 時折我に返り、皮作りの作業に戻るが、先ほど作った当たりの皮はそのままだ。
自分で食べるのか客に提供されるのかは解らないが、大事に取り置いているのは結構、上手にできているから。

「ん、ちょっと食べてみよっか。」

皮を一枚手にして先程作った挽肉の炒め物を三角に包み込んだ後、
フライパンを熱し、少々多めの油を注いた後、それを傾けて油溜りを作って揚げ…皮が狐色になれば完成だ。
揚げたてホクホクのそれを口に入れ、味を確かめる店員。

「…――しほ、はりないあなあ。ほっほほいほーがひいはも。」

通訳すると、『塩、足りないかなあ、もっと濃い方が良いかも。』である。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

すぅ。はぁ。店の前で深呼吸。
胸に手を当て、心拍数確認。
多少なりとも、リズムが早い。緊張ゆえのものであることは自明。
しかして、男は目を閉じ、深呼吸をし。いざや、と目を見開くと同時に開いている扉に身を躍らせ。

「やっほーリタちゃん。ちょっと話があってきた……」

そこで、男は動きを止める。
話があって来たんだけど。その『んだけど』の部分が発言されることはなかった。
目の前で。知人兼協力関係兼敵対者兼割とお気に入りのおもちゃというなのお嬢さんは。
明らかに仕込みをしているのだが。男から見たらそれは。

「あ、つまみ食い」

なんて漏らしてしまう風景で。
いや、男だって、仕込みの途中で味見をすることがあることくらいは知っているし分かっているけど。
そう。目の前のお嬢ちゃんが酒を飲んでいなかったらそうも言えたかもしれないけど。
なんだろう。すごい可愛らしい。さながら『独り身ウーマンの安息日の早朝』という風情で。
思わず、男はぷっ。と息を噴出してしまう。

リタ > 独り身ウーマンの安息日の早朝、とはかなり的を射ている。ぶっちゃけこんなもんである。
まだ身形がまともな分、他人がみても許される範疇であろう。本来はもっと酷い。正直見せられない。皆そうだと思う。きっと。多分。

閑話休題。

ごくりと喉をならしたタイミングでの彼の来店は、結構店員を驚かせた様子で。
慌てて飲んだ為、揚げられた皮が喉に当たってちょっと痛い。

「…ケホ、ケホ…ん、何?こんな時間に…まだ店、開いて無いよ?」

ビールでそれを流し込むと、こんな時間、わざわざご来店下さった彼に向かって視線を送る。
少々嫌味な表現なのは、お気に入りのおもちゃと表現して頂けたお礼である。

「…話?何?――あー、丁度いいや。味見してみない?」

彼の返答を待たずに三角のアレを作り、さっさと揚げ始める店員。
自分で食べる為に作ったそれよりも若干丁寧なのは、やはり彼がお客様だからなのであろう。

セイン=ディバン > 意を決して踏み込んだら思いっきりだらーん、とした姿を見せられ。
男としても、覚悟が斜め方向にばびゅーん、と上滑りさせられてしまったという思いもあるが。
丁度目の前でむせっている相手を見れば、悪いことをしたな、という思いの方が勝る。

「いや、知ってる。だからこそ来たんだけど」

くくっ、と喉を鳴らしつつ、口元を押さえる男。
だが、相手がむせ返るのが止まり、話が進むのであれば。
男は微かに真剣な表情になる。

「お、いいの? じゃあご同伴に与らせてもらおうか。
 ……しかし、随分と楽しそうだね」

相手の厚意に遠慮なく乗っかりつつ、カウンター席へと。
揚げ物特有の音を聞きつつ、嫌味に指差す方には……。
相手の作った。可愛らしくも様々な形の皮。
ニヤニヤと相手を見ながら、小声で。

「貧民地区の一部の娼婦の間では【仮面舞踏会の王子様】なんていわれてるのに。
 女の子らしい一面を見ちまったなぁ」

と囁き、腹を抱えて、声を殺しつつも盛大に肩を揺らす。

リタ > 「なーに見てんの?――はい、どぞ。」

彼の視線、店員の作った様々な形の皮に向けられるそれを遮るかのように身を乗り出し、配膳する店員。
まあ、正直見られたくないし、言及されたくもないわけで。
カウンター席に座った彼に届けられたのはコップに入ったただの水。
そして油取りの紙に乗せられたサモサのようなものも。
開店前の待遇なんてこんなものなのだ。

「仮面舞踏会の王子様?…洒落てるなぁ…今度お礼、言っといて。うん。
――ほらぁ、笑って無いでさっさと食べる。んで、話って何?」

あからさまに笑いを堪えている彼にジト目を捧げつつ、急かす店員。
夜、働いた後に食べるには少々控えめな味付けのサモサは、油で揚げていてもお酒のアテにも少々軽いと思う。
酒飲みの彼の舌なら、きちんと評価してくれるに違いない。
そんな打算を含みながらも、彼が何故こんな時間に来たのか訊ねて。

セイン=ディバン > 「わぁお、美味そうっ! いやぁ、ありがたいありがたい」

する、と出された水とサモサ風何か。それを見て、男が小さく拍手をする。
やや大げさだが、そこには嫌味などなく、本気で喜んでいるのが相手にもわかるだろうか。
瞬間、男の腹が盛大に音を鳴らす。無理もない。本日はまだ何も食べていなかったのだから。

「情報収集してると娼婦はお友達になるもんで。
 結構多いよ? お金取らないからリタちゃんと寝たい、ってやつ。
 んむ。いただきます」

ケケケ、と笑いつつも、どこか優しい声色。
相手の人望を羨んでいる、といった風情か。
そのまま、相手に促され、はむ、とサモサへと口をつける。
瞬間。満面の笑み。にま~、なんて顔が緩んでいる。
揚げ物でありながらも味付けは穏やか。一日の初めの飲食物としてはその優しさが非常にありがたく。
まぁ後は、ぎっとぎと油物が厳しくなってきたお年頃というのもある。

「んまっ。んまぁ~! これいいなぁ……!
 あ、え? 話? ……あぁ、そうだったそうだった。
 いやぁ、いろいろと聞きたいことあってね?
 まず一つなんだけど……『アイツ』。この店のオーナーってことで間違いないんだっけ?」

うまーい、なんて喜びつつ。話を切り出す男。
もっしょもっしょ、と口は動き続けているが。表情は真剣そのものだ。

リタ > 美味しそう、と料理を評価してくれるのは非常に嬉しいのだけれども、
その後、その口から発せられている言葉がそんな感情を忘れさせてくれる。
そんな関係が楽しくもあるのだが。

「え、娼婦から?男娼、じゃなくて?…うっわ複雑…どーせ私の外見だけでの感想でしょうに。
――っていうか、娼婦と何話てんのよ…。」

彼の感想にお酒に合いそう?なんて返答しながらも、少々味付けを変えてもう一つ揚げる店員。
今度は胡椒たっぷりの刺激的なお味のソレを拵えながら、続けられる質問に答える店員。

「ん、そだよ?」

揚げられたそれを配膳しながら小首を傾げ、それが何かあるの?と訊ねて。

セイン=ディバン > まるで餌貰ったひな鳥の如く。
あるいは、育ち盛りの子供の如く。
むしゃむしゃと食事しながら。しかして。
相手の漏らした一言には苦笑を返し。

「娼婦娼婦。男娼でなくて。えー、いいじゃん。見た目だけでも、興味を持たれる内が華でしょ。
 いやぁ、ついつい酒が進んじゃって。てへ。
 でも、マジでリタちゃんにあこがれてる子もいるみたいだぜ?」

お姉さま~、なんて言ってたよ、などと言いつつ。
水を飲み、ぷはぁ、と息を吐く男。
質問に対して相手が返答してくれたのであれば。う~ん、と首をかしげ。

「いやぁ、何かがある、ってわけじゃない。
 アイツが酒場のオーナーをやろうが、問題なんてないさ。ただ……。
 ……どうして、そうなったのかなぁ、と疑問でね」

ふ、と息漏らし、天井を見る男。
ちら、と相手を見つつ。真剣な様子は崩さない。

リタ > 男の人は幾つになっても子供っぽい所がある。それが今、裏付けられた。
いい歳のオジサンが可愛い姿を晒してくれれば、店員もほっこり笑顔になる。

「興味持たなくていいから店に来て欲しいんだけどねぇ…口が軽いのって敵作るから、気をつけてね。
――私に?こんな時間に酒飲んでおじさんと話してる私に?
…ちょっと考え直した方が良いと思うよ、その子。うん。」

お粗末様、と伝えながら油の含んだ紙を回収し、捨てればカウンターをダスターで軽く拭き。
すぐ後に白身魚を保冷庫から取り出し、内臓を取り、洗って三枚におろし始めた。

「ん、本人に聞けば?教えてくれるかどうかはわかんないけど。それだけ?」

暗に、知っていても自分の口からは言えない、そう伝えながらも淡々と魚をおろしていく店員。

セイン=ディバン > 「それ、前も聞いた気がする? いや、別のヤツが言ったのか?
 あはははは、自己評価と他者からの評価ってのは乖離するもんだよなぁ」

相手の言葉にも、楽しそうに笑う男。
そういったところもまた子供っぽくはあるが。
相手が手際よく片付けや、調理を始めるのなら。
それを邪魔しないようにしつつ、会話を続けていく。

「まぁ、そうか。そうしてみるよ。
 いや、ほかにも聞きたいことはたくさん。
 例えば……じゃあ、リタちゃんとアイツはどう出会い、どう知り合ったのか、とかね」

く、と水を飲みつつ。更に質問をする男。
その雰囲気は、いつしか冒険者としてのそれに近くなってきていた。

リタ > 一口大に切り揃えられる白身魚の身がトレイに移されていく。
黙々と作業をしながらも、店員は彼の言葉に答えていた。

「勝手に憧れられて、勝手に幻滅されてもねー。
好きにしていいとは思うけど、こうして本人に伝わるとアレだしね。うん。」

「…んー、偶々酒場で知り合った。ここじゃなくてね。それで、話している内に雇われたってだけ。
片手間でも良いって話だったからね。
――で、なんでそんな事聞くの?…あー、若しかして売るつもり?」

作業を終えたのだろう、魚を片付け流れる水で手を洗いながらの言葉。
もし情報を売買する為の質問ならば、もうこれ以上答えないよ?と言葉を添えつつ、
濡れた手を拭き、その手をタバコへと伸ばした。

セイン=ディバン > 相手の調理を見ていれば、その技量の高さが分かる。
この男は、以前妻の姉貴分の存在……とある魔王に、料理の技術を叩き込まれている。
今や、人間離れした調理技術、知識の持ち主であり。
『たとえ毒に犯され、例え腐り果て、例え食せる部分無きものからでも料理を作れる』ほどになっているわけで。
そんな男から見ても、相手の調理はさすがの一言、であった。

「かはは、そりゃあそうだ。他者に幻想を抱くのも、人間よな」

相手の言葉に笑いつつ、どこか寂しそうにする男。
男もまた、そういったことの経験があるのかもしれない。

「……へぇ。そうなのか。つまり、最初からリタちゃんを誘うつもりじゃなかった、ってことか?
 あぁいや。でもアイツならリタちゃんの素性を知ってて勧誘にきた可能性も?
 ……って、違う違う。なんか……。なんか、この間アイツと出会った時に。様子が変だったからさ」

う~ん? と考えこんでいれば、切り返すような言葉を投げられ。
男は、慌てて両手を振る。そのまま、相手がタバコを吸おうとするのなら。
男も、懐から細巻を出す。

「なんつーか。いつものアイツじゃねぇっつーか。
 なんか、思いつめてるっていうか……。
 それが、イヤに気になってさ」

遠くを見るようにする男。その表情と声色には、嘘はまったく感じられまい。
なにせ、本音である。本心、心のそこからかの存在のことを案じているのだ。

リタ > 彼の視線は料理を嗜むもののそれ。
人並みかほんの少し上、そんな程度しか技量は無い店員は、度々彼の視線が気にはなっていた。
しかし、彼がどの程度の技量を持つか知らないのであり、そんな状態での彼の視線への感想は「自分で作れ。べーだ。」であった。

「そうそう。セインさんも私とか、彼女とか…に、幻想抱いてるでしょ?
本当の私、本当の彼女…知るためにはやっぱり、それなりの事しないとね。うん。
――…んー、素性は知らなかったとは思うよ?わかんないけど…」

店員は自分のタバコに火をつけると、彼の細巻へとそれを伸ばして火のお裾分けを。
彼の細巻が赤く染まったら、店員はタバコを大きく吸い、煙を天井へ吐き捨てた。

「…色々考える事でもあるんじゃない?セインさんが気にしなくても…
あー、若しかしてホレた、とか?ああいうのが好みなんだー。へー。ほー。」

にたー、と笑いながらとんでもない事を放つ店員。
口調からは冗談半分本気半分、というったところか。

セイン=ディバン > 基本的に、冒険者とは飢えている生き物である。
いや、飢餓的な飢えではない。仕事の途中の食事の話である。
大抵は保存食。酷い時は食事抜きもザラ。
なので、男は料理スキルを持ち、料理もできるが。基本的には。
『面倒だからお金払って食事します』な人間である。怠惰万歳。

「……い~や? 幻想なんて抱いてねぇよ?
 人にはそれぞれの在り方がある。善も悪も、美も醜も、そいつだけの宝物さ。
 あえて言うなら、他人様には迷惑をかけないようにしようね、ってくらい」

真面目な顔のまま言い、火を貰う男。
他者を害する生き方をしてきたこの男が言うと、冗談にしか聞こえないが。

「ふむ……。そんなもんかね。
 まぁ、アイツがどう生きようとアイツの勝手だけど。
 ……ん? 俺が、アイツに惚れてるかって?
 ……まぁ、そうだな。気になってる今の状態を表するなら、そうなのかもな」

んあ~、と悩む男であったが。相手にからかわれれば、意外なほどに素直にそれを認め。
そのまま、相手に同じような笑みを見せる。

「でも、好いたの惚れたの、って話なら。
 それこそリタちゃんこそ、だぜ?
 結構口説いてるのに、なびいてくれねぇしさ。
 いつになったら、俺の愛を受け入れてくれるのさ」

相手の顔を真っ直ぐ見つつ、舌を出してみせる男。
思えば、この店に来る理由もそこだったよなぁ、と思い出し。
相手に触れようと、にゅる~ん、と手なんて伸ばしてみよう。

リタ > 「へえ、良い事言うね。ま、悪く捉えれば他人に興味が無い、とも言えそうだけど。
セインさんが言うと重さが無いんだよねぇ。なんでだろ。」

茶化しつつも彼の言葉には肯定を。彼が言うから軽く聞こえるのであろうが、その考えには賛同できる。
勿論その上での言葉であるから、その表情は笑顔のまま。
タバコが吸われることなく灰になっており、首を擡げているのはきっと、話に意識が向いているからだろう。

「あら、告白ご馳走様。
――私?付き合ってる人が居る私に何してんのよ…それともなーに?彼女と私の修羅場が見たい訳?趣味悪いよ?」

温くなったビールをぐい、と煽りつつ、伸ばされた手にその手を重ねて、纏わせて…抓る。

セイン=ディバン > 「え~、酷くね~? こんなに真摯に、日々真面目に生きてるのに」

相手の言葉にぶーぶーと文句を言う男であったが。表情は笑顔だ。
だが、ふ、と寂しげな表情になり。

「……この間話してわかったけどさ。
 アイツ、男をからかうことこそしても。
 踏み込ませまいとしてる、っつーか……。
 な~んか拒絶の意思を感じるんだよね」

だからこそ惹かれるんだけど、と笑いつつ。
相手に手を伸ばせばそれを受け流され。

「あうちっ。酷い、酷すぎる。本気なのに。
 つーか、それ言ったら俺だって妻いるし。
 ……でもさ、心惹かれるのは仕方ないだろ?
 俺ぁリタちゃんを一目見た時から惚れてるんだぜ?」

相手に対して、そう言いつつも。声色だけは緩ませず。
じ、と。真剣な表情のまま、そう告げる。

「裏と表。大きな差があるのに、それを感じさせない。
 かと思えばこの間みたいに……闇の中で比類なき実力を覗かせる。
 あぁ、うん。やっぱり俺はキミが好きだ。
 キミは魅力的だぜ、リタちゃん」

くくくっ、と笑いつつ。相手にそう告げる男。
どこまでも飄々としてる、と受け取られるかもしれないが。
これもまた、男の本心である。

リタ > 「真摯に日々マジメ、ねぇ…ふぅん、へぇ…」

走馬灯の様に彼のその、真摯で真面目な所を頭に思い浮かべる店員。
なにやら思い当たる節が幾つかあるようだ。まったく逆の意味で。

「拒絶、ねぇ…それも手の一つじゃない?セインさんの事を測ってるかもね。
それか…単純に女の人の方がが好きなだけだったりして。…っていうか、好かれたいの?

――酷いって、あのねぇ。ついさっきまで他の女の事言ってたセインさんにそんな事言われてもね。うん。」

真剣な表情を向けられてもジト目を重ねるだけ。
そういえば彼の、この一転して真面目な口調になる時は、凡そこういう時ばかりであり…
信用できない、とずばり言い放って。

「はいはい、ありがとう。
私だって表の裏の差はあるよ。それをセインさんが知らないだけ。」

魅力的と言われて一応の返事をするが、
ビールを煽ってタバコをふかして店員らしからぬ口調で話をする店員…
やはり今、そんなタイミングで言われても本気と受け取れられないのだろう。
ビール瓶を逆さにし、口の上へと運んで、ビール瓶の底に残った極わずかなビールを胃へ片付けると、

「…ふわぁ…さ、私そろそろ寝るよ?じゃないと店、開けられなくなっちゃう。」

欠伸を掌で隠す事もせず、彼にそう伝え。

セイン=ディバン > 「わお。なんか凄い冷たい目。
 心の奥がゾクゾクしちゃう」

相手の冷たい声色に笑う男。
しかして、それでいい、と思う。
そう、信じてもらえぬことこそ、自身だ、と。

「そうなのかね。アイツは良くわからんけど。
 ……無理してないか、とは思うんだ。
 だけど、隣でそう言ってやっても、アイツは救われないんだ、とも思う。
 好かれたいとは思わん! けど、一晩お願いしたいとは思う!」

相手の言葉に、真剣に言うものの、最後は酷い言葉であった。
だが、ここまですべて本音なのだから仕方ない。
極論を言えば、この男は。度し難いアホウなのである。

「他の女性のことを語っちまうのは俺の悪いクセだな。
 ……ふぅ、どうにも信用してもらえないみたいだ。
 こりゃあ生き方を考えなきゃダメかな?」

相手に言葉受け流されれば、やれやれ、と苦笑する男。
遊びで女を抱くことあれど、女に愛を語るのが大の苦手。
なにせこの性格だ。信じてもらえないのが常なのである。

「ん、あぁ、すまねぇ。邪魔してたな。
 こっちとしても情報をもらえたし、帰るとするよ。
 ……ふむ。いつかは、俺に惚れさせてみせるぜ、リタちゃん」

相手の疲労などを感じ取れば、男は席を立ち、金貨袋をカウンターに置く。
どうやら、情報料のつもりらしいが。男はそのまま、相手に満面の笑顔を見せ、とんでもないことを宣言する。

リタ > 「うん、ま、ある意味セインさんらしいっちゃらしいお言葉で。」

茶化す彼、そして一晩お願いしたいと宣う彼。
そんな彼を見ながら大きく、あからさまな溜息をして見せて。
それでも溜息の後、笑顔になるのは、やはり彼のこの態度がさせるのだろう。

「はいはい、そのいつかが来世にならないよう、頑張って。――それじゃ、またのご来店を。」

彼が店を出れは鍵を閉め、そのまま大あくびをしつつ背伸び。
彼が置いていった金貨袋を見つめ、大した情報を提供していない事に気づく店員。

「まさかお金で釣ろうなんて…わ、どうしよう、私、靡いちゃうかも。」

本音か冗談かわからない言葉を残しつつ店員は店の奥、自分の部屋へと戻っていく。
欠伸が途切れないままの所をみると、即夢の中へ落ちていくのは明白だった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からセイン=ディバンさんが去りました。